OpenAI、ChatGPT広告に「Sponsored Agents」

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ChatGPTで広告をクリックした先に待っているのは、Webサイトではなく、質問に答えてくれる広告主のエージェントかもしれません。OpenAIが米国でテストを始めたSponsored Agentsは、広告を「眺めるもの」から「話しかける相手」へ変えようとしています。その変化のうち、日本の事業者にいま手が届くのはどこまでなのでしょうか。


OpenAIは2026年9月16日、ChatGPT Ads向けの新機能を発表した。広告をクリックしたユーザーが、明示ラベル付きの広告主エージェントと会話できる「Sponsored Agents」を、米国の一部広告主とテストしている。この会話はChatGPTの独立した回答や元の会話とは分離される。

広告主向けには、ChatGPT WorkのAds Managerプラグインで自然言語によるキャンペーン作成・分析を可能にし、Ads Managerに広告文と画像の提案、オプトイン式の文言調整・自動翻訳を加えた。HubSpotとの統合は同日提供を開始した。Shopifyでは米国の加盟店向けにアプリを提供し、9月23日からChatGPT Adsの提供市場へ広げる。

From: 文献リンクReimagining advertising with AI

【編集部解説】

今回の発表でいちばん大きく動いたのは、広告の「置き場所」ではありません。広告が、ユーザーと言葉を交わす相手になったことです。

典型的な検索広告は検索結果に並び、SNS広告はフィードなどに表示されてきました。2026年2月に米国でテストが始まったChatGPTの広告も、回答の下に表示される枠という点では、この系譜の上にありました。

Sponsored Agentsは、その先へ一歩踏み込みます。広告を見て興味を持ったユーザーが自分で選んだ場合にだけ、広告主のエージェントとの会話が始まります。OpenAIの例に沿えば、ダイニングテーブルの広告から「うちの部屋に置けるか」「何人座れるか」を、その場で尋ねられるようになります。

ここで丁寧に設計されているのが、会話の切り分けです。エージェントとの会話は明確にラベル表示され、ChatGPTの独立した回答からも、ユーザーが元々していた会話からも分けられています。OpenAIはヘルプセンターで、広告は回答に影響しないという「回答の独立性」を原則に掲げてきました。広告が話し始めても、ChatGPT自身の答えには混ぜない。今回の設計は、この原則を会話型の広告にも持ち込んだものと読めます。

提供状況は、米国の一部広告主とのテスト段階です。広告自体も、表示対象はFreeとGoプランのユーザーに限られ、18歳未満と判定されたアカウントには出ません。

もう一つの柱は、広告を作る側の変化です。ChatGPT WorkのAds Managerプラグインを使えば、Webサイトや企画書を渡してキャンペーンを組み立て、成果を読み、次の打ち手の提案まで受けられます。Ads Managerの中では、ランディングページとキャンペーン目的から広告文と画像の案が出てきます。

私が中小企業の相談を受けていて感じるのは、広告運用で重いのが入稿そのものより、その前後にある「考える作業」だということです。そこにAIが入る意味は小さくないと考えます。採用するかどうかの判断は広告主の手に残されている点も、OpenAIは明記しています。

オプトイン式のテキストカスタマイズには、ユーザーの希望言語への自動翻訳も含まれます。多言語の広告文を用意する余力がない事業者にとっては、海外の利用者に届く入口になりうる機能です。

三つ目の柱は、既存ツールとの接続です。初のCRMパートナーとなったHubSpotは同日、自社の発表で、成約した商談を起点となった広告キャンペーンまでさかのぼって分析できる点を強調しました。

Shopify向けのChatGPT Adsアプリは、OpenAI自身が開発元です。商品カタログと計測をつなぎ、Shopifyの管理画面から広告の作成と成果の確認ができます。6月に私がShopifyの「Campaign Autopilot」を取り上げたとき、ChatGPT Adsは対応チャネルとして「今後対応」の扱いでした。それから約2か月半後の9月3日には、OpenAIの専用アプリがShopify App Storeに公開されていたことになります。

では、日本の事業者はいま何に触れられるのでしょうか。

OpenAIのヘルプセンターでは、2026年9月17日時点で、日本はAds Managerのセルフサービス提供国に含まれています。判定は広告・請求の主体となる法人の所在国で行われるため、日本の法人はAds Managerのアカウント開設に進めます。実際に広告が配信されるまでには、アカウントの確認や請求設定、広告の審査といった手順を経ることになります。

Shopifyアプリは、9月23日から「ChatGPT Adsが利用可能な市場」へ国際展開されます。日本がこの範囲に入るかは発表に明記されておらず、アプリの対応言語も現時点では英語のみです。ChatGPT Work上のプラグインやAIによる制作支援についても、提供地域は示されていません。日本の事業者は、23日以降のアプリ掲載情報とヘルプセンターの更新を見ていくのが確実です。

OpenAIは今回、広告の両面を作り直すと述べています。人が事業者とどう出会うか、事業者がどう広告を作るか、の両面です。

広告が会話になるなら、ブランドの印象は、そのエージェントがどれだけ誠実に質問に答えられるかに左右されるようになるのではないでしょうか。商品の良さを飾る言葉より、「その商品はあなたの部屋には合いません」と言える応答のほうが、次の購入につながるかもしれません。テストの先で、どんな対話の作法が育っていくのか。広告が話し相手になる時代の最初の一歩として、見届けたいと思います。

【参考記事】

HubSpot and OpenAI Deepen Partnership to Bring AI Transformation to Every SMB(外部)
HubSpotによる9月16日の公式発表。ChatGPT Ads統合と、ChatGPTコネクターの週間アクティブユーザー250%増を伝える。

Ads Manager Availability(外部)
Ads Managerのセルフサービスを使える国の一覧。広告・請求の主体となる法人の所在国で判定することを明記している。

Ads Manager Beta Account Setup(外部)
Ads Managerのアカウント開設手順。確認や請求設定を終えるまで配信されないことや、代理店による開設不可を説明する。

Ads in ChatGPT(外部)
ChatGPT広告の原則と対象を説明するヘルプ。回答の独立性、Free・Goプランが対象、18歳未満に非表示などを記す。

OpenAI Testing Sponsored Agents For ChatGPT Ads(外部)
Search Engine Roundtableの速報。Sponsored Agentsの仕組みと、会話が回答から分離される点を伝える。

【関連記事】

Shopify「Campaign Autopilot」―AIが広告を回し、人が手綱を握る時代へ
2026年6月に公開した記事。Shopifyの広告自動運用機能と、当時「今後対応」とされていたChatGPT Adsの位置づけを扱う。

OpenAI、ChatGPTに広告導入を発表―月額8ドルのChatGPT Go全世界展開へ
2026年1月に公開した記事。OpenAIがChatGPTへの広告導入の方針を発表し、表示対象や原則を示した段階を伝える。

Google I/O 2026|ユニバーサルカート発表——AIエージェントが「買う」時代の幕開けと広告モデルの転換
2026年5月に公開した記事。Google I/O 2026で示された、会話型の広告と購入体験の変化を取り上げている記事。

【編集部後記】

Shopify App StoreのChatGPT Adsアプリには、9月17日時点でレビューが3件しかありません。最初の1件を書き込んだのは、発表の8日前、9月8日のドイツの店舗でした。

OpenAIはそのレビューに、ドイツにも近く届けられるのが楽しみだと返信しています。発表文では「ChatGPT Adsが利用可能な市場」としか書かれていない国際展開の行き先が、ひとつの店舗とのやり取りのなかで、先に顔を出していたわけです。日本の店舗から最初のレビューが届くのは、いつになるでしょうか。


【用語解説】

Sponsored Agents
ChatGPTの広告をきっかけに、ユーザーが広告主のAIエージェントと会話できる広告形式。明確にラベル表示され、ChatGPTの独立した回答や元の会話とは分けられる。2026年9月時点で米国の一部広告主とテスト中である。

Ads Manager
ChatGPT Adsのキャンペーンを作成・配信・管理するOpenAIの広告管理ツール。ベータ版として提供され、セルフサービスで使える国はヘルプセンターで公開されている。

ChatGPT Work
OpenAIが提供する業務向けのChatGPT。プラグインを通じて外部の業務ツールとつながり、業務の実行までを支援する。

CRM
Customer Relationship Managementの略。顧客情報や商談の履歴を一元管理し、営業やマーケティングに生かすための仕組みやソフトウェアを指す。

オプトイン
利用者が自ら同意や設定を行った場合にのみ、機能が有効になる方式。初期状態では無効で、使うかどうかを利用者側が選ぶ。

ランディングページ
広告をクリックした人が最初にたどり着くWebページ。商品やサービスの説明、購入や問い合わせへの導線を置くことが多い。

セルフサービス
広告主が営業担当や代理店を介さず、自分で管理画面からアカウント開設や広告出稿を行う提供形態。

回答の独立性
OpenAIがChatGPTの広告に掲げる原則の一つ。広告はChatGPTの回答に影響せず、回答とは分けて明確にラベル表示するという考え方である。

【参考リンク】

OpenAI Ads(ChatGPT で広告掲載)(外部)
ChatGPTに広告を出したい事業者向けの公式サイト。広告の特徴や信頼を守る原則を紹介し、Ads Managerへの登録窓口を置く。

ChatGPT Ads(Shopify App Store)(外部)
OpenAIが開発したShopify向けアプリ。商品カタログの同期と広告作成、ピクセルによる計測をShopify管理画面で行える。

HubSpot(外部)
CRMを中核にマーケティングや営業、カスタマーサービスの機能を統合した顧客プラットフォーム。ChatGPT Adsと連携する。

ChatGPT(外部)
OpenAIが提供する対話型AIサービス。FreeとGoプランでは、回答と区別してラベル表示された広告が出る場合がある。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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