Last Updated on 2024-08-19 08:03 by admin
2024年8月15日、Metaは、ロシアが人工知能(AI)を利用して2024年の米国大統領選挙に干渉しようとしている証拠を発見したと発表した。Metaの調査によると、ロシアの情報機関とつながりのある「偽情報ネットワーク」が、AIを使用して偽のプロフィール写真を生成し、FacebookやInstagramで偽アカウントを作成していた。
これらの偽アカウントは、主に左派的な政治的見解を持つ米国人のふりをして、民主党支持者間の分裂を煽ろうとしていた。Metaは、この活動が2024年1月から始まったと推定している。
Metaは、約1,600の偽アカウントと50,000人以上のフォロワーを持つ27のFacebookページ、2つのFacebookグループ、25のInstagramアカウントを削除した。これらのアカウントは、主に環境保護や人種問題などの社会的な話題に焦点を当てていた。
Metaのグローバル脅威インテリジェンス責任者であるベン・ニモ氏は、この活動が「まだ初期段階」であり、選挙に大きな影響を与える前に発見できたと述べた。また、AIの使用により偽アカウントの作成が容易になったことを指摘した。
from:Russia’s AI tactics for US election interference are failing, Meta says
【編集部解説】
Metaの最新の報告書から、ロシアによる米国選挙への干渉工作の実態が明らかになりました。この問題について、もう少し深く掘り下げて解説させていただきます。
まず注目すべきは、AIを活用した偽情報キャンペーンの効果が、当初懸念されていたほど大きくないという点です。Metaの報告によれば、AIによる生成コンテンツは、悪意のある主体にとって「わずかな生産性向上」をもたらすにとどまっているようです。これは、AIの進化が急速である一方で、プラットフォーム側の対策も同様に進化していることを示唆しています。
しかし、楽観視はできません。ロシアは依然として「調整された非真正行為」(CIB)の最大の発信源であり、その手法は巧妙化しています。例えば、「Doppelganger」と呼ばれる作戦では、正規のニュースサイトを模倣した大規模なウェブサイトネットワークを構築し、偽情報を拡散しています。
特に注意が必要なのは、これらの工作が単に選挙結果を左右することだけを目的としているのではなく、民主主義のプロセス自体に対する市民の信頼を長期的に損なうことを狙っている点です。これは民主主義の根幹を揺るがす深刻な脅威といえるでしょう。
一方で、Metaをはじめとするテクノロジー企業の対策も進化しています。AIを活用した検知システムの導入や、他のプラットフォームとの情報共有など、複合的なアプローチが取られています。しかし、X(旧Twitter)のような一部のプラットフォームでは、信頼性・安全性チームの縮小により、対策が後退している懸念もあります。