Last Updated on 2024-10-26 15:57 by admin
動画生成AI開発企業のRunway(本社:ニューヨーク)は2024年10月22日、新機能「Act-One」を発表した。
Act-Oneは以下の特徴を持つ:
- 同社の映像生成AI「Gen-3 Alpha」の新機能として提供される
- スマートフォンなどで撮影した単一の演技映像から、AIキャラクターのアニメーションを生成できる
- モーションキャプチャー機器や複雑な制作工程が不要
- 様々なカメラアングルや焦点距離に対応し、シネマティックで写実的な出力が可能
安全対策として:
- 著名人や公人のコンテンツ生成を自動検出・ブロックする機能
- カスタムボイスの使用権利を確認する検証システム
- ツールの適切な使用を継続的にモニタリング
提供開始:
- 2024年10月22日から段階的に提供開始
- 近日中にGen-3 Alphaの全ユーザーが利用可能になる予定
なお、Runwayの主要投資家にはNVIDIA、Google、Salesforceが含まれている。
from:‘This is a game changer’: Runway releases new AI facial expression motion capture feature Act-One
【編集部解説】
AIによるアニメーション制作の世界に革新的な進展が訪れました。これまでのアニメーション制作では、キャラクターの表情や動きを自然に表現するために、高価なモーションキャプチャー機器や複雑な制作工程が必要でした。しかし、RunwayのAct-Oneは、この常識を大きく覆すことになりそうです。
特筆すべきは、スマートフォンのカメラ1台で収録した映像から、プロフェッショナルレベルのアニメーションが生成できる点です。これは、『猿の惑星:創世記』のような大作映画で使用される高度な機材や技術を、シンプルなワークフローで代替できることを意味しています。
技術面で興味深いのは、Act-Oneが単なる表情の転写に留まらない点です。カメラアングルや焦点距離が変化しても一貫性のある表現を維持でき、さらに元の映像とは異なるプロポーションのキャラクターにも正確に感情表現を反映できます。
この技術がもたらす影響は映像制作業界全体に及ぶと考えられます。インディーズ映画製作者が1人の俳優の演技から複数のキャラクターを生み出せるようになり、制作コストの大幅な削減が可能になります。
一方で、RunwayはAct-Oneの安全性にも細心の注意を払っています。著名人の無断使用を防ぐ機能や、音声使用権の確認システムなど、包括的な安全対策を実装しています。これは、AIによる深フェイク動画への懸念が高まる中、重要な取り組みといえます。
長期的な展望として、この技術は映像制作の民主化を加速させる可能性があります。従来は大手スタジオにしかできなかった高品質なアニメーション制作が、個人クリエイターでも実現可能になります。
RunwayのCEOであるクリストバル・バレンズエラ氏が述べているように、もはやAIが一貫性のある映像を生成できるかという段階は過ぎ、どのように活用するかという段階に入っています。これは、クリエイティブ産業全体のパラダイムシフトを示唆しているといえるでしょう。
参考情報
主要な用語解説
- モーションキャプチャー:人の動きをデジタルデータとして記録する技術。例えるなら、スポーツ選手の動きを分析するために体に付けるセンサーのようなものです。
- フェイシャルアニメーション:3DCGキャラクターの表情を作り出す技術。従来は、俳優の顔に多数のマーカーを付けて撮影する必要がありました。