Last Updated on 2025-02-13 11:05 by admin
楽天グループ株式会社は2025年2月12日、新しい日本語大規模言語モデル「Rakuten AI 2.0」と小規模言語モデル「Rakuten AI 2.0 mini」の2つのAIモデルの提供を開始した。
1. モデルの仕様
– Rakuten AI 2.0:8x7BのMoE(Mixture of Experts)アーキテクチャを採用
– Rakuten AI 2.0 mini:15億パラメータの小規模モデル
2. 性能と特徴
– 日本語版MT-Benchで業界最高水準のスコアを達成
– SimPO(Simple Preference Optimization)を活用したファインチューニング
– 日本語と英語の両言語に対応
3. 提供形態
– 基盤モデルとインストラクションチューニング済モデルの2種類を提供
– Apache 2.0ライセンスで公開
– Hugging Faceリポジトリからダウンロード可能
from:楽天、日本語に最適化した大規模言語モデルと楽天初の小規模言語モデルを提供開始
【編集部解説】
技術的な革新点
楽天の新しいAIモデルの最も注目すべき点は、MoE(Mixture of Experts)アーキテクチャの採用です。このアーキテクチャにより、入力に応じて最適な「エキスパート」を動的に選択することで、8倍規模の高密度モデルと同等の性能を1/4の計算量で実現しています。
また、SimPO(Simple Preference Optimization)という新しい手法を採用したことで、従来のRLHFやDPOと比較して、より効率的に人間の嗜好に合わせたモデルの調整が可能になりました。
ビジネスインパクト
楽天のAIモデルは、Apache 2.0ライセンスで提供されることで、商用利用が可能となっています。これにより、日本企業は自社のAIアプリケーション開発に、高性能な日本語モデルを無償で活用できるようになります。
特に、15億パラメータの小規模モデル「Rakuten AI 2.0 mini」は、モバイル端末での利用を想定しており、データをリモートサーバに送信せずに自社運用できるため、プライバシー保護やセキュリティ要件の厳しい業務にも対応可能です。
市場への影響
すでに楽天モバイルでは、この技術を活用した「Rakuten AI for Business」というサービスを1月29日から提供開始しており、月額1,100円(税込)で利用可能となっています。これは、日本の企業文化や規制、商習慣に最適化されたAIサービスとして、特に中小企業のデジタル化を促進する可能性があります。
今後の展望と課題
楽天のAIモデルは、日本語版MT-Benchで業界最高水準のスコアを達成していますが、今後は実際のビジネス現場での活用事例の蓄積が重要になってくるでしょう。特に、エッジデバイスでの活用や、プライバシーを考慮したAI活用の新しいスタンダードを確立できる可能性があります。
ただし、AIモデルの継続的な改善や、新しい用途の開発には、高品質な日本語データの収集と、計算リソースの確保が課題となる可能性があります。また、AIの判断の透明性や説明可能性についても、今後さらなる取り組みが必要となるでしょう。