Last Updated on 2025-02-14 07:54 by admin
MITのWhitehead InstituteとCSAILの研究チームが、タンパク質の細胞内局在を予測・生成できる機械学習モデル「ProtGPS」を開発しました。
研究チームの主要メンバーは、Richard Young教授(MIT、Whitehead Institute)、Regina Barzilay教授(MIT CSAIL)、Henry Kilgore博士(Young研究室ポスドク)、そしてBarzilay研究室の大学院生であるItamar Chinn、Peter Mikhael、Ilan Mitnikovです。
2025年2月6日にScience誌で発表された研究では、12種類の細胞内区画へのタンパク質の局在を高精度で予測できることが示されました。また、200,000以上の疾患関連変異の分析により、タンパク質の局在変化を予測することにも成功。核小体への局在を目的とした10個の新規タンパク質を設計し、そのうち4個が強い局在性を示すという画期的な成果を上げています。
from:AI model deciphers the code in proteins that tells them where to go
【編集部解説】
研究の背景と意義
タンパク質が細胞内の正しい場所に配置されることは、生命活動の根幹を支える重要な仕組みです。これまでタンパク質の構造予測についてはAlphaFoldなどのAIモデルが大きな成果を上げてきましたが、タンパク質の局在化予測については未解明な部分が多く残されていました。
今回MITのWhitehead InstituteとCSAILの研究チームが開発したProtGPSは、タンパク質のアミノ酸配列から細胞内での局在を高精度で予測できるだけでなく、新しいタンパク質を設計することも可能にした画期的なモデルです。
技術的なブレークスルー
ProtGPSの特筆すべき点は、12種類の細胞内区画それぞれについて83%から95%という高い精度で予測を行えることです。これは、タンパク質が持つ「局在化コード」という、これまで認識されていなかった新しい生物学的な法則の発見につながりました。
さらに興味深いのは、20万以上の疾患関連変異について分析を行い、タンパク質の誤った局在化が疾患の原因となり得ることを示した点です。
医療への応用可能性
このモデルは、タンパク質の局在化の異常が引き起こす様々な疾患のメカニズム解明に貢献すると期待されています。特に、がんや神経変性疾患など、タンパク質の異常な局在化が関与する疾患の治療法開発に新しい視点を提供する可能性があります。
創薬研究への影響
ProtGPSの革新的な点は、特定の細胞内区画に局在する新しいタンパク質を設計できることです。例えば、核小体に局在する10個の新規タンパク質を設計し、そのうち4個が実際に強い局在性を示したという実験結果は、創薬研究に大きな可能性を示しています。
今後の展望と課題
このモデルは、AlphaFoldがタンパク質構造予測分野で果たしたような役割を、タンパク質局在化の分野で担う可能性を秘めています。しかし、現時点では12種類の区画に限定されており、より多様な細胞内区画への対応や、予測精度のさらなる向上が期待されます。
また、このような技術の発展は、合成生物学や再生医療など、より広範な分野にも波及効果をもたらす可能性があります。
読者の皆様へ
この研究成果は、生命の基本的なメカニズムの解明と、それを応用した医療技術の革新という両面で大きな意義を持っています。特に日本の製薬企業や研究機関にとって、新しい創薬アプローチの可能性を示す重要な進展といえるでしょう。