F1®(フォーミュラ1)とAWSは、2025年2月18日、レース運営における問題解決を大幅に効率化する生成AI駆動のRoot Cause Analysis(RCA)アシスタントの導入を発表した。
主な要点
- 開発期間:AWS Prototypingチームとの5週間のプロトタイプ開発
- 導入効果:
- 問題解決時間を86%削減
- 初期トリアージ時間を24時間以上から20分未満に短縮
- エンジニアの質問に対する応答時間を5-10秒に短縮
技術仕様
- 使用モデル:Anthropic社のClaude 3
- 主要サービス:
- Amazon Bedrock
- Amazon EventBridge
- Amazon S3
- AWS Glue
- Amazon ECS
- AWS Fargate
開発チーム
- Lee Wright(F1 IT運用責任者)
- Carlos Contreras(AWSシニアビッグデータ・生成AIアーキテクト)
- Ying Hou(AWSシニア生成AIプロトタイピングアーキテクト)
- Hin Yee Liu(AWSシニアプロトタイピングエンゲージメントマネージャー)
- Olga Miloserdova(AWSイノベーションリード)
F1とAWSは2018年から技術パートナーシップを結んでおり、この新システムは両社の長年の協力関係の最新の成果となる。
from:How Formula 1® uses generative AI to accelerate race-day issue resolution
【編集部解説】
F1レースの裏側では、毎秒110万ものデータポイントが生成されています。この膨大なデータを人間が解析するには限界があり、問題解決に最大3週間もの時間を要していました。
今回のRoot Cause Analysis(RCA)アシスタントの導入は、単なる問題解決の効率化だけでなく、スポーツテクノロジーにおける生成AIの実用化の重要なマイルストーンといえます。
システムの特徴と実装方法
特筆すべきは、このシステムがClaude 3を採用し、Amazon Bedrockを基盤としている点です1。従来のチャットボットと異なり、データベースやログファイル、外部システムと直接連携できる機能を実装しています。
セキュリティ面では、SQLインジェクション攻撃やプロンプトインジェクション攻撃への対策として、最小権限の原則に基づいた設計がなされています。
実用化の成果と影響
導入効果として、問題解決時間の86%削減という驚異的な数字が報告されています。これは、F1という世界最高峰のモータースポーツにおいて、生成AIが実用レベルで活用できることを実証しています。
より広い文脈での意義
F1とAWSは2018年からパートナーシップを結んでおり、今回のRCAアシスタントは両社の長期的な協力関係の集大成といえます。特に注目すべきは、このシステムが特定の専門知識を必要としない設計になっている点です。
今後の展望
このシステムの成功は、他のスポーツや大規模イベント運営への応用可能性を示唆しています。すでにF1は、StatbotやAIによるトロフィーデザインなど、生成AIの活用範囲を広げています。
課題と検討点
一方で、システムの完全な自動化には慎重な姿勢も見られます。特に重要な判断が必要な場合は、自動的にF1エンジニアリングチームへエスカレーションする仕組みが組み込まれています1。これは、AIと人間の適切な役割分担を示す好例といえるでしょう。