韓国を拠点とするスタートアップが開発したNewnalは、AndroidをベースにしたAI重視の新しいスマートフォンOSで、Mobile World Congress(MWC)2025で発表された。創業者はYT Kim氏で、同社はすでに韓国でブロックチェーンベースのワクチン認証システムを開発した実績を持つ。
Newnalの特徴は「Another-I(もう一人の自分)」と呼ばれるデジタルツイン機能だ。このシステムはユーザーの個人データで訓練された大規模言語モデル(LLM)によって駆動され、ユーザーの顔や声を模倣し、レストラン予約や保険契約などのタスクをユーザーに代わって処理する。従来のアプリナビゲーションに代わり、会話形式でタスクを依頼できる。
ユーザーのデータはプライバシー保護のため暗号化され、複数のサードパーティのクラウドサーバーに分散保存される仕組みになっている。
ハードウェア面では、メインディスプレイの上部に小さな専用画面を備え、そこにユーザーのAIアバターが表示される独特なデザインを採用している。価格は375ドルで、2025年5月1日に正式発売予定だ。
from This little AI phone has some wild ideas
【編集部解説】
MWC 2025で発表されたNewnalは、私たちがスマートフォンとAIの関係性を考え直すきっかけとなる革新的なプロダクトです。検索結果から判明した詳細情報をもとに、この技術の本質と可能性について掘り下げてみましょう。
Newnalの最も注目すべき特徴は「Another-I(もう一人の自分)」と呼ばれるデジタルクローン機能です。これは単なる音声アシスタントではなく、ユーザーの顔や声を模倣し、個人データに基づいて訓練された、文字通り「もう一人のあなた」として機能します。
このシステムが従来のAIと大きく異なる点は、ChatGPTやGeminiのようにウェブ上の一般データではなく、ユーザー自身の個人データで訓練される点です。具体的には、MetaやGoogleからのデータ履歴、医療記録、金融記録などをダウンロードしてNewnalのAIに提供することで、パーソナライズされた知識グラフを構築します。
プライバシー保護のため、これらのデータは暗号化され、複数のサードパーティのクラウドサーバーに分散保存される仕組みになっています。同社は「個人ユーザーがデータを完全かつ柔軟に制御できるようにすることで、厳格さに欠けるプライバシーモデルの常識を覆す」と主張しています。
ハードウェア面では、Newnalのスマートフォンはメインディスプレイの上部に小さな専用画面を備え、そこにユーザーのAIアバターが表示される独特なデザインを採用しています。デバイスの側面にある四角いボタンを押すとアクティベートでき、様々なタスクを依頼できます。価格は375ドルで、2025年5月1日に正式発売予定とのことです。
実際のデモンストレーションでは、イヤリングのショッピング支援やメール作成といった基本的なタスクに加え、自動車保険の購入という複雑なプロセスも実行できることが示されました。システムは各段階で情報ソースを表示しながら、Geicoのウェブサイト上でフォームに記入し、最終的に支払いまで完了させたとのことです。
このような高度な自動化は、私たちの日常生活やデジタルアイデンティティの概念に大きな変革をもたらす可能性があります。例えば、複雑で時間のかかる手続きや定型業務をAIに委託することで、私たちはより創造的な活動に時間を使えるようになるかもしれません。
一方で、このようなシステムには重大なプライバシーリスクも伴います。個人の医療・金融データを含む膨大な情報をAIに提供することの安全性や、AIが行った取引の法的責任の所在など、解決すべき課題は少なくありません。
また、「もう一人の自分」がどこまで正確に自分を代行できるのか、また誤った判断をした場合の責任の所在など、技術的・倫理的な問題も存在します。例えば、AIが自動車保険の契約内容を誤解し、不適切な保険を購入してしまった場合、その責任は誰が負うのでしょうか。
Web3の理念と結びついたこの技術は、データの所有権とプライバシーに関する議論も活性化させるでしょう。中央集権的なプラットフォームによるデータ管理ではなく、ユーザー自身がデータを所有・制御するというアプローチは、デジタル時代における個人の主権を強化する可能性を秘めています。
【参考用語】
デジタルツイン/Another-I:
現実世界のモノや環境をデジタル空間に再現する技術です。Newnalの場合は、ユーザー自身のデータを基に「もう一人の自分」を作り出します。これは、現実の自分の「デジタル上の双子」という意味です。例えるなら、あなたの好みや行動パターンを完全に理解した秘書がデジタル空間にいるようなものです。
ブロックチェーン:
データを分散して保存・管理する技術で、改ざんが非常に困難という特徴があります。一般的な銀行のように一箇所でデータを管理するのではなく、多くの人がそれぞれ同じ帳簿(台帳)を持ち、常に照合することで信頼性を確保するシステムです。
【参考リンク】
Newnal(ニューナル)(外部)韓国を拠点とするテクノロジー企業で、AIとブロックチェーン技術を組み合わせたデジタルツインOSを開発
Humane AI Pin(外部)スマートフォンに代わる新しいAIインターフェースを提案する米国のスタートアップ企業
Rabbit R1(外部)大規模言語モデルを搭載した携帯型AIデバイスを提供する企業