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AI時代の創造性 – The Guardian記事が問う「AIに丸投げする生き方」の本質と未来への影響

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-03-31 15:32 by admin

2025年3月30日、イギリスの新聞「The Guardian」に、AIが人間の創造的活動を代替することへの懸念を表明する記事が掲載された。筆者は自身をルッダイト(機械破壊主義者)的な傾向があると自認しつつも、一部の技術的進歩については評価している。

記事では哲学者ジョン・グレイの著書『わら犬』(Straw Dogs)が引用され、グレイが麻酔下での歯科治療を「純粋な恩恵」と評価している点に言及している。筆者自身はYouTubeでの鳥の動画視聴、スマートフォンのリマインダー機能、印刷機などの技術を「純粋な恩恵」のリストに追加している。

一方で、AIが人間の創造的活動や人間関係の維持といった本質的な生活の側面を簡略化しようとする傾向に警鐘を鳴らしている。具体的には、友人からのメッセージのAI要約機能、GoogleのAI検索要約機能、スマートフォンの写真自動補正機能、そしてAIによる創作活動の代行などを例に挙げている。

筆者は特に創造的活動においては、作品を「作る過程」こそが価値であり、AIに外注することは芸術家ではなく「セールスパーソン」になることだと主張している。

記事は「AIが時間を節約すると約束するが、その節約された時間で何をすべきなのか」という問いを投げかけ、生きる行為を短縮することが必ずしも生活の質の向上につながらないという見解で締めくくられている。

from:AI promises to free up time. But what if it spares us from learning, writing, painting and exploring the world?

【編集部解説】

The Guardian紙に掲載された記事は、AIが人間の創造的活動を代替することへの懸念を表明したエッセイです。南オーストラリア大学の研究によれば、AIは創造的な成果物を生成できますが、根本的には人間の介入に依存しています。AIは人間の創造性を置き換えるものではなく、それを補完するツールであるという見方が広がっています。

2025年に入り、職業市場は大きく変化しています。AIツールのワークフローへの統合が進み、クリエイターが高レベルの戦略やアイデア生成に集中できる一方で、反復的なタスクをAIに委任することが可能になっています。

世界経済フォーラムの「2025年の仕事の未来レポート」によると、グラフィックデザインは今後5年間で最も急速に衰退する職業カテゴリーの11位にランクされました。しかし、すべてのクリエイティブな職業がAIに取って代わられるわけではなく、役割を再定義し、クリエイターチームとテクノロジーの間のシナジーを促進すると予測されています。

AIと創造性の関係は、単純な代替か共存かという二項対立ではなく、より複雑な相互作用として捉える必要があります。AIは一部のタスクを自動化できますが、真の創造性の核心である独創性、文化的文脈の理解、感情的共鳴などは依然として人間特有のものです。

今後、プロセスにおけるAIの役割を再定義し、人間とAIのそれぞれの強みを活かした新たな創造の形を模索していくことが重要です。AIの時代における創造性とは、人間とテクノロジーの共生によって生まれる新たな価値にこそあるのかもしれません。

【用語解説】

ルッダイト(機械破壊主義者)
産業革命期の1811年から1816年頃にイギリスで起きた、機械導入によって仕事を奪われることを恐れた労働者による機械打ち壊し運動の参加者を指す。現代では技術革新に反対する人々を表す言葉として使われている。

ジョン・グレイ
イギリスの政治哲学者。著書『わらの犬』(Straw Dogs)で知られる。人間中心主義を批判し、科学技術とキリスト教を両輪に発展してきた人類の在り方に警鐘を鳴らしている。

【参考リンク】

The Guardian(ガーディアン)(外部)
1821年創刊のイギリスの有力紙。中道左派の立場から国際ニュースを発信し、デジタルジャーナリズムの先駆者としても知られる。

世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2025」(外部)
2025年から2030年にかけての労働市場の変化を予測した包括的な調査報告書。このレポートは、22の産業クラスターと55の経済圏にわたる1,000以上のグローバル企業(合計1,400万人以上の労働者を代表)からの見解をまとめたもの。

J-Stage(日本の学術論文プラットフォーム)(外部)
生成AIの創造性寄与に関する論文など、日本の学術研究成果を公開している科学技術振興機構(JST)が運営するプラットフォーム。

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りょうとく
主に生成AIやその権利問題について勉強中。
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