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The Ocean Cleanup×アムステルダム大学─AI航路最適化で太平洋ゴミベルトのプラスチック回収効率60%向上

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-24 14:18 by admin

2025年4月、オランダ・アムステルダム大学とロンドン・ビジネス・スクールの研究チームが、非営利団体The Ocean Cleanup(本部:オランダ・ロッテルダム、CEO:Boyan Slat)と連携し、AIを活用した新しい海洋プラスチック回収アルゴリズムを発表した。

このAI搭載の経路最適化モデルは、太平洋ゴミベルト(Great Pacific Garbage Patch)での回収船の航路をリアルタイムで最適化し、従来比で回収効率を60%向上させることに成功している。研究は2022年から2024年にかけて実施され、成果は学術誌「Operations Research」に掲載された。

The Ocean Cleanupは2013年設立以来、累計2,100万キログラム以上のプラスチックごみを回収しており、2040年までに海洋プラスチックごみの90%除去を目指している。現在、世界の海には推定7,500万〜1億9,900万トンのプラスチックごみが存在し、毎年約1,500万トンが新たに流入している。今回のAI技術は、国連SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」にも貢献している。

from:https://phys.org/news/2025-04-ai-powered-tech-supercharges-ocean.html

【編集部解説】

今回のAIアルゴリズムの最大の特徴は、衛星データや海流予測などのビッグデータを活用し、船舶の航路を30分ごとに最適化する「動的経路最適化」にあります。これにより、天候や潮流の急変にも即座に対応でき、従来の経験則や静的な計画に比べて大幅な効率向上が実現しました。

この技術は、単なる海洋ごみ回収にとどまらず、今後は河川や災害時の漂流物回収、さらには漁業や物流分野への応用も期待されています。また、AIが収集・解析するデータは、国際的な海洋汚染対策や政策立案にも活用できる可能性があります。

一方で、5mm以下のマイクロプラスチックの検知精度には限界があり、衛星やドローンとの連携強化が今後の課題です。また、AIシステムの運用には一定の電力消費が伴うため、環境負荷を最小限に抑える技術開発も求められます。

日本でも、台風や豪雨後の漂流ごみ対策、離島や沿岸部での効率的な回収などに応用できる可能性がありますが、導入コストや自治体間のデータ連携など、現場レベルでの課題も残されています。

長期的には、AIによる回収効率化だけでなく、根本的なプラスチック排出抑制や生分解性素材の普及、消費行動の変革といった社会全体の取り組みと両輪で進めていくことが不可欠です。技術革新と社会変革がバランスよく進むことで、持続可能な海洋環境の実現が期待されます。

【用語解説】

非線形最適化アルゴリズム
変数同士の関係が複雑な問題を、最も効率的に解決するための計算手法。宅配ルートの最適化などにも応用される。

太平洋ゴミベルト(Great Pacific Garbage Patch)
北太平洋中央に存在する、世界最大級の漂流プラスチックごみ集積域。日本の国土の約4倍の広さ。

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」
2030年までに海洋汚染を大幅に削減し、持続可能な海洋資源利用を目指す国際目標。

【参考リンク】

The Ocean Cleanup
https://theoceancleanup.com
オランダ発の非営利団体。AIや最新技術を活用し、世界の海洋プラスチックごみの大規模回収に取り組む。

国連SDGs公式サイト(日本語)
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/
SDGsの概要や各目標の詳細、国際的な取り組み事例を紹介。

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野村貴之
理学と哲学が好きです。昔は研究とかしてました。
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