Last Updated on 2025-04-24 14:55 by admin
Metaは2025年4月23日、Ray-Ban Metaグラスの全ユーザーに対してリアルタイム翻訳機能の提供を開始したと発表した。この機能は2024年12月からベータ版として一部のアーリーアクセスユーザーにのみ提供されていたものである。
リアルタイム翻訳機能は英語、フランス語、イタリア語、スペイン語の4言語間の翻訳に対応している。ユーザーは「Hey Meta, start live translation」と声をかけることで機能を起動でき、近くの人が話す言葉をリアルタイムで自分の言語に翻訳して聞くことができる。また、相手はユーザーのスマートフォンのMeta Viewアプリで翻訳されたテキストを見ることができる。事前に言語パックをダウンロードしておけば、インターネット接続なしでもこの機能を利用できる。
また、Meta AIのマルチモーダル機能が欧州でも展開されている。今月初めに英国でロールアウトが開始され、4月23日からはドイツ、オーストリア、ベルギー、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドでも基本的なMeta AIが利用可能になった。来週には、グラスが公式に販売されているすべての国で完全なマルチモーダルMeta AIのロールアウトが開始される予定である。
さらに、近日中にInstagramでのメッセージングと通話機能も追加される。また、米国とカナダでは「Live AI」と呼ばれる新機能が近日中に提供開始される。この機能は、毎回「Hey Meta」と言わなくてもMeta AIとの継続的なセッションを持つことができるもので、「Hey Meta, start live AI」と言うことでセッションを開始できる。
MetaとEssilorLuxotticaは、Skylerスタイルの3つの新色バリエーション(Shiny BlackフレームとClearレンズ、Shiny BlackフレームとGreenレンズ、Shiny Chalky GrayフレームとSapphire Transitionsレンズ)を発売した。これにより、Ray-Ban Metaグラスのスタイルと色のバリエーションは合計25種類になった。
両社はまた、メキシコ、インド、アラブ首長国連邦でもまもなくグラスの公式販売を開始すると発表した。これにより、Ray-Ban Metaグラスが販売される国は17カ国になる。
Ray-Ban Metaグラスは2023年10月に発売され、2025年2月時点で200万台以上を販売している。EssilorLuxotticaのCEO、Francesco Milleri氏によると、2026年末までに年間生産能力を1,000万台にまで拡大する計画である。
from Ray-Ban Meta Glasses Now Translate Speech & Meta AI Is Now Available In Europe
【編集部解説】
Ray-Ban Metaグラスの機能拡張は、ウェアラブルAIデバイスの実用性が大きく向上する転換点となっています。今回のアップデートで特に注目すべきは、リアルタイム翻訳機能の一般提供開始です。
この翻訳機能は昨年10月のMeta Connect 2024で発表され、2024年12月からアーリーアクセスプログラム参加者向けに限定提供されていましたが、2025年4月23日からすべてのユーザーに開放されました。英語、フランス語、イタリア語、スペイン語の4言語間でリアルタイム翻訳が可能になり、言語の壁を越えたコミュニケーションを実現します。
特筆すべきは、事前に言語パックをダウンロードしておけばオフラインでも機能する点です。これは海外旅行中やインターネット接続が不安定な場所でも活用できることを意味し、実用性が格段に高まっています。
Meta AIの欧州展開も重要な進展です。EU圏内では規制上の問題から導入が遅れていましたが、今回ドイツ、オーストリア、ベルギー、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドでも基本的なMeta AIが利用可能になりました。来週には完全なマルチモーダルAI機能も展開される予定です。
ただし、欧州委員会はMetaのAI機能に関してデジタルサービス法(DSA)への準拠を確認するためのリスク評価を待っている状況です。Meta側は「欧州委員会に対して完全に透明性を持って対応している」と主張していますが、欧州の複雑な規制環境がAI技術の導入を遅らせていると不満を示しています。
「Live AI」機能は、米国とカナダで近日中に提供開始される予定ですが、欧州では当面提供されない見込みです。この機能により、毎回「Hey Meta」と言わなくても継続的なAIとの会話が可能になります。料理中のレシピ確認や観光地での情報収集など、ハンズフリーでAIアシスタントを活用できるシーンが広がるでしょう。
Instagram対応も近日中に実現し、すでに対応しているWhatsAppやMessengerと同様に、グラスからInstagramのメッセージングや通話が可能になります。これによりSNSとの連携がさらに強化されます。
販売実績も注目に値します。2025年2月時点で200万台を突破し、前世代のRay-Ban Storiesの30万台未満と比較すると大幅な成長を遂げています。EssilorLuxotticaのCEO Francesco Milleri氏は「大成功」と評価し、2026年末までに年間生産能力を1,000万台に拡大する計画を発表しました。
このようなウェアラブルAIデバイスの普及は、私たちの日常生活や情報アクセスの方法を変える可能性を秘めています。特に言語の壁を取り除くリアルタイム翻訳は、グローバル化が進む現代社会において大きな価値を持ちます。
一方で、カメラを常時装着することによるプライバシーへの懸念や、AIへの依存が人間の認知能力に与える影響など、検討すべき課題も存在します。特にLive AI機能では、AIがカメラに継続的にアクセスするため、プライバシーとセキュリティのバランスが重要になるでしょう。
また、Appleも同様のスマートグラス開発を検討しているとの噂があり、今後このセグメントは競争が激化する可能性があります。Appleのグラスにも同様にAI、マイク、カメラが搭載される可能性がありますが、拡張現実(AR)機能は含まれないとされています。
Ray-Ban Metaグラスの進化は、単なるガジェットからより実用的なコミュニケーションツールへの転換を示しています。今後も機能拡張や対応言語の増加が期待される中、私たちはこの技術がもたらす可能性と課題の両面を注視していく必要があるでしょう。
【用語解説】
マルチモーダルAI:テキスト、音声、画像など複数の形式(モード)の情報を同時に処理できるAI技術。Ray-Ban Metaグラスでは、ユーザーが見ているものを認識し、それについての質問に答えられる機能を指す。人間が五感を使って情報を処理するのと同じように、AIも複数の入力形式を理解できるようになったと考えるとわかりやすい。
Live AI:毎回「Hey Meta」と言わなくても継続的にAIと会話できる機能。通常のAIアシスタントが「電話をかける度に挨拶が必要」なのに対し、Live AIは「一度挨拶すれば継続的に会話できる対面会話」のようなものだと考えるとよい。
EssilorLuxottica:2018年に世界最大のレンズメーカーEssilorと世界最大のフレームメーカーLuxotticaが合併して誕生した眼鏡業界の巨大企業。Ray-BanやOakleyなどの有名ブランドを所有し、世界の眼鏡市場の約30%のシェアを持つ。
Snapdragon AR1 Gen1:Qualcomm社が開発したARグラス向けの専用プロセッサ。Ray-Ban Metaグラスに搭載されており、省電力ながら高性能な処理を可能にしている。スマートフォンの頭脳に当たるチップの、AR・VR機器向けバージョンと考えるとよい。
デジタルサービス法(DSA):EUが2022年に制定した法律で、オンラインプラットフォームの透明性と説明責任を強化し、ユーザーを違法コンテンツやその他のオンラインリスクから保護することを目的としている。AIサービスの展開にも影響を与える重要な規制枠組みである。
【参考リンク】
Meta公式サイト(外部)Metaのビジョンや製品、取り組みについての情報を提供する公式サイト。
Ray-Ban Meta公式サイト(外部)Ray-Ban Metaグラスの製品情報、購入方法、機能説明などを提供する公式サイト。
Meta AI公式サイト(外部)Meta AIの機能や特徴、活用方法について説明している公式サイト。
EssilorLuxottica公式サイト(外部)EssilorLuxotticaの企業情報、ブランドポートフォリオ、投資家情報などを提供する公式サイト。
Meta Reality Labs(外部)MetaのAR・VR技術開発部門の公式サイト。最新の研究や開発状況を紹介している。