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ALCS・PLS・CLA、英国AI著作権集団ライセンス制度が2025年始動 – AI開発とクリエイター保護の新モデル

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-12 14:09 by admin

2025年4月23日、イギリスの著作権管理団体であるPublishers’ Licensing Services(PLS)、Authors’ Licensing and Collecting Society(ALCS)、およびCopyright Licensing Agency(CLA)は、AI開発企業による著作物利用を包括的に許諾する「集団ライセンス」制度を2025年第3四半期から導入すると発表した。

この制度により、AI企業はAIモデルの学習やファインチューニング、リトリーバル強化生成(RAG)などでイギリス国内の書籍や記事などの著作物を利用する際、個別に権利者と契約を結ぶ必要がなくなり、著作権団体を通じて一括で許諾と報酬の支払いが可能となる。

この制度の背景には、イギリス政府が2024年末から2025年初頭にかけて実施したAIと著作権に関するパブリック・コンサルテーションがある。当初、政府はAI開発のためのテキスト・データマイニング(TDM)に著作権例外を設ける案を検討していたが、クリエイターや出版社団体の強い反発を受け、包括的なライセンスモデルへと方針転換した。新制度では、著作権者が自身の作品のAI利用を拒否できる「オプトアウト」権も認められている。

PLSは4,500社以上の出版社を代表し、ALCSは12万5,000人超の作家を会員とする。CLAはこれら団体と連携し、著作物の利用許諾と報酬分配を担う。今回の制度導入により、AI企業は法的リスクを回避しつつ、必要なデータを円滑に利用できるようになり、権利者側も透明性と適正な報酬を確保できる。

なお、この制度はAIの「入力データ」に関するものであり、AIが生成した「出力物」の著作権や二次利用に関するルールは今後の課題として残されている。

from:Collective licence to ensure UK authors get paid for works used to train AI

【編集部解説】

イギリスで導入されるAI向け著作権集団ライセンス制度は、AI開発とクリエイターの権利保護の両立を目指す新しい取り組みです。今回の制度は、AI企業が著作物を学習や生成AIの開発に利用する際、個別に権利者と交渉せずとも、著作権管理団体を通じて一括で許諾と報酬支払いができる点が大きな特徴です。

これにより、AI開発側は法的な不確実性や交渉コストを大幅に削減でき、クリエイター側も自分の作品がどのように利用されているかを把握しやすくなります。

この制度の背景には、AIによる著作物利用が急速に拡大する中で、クリエイターや出版社が無断利用や適切な報酬の欠如に強い懸念を抱いていたことがあります。イギリス政府は、2024年末から2025年初頭にかけてパブリック・コンサルテーションを実施し、当初はAI開発のための著作権例外を設ける案も検討していました。

しかし、権利者団体の強い反発を受け、最終的には包括的なライセンス制度の導入に舵を切りました。今回の制度では、著作権者が自身の作品のAI利用を拒否できる「オプトアウト」権も認められており、権利者の意思がより尊重される仕組みになっています。

一方で、AI企業にとってはライセンス料の負担増や、今後の国際的な規制動向への対応が新たな課題となるでしょう。AIの学習データとして利用される著作物の範囲や、報酬分配の透明性、さらにはAIが生成したコンテンツの著作権の扱いなど、今後も議論が続く見通しです。

特に、今回の制度が「入力データ」に関するものであり、AIが生み出す「出力物」については未だ明確なルールが定まっていない点は、今後の法整備や国際的な議論の焦点となるでしょう。

この取り組みは、AIとクリエイターの新しい共存モデルの第一歩と言えます。日本を含む他国でも同様の動きが進む可能性があり、今後のグローバルな著作権とAI開発のあり方に大きな影響を与えることが予想されます。技術の進化と権利保護のバランスをどのようにとるか、引き続き注視していく必要があります。

 【用語解説】

集団ライセンス(Collective Licence)
著作権管理団体が権利者に代わって、著作物の利用を一括で許諾・管理する仕組み。AI企業などの利用者は個別に権利者と交渉する必要がなく、団体を通じてまとめて許諾を得て報酬を支払うことができる。今回の英国の制度は、AI開発における著作物利用を対象とした新しい集団ライセンス制度である。

オプトアウト方式
包括的な許諾の枠組みの中でも、権利者が自分の著作物の利用を個別に拒否できる権利。英国の新制度では、作家や出版社がAIによる自作品の利用を望まない場合、明示的に除外を申請できる。

AIトレーニングデータセット
AIモデルの学習に利用される大量のデータの集合体。生成AIの発展に伴い、書籍や記事など著作物が学習データとして幅広く利用されている。今回の制度は、こうしたデータセットに含まれる著作物の利用を対象としている。

【参考リンク】

ALCS(Authors’ Licensing and Collecting Society)(外部)
イギリスの作家を代表する著作権管理団体。著作権料の徴収と分配を行っている。

PLS(Publishers’ Licensing Services)(外部)
イギリスの出版社を代表する著作権管理団体。出版社の著作権管理やライセンス業務を担う。

CLA(Copyright Licensing Agency)(外部)
イギリスの著作権管理団体。出版社団体PLSと作家団体ALCSが共同で運営し、著作物の利用許諾や著作権料の分配を担う。新しい集団ライセンス制度の実務を執行する中心的な組織。

英国知的財産庁(Intellectual Property Office UK)(外部)
英国政府の知的財産政策を担当する機関。著作権やAIに関するガイドラインも公開している。

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りょうとく
主に生成AIやその権利問題について勉強中。
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