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Mistral初の推論AI「Magistral」発表 240億パラメータのオープンソース版も提供開始

Mistral、初の推論AI「Magistral」発表 240億パラメータのオープンソース版も提供開始 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-06-20 17:41 by admin

フランスのAI企業Mistralは2025年6月10日、同社初の推論モデル「Magistral」を発表した。

Magistralは2つのバージョンで構成され、240億パラメータのオープンソース版「Magistral Small」をApache 2.0ライセンスで提供し、より高性能な企業向け「Magistral Medium」をLe ChatとLa Plateforme API経由で提供する。

AIME-24ベンチマークでMagistral Mediumは73.6%の精度を記録し、多数決投票では90%に達した。

Magistral Smallは70.7%、多数決投票で83.3%を記録した。価格はMagistral Mediumが入力トークン100万あたり2ドル、出力トークン100万あたり5ドルに設定されている。

同モデルはAmazon SageMakerで利用可能で、今後IBM WatsonX、Azure AI、Google Cloud Marketplaceでも展開予定である。Mistralは2023年設立で、これまでに11億ユーロ超(約12億4000万ドル超)を調達している。

From: 文献リンクMistral’s first reasoning model, Magistral, launches with large and small Apache 2.0 version

【編集部解説】

今回のMistralによるMagistral発表は、AI業界における「推論モデル」競争の新たな局面を示す重要な出来事です。推論モデルとは、従来のチャットボットのように即座に回答するのではなく、人間のように「考える時間」を取って段階的に問題を解決するAIのことを指します。

OpenAIのo3シリーズやGoogleのGemini 2.5 Pro、中国のDeepSeek R1が先行する中、Mistralがこの分野に参入したことで、推論AI市場の競争が一層激化しています。特に注目すべきは、Mistralが240億パラメータのオープンソース版を提供している点でしょう。

Apache 2.0ライセンスでの提供は、開発者コミュニティにとって画期的な意味を持ちます。これまで推論モデルは主要テック企業の独占的な技術でしたが、今回の決定により、スタートアップや研究機関でも高度な推論AIを活用できるようになります。

技術的な観点から見ると、Magistralの「思考の連鎖」を可視化する機能は、特に規制の厳しい業界で重要な意味を持ちます。金融や医療分野では、AIの判断根拠を説明できることが法的要件となる場合が多く、この透明性は実用化において大きなアドバンテージとなるでしょう。

多言語対応についても、従来の推論モデルが英語中心だった中で、Mistralは欧州言語での高精度な推論を実現しています。これは欧州AI法(AI Act)の施行を控える中で、地域特化型AIの重要性を示唆しています。

ただし、競合他社との性能比較では課題も見えています。一部のベンチマークではGoogle Gemini 2.5 ProやOpenAIのo3に劣る結果も報告されており、技術的な追い上げが必要な状況です。

長期的な視点では、この動きはAI民主化の重要な一歩となります。オープンソースの推論モデルが普及することで、AI技術の恩恵がより多くの組織に行き渡る可能性が高まります。同時に、推論AIの普及により、複雑な意思決定プロセスの自動化が進み、ビジネスや研究の効率化が期待されます。

【用語解説】

推論モデル(Reasoning Model)
従来のAIのように即座に回答するのではなく、人間のように段階的に思考プロセスを経て複雑な問題を解決するAIモデル。数学的証明や論理的推論などの多段階タスクに特化している。

Apache 2.0ライセンス
2004年にApache Software Foundationが策定した寛容なオープンソースライセンス。商用利用、改変、再配布が自由に認められており、派生作品を異なるライセンスで配布することも可能である。

チェーン・オブ・ソート(Chain-of-Thought)
AIが問題解決の過程で行う思考の連鎖を可視化する機能。ユーザーがAIの論理的経路を追跡できるため、特に規制の厳しい業界での説明責任に重要である。

パラメータ
AIモデルの内部構成要素で、モデルの動作を制御する数値。一般的にパラメータ数が多いほど高性能だが、計算資源も多く必要となる。

AIME-24ベンチマーク
2024年アメリカ数学オリンピック予選試験を基にしたAI性能評価指標。数学的推論能力を測定する標準的なベンチマークの一つである。

【参考リンク】

Mistral AI公式サイト(外部)
フランス発のAIスタートアップMistral AIの公式サイト。同社のAIモデルやサービス、最新ニュースを提供している。

Hugging Face(外部)AI・機械学習モデルの共有プラットフォーム。Magistral Smallを含む多数のオープンソースAIモデルがダウンロード可能。

Apache License公式サイト(外部)
Apache 2.0ライセンスの公式ページ。ライセンスの全文と利用条件が詳細に記載されている。

【参考記事】

Magistral | Mistral AI外部)
Mistral AI公式によるMagistral発表記事。モデルの技術的詳細、ベンチマーク結果、企業向け機能について包括的に解説。

Mistral releases a pair of AI reasoning models – TechCrunch(外部)
TechCrunchによるMagistralリリースの報道記事。同社の背景情報や資金調達状況、競合他社との比較分析を含む。

France’s Mistral launches Europe’s first AI reasoning model – Reuters(外部)ReutersによるMagistral発表の報道記事。欧州初の推論モデルとしての意義と、米中企業との競争状況について詳細に分析。

【編集部後記】

推論AI市場は既にOpenAI、Google、DeepSeekなどが先行する激戦区となっていますが、Mistralの後発参入には重要な意味があります。

特に240億パラメータの推論モデルをオープンソースで提供するという決断は、これまで大手テック企業が独占していた高度な推論技術を民主化する画期的な取り組みです。

みなさんは、この技術競争の激化が最終的にユーザーにとってどのような恩恵をもたらすと思いますか?また、欧州発のAI企業として、Mistralが米中の巨大テック企業にどこまで対抗できるか注目されます。ぜひSNSで、推論AIの今後の展開についてご意見をお聞かせください。

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TaTsu
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