Last Updated on 2025-06-16 17:26 by admin
ドイツとNVIDIAは2025年6月11日のGTC Parisにて、欧州初となる産業用AIクラウド構築プロジェクトを発表した。
NVIDIAのジェンセン・フアンCEOは同月13日にドイツのフリードリヒ・メルツ首相と会談し、ドイツテレコムと提携。AIファクトリーと呼ばれる施設は製造業向けで、設計やロボティクス分野の計算処理能力を提供する。初期段階ではNVIDIA Blackwell GPUを1万基導入し、ドイツ史上最大規模のAI導入となる。NEURA RoboticsはNeuraverseというロボット同士が学習し合うネットワークを活用する。NVIDIA Inceptionプログラムに参加する約900社のドイツ拠点スタートアップや学術機関も利用可能となる。今後、EUとドイツは2027年稼働予定の10万基GPUを備えたAIギガファクトリー計画も進めている。
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NVIDIA Builds World’s First Industrial AI Cloud to Advance European Manufacturing
【編集部解説】
NVIDIAとドイツテレコムによる産業用AIクラウド構築は、欧州の製造業にとって大きな転換点です。今回のプロジェクトは、NVIDIAのBlackwell GPUを1万基活用し、設計・エンジニアリング・シミュレーション・デジタルツイン・ロボティクスなど多様な製造アプリケーションの高度化を目指しています。NEURA RoboticsのNeuraverseのようなネットワークを通じ、ロボット同士がリアルタイムで学び合う仕組みも実現されつつあります。
このAIクラウドはドイツ史上最大規模のAI導入であり、今後5年間でデータセンター需要が3倍に増加すると予測される中、同国の競争力維持に不可欠な基盤となります。中小企業(ミッテルシュタント)にもAIリソースを開放することで、産業全体の底上げが期待されます。一方で、AIクラウドの普及はデータセンターの消費電力増加や情報管理、AIによる意思決定の透明性確保といった新たな課題も生み出します。EUは2027年までに10万基のGPUを備えたAIギガファクトリー建設を計画しており、米中に対抗する技術主権確立を目指しています。今回のプロジェクトは、産業構造や人材育成、社会インフラの在り方までを問い直す契機となっています。
【用語解説】
- Blackwell(ブラックウェル)
NVIDIAが開発した次世代GPUアーキテクチャ。AIやデータセンター向けに設計されており、高い演算性能と効率性を持つ。 - AIファクトリー
AIモデルの大規模な開発・訓練・運用を行うためのデジタルインフラ。大量のデータ処理やAIワークフローの自動化を可能にする。 - Neuraverse(ニューロバース)
NEURA Roboticsが開発する認知ロボティクス向けのプラットフォーム。複数のロボットが相互に学習し合い、スキルや知識を共有できるエコシステム。 - ミッテルシュタント(Mittelstand)
ドイツにおける中小規模の企業群。研究開発やニッチ市場での高い競争力を持ち、同国経済の基盤となっている。 - AIギガファクトリー
EUが主導する、10万基規模のAIチップを備えた大規模AIインフラ施設。AIモデルの大規模訓練や技術的主権確立を目的とする。
【参考リンク】
【参考動画】
【参考記事】
【編集部後記】
今回のドイツの事例は、技術革新だけでなく今後の働き方や産業構造にも影響を与える予感を感じました。また「ロボット同士で学習しあう」という点ですが、私たちが思い描いていたSFの世界のような感じがしてすごくワクワクする反面、誤認識によって通ってしまったものがそのまま修正されず、絡んだ糸のように残り続け、それが後を引き後世に影響を与えないか気になります。もしこれが歴史や文化が絡むようなことで起きてしまったら大事故になりかねません。そういった部分には細心の注意が必要だと思いました。