Last Updated on 2025-06-26 07:49 by admin
AI検索エンジン企業のGensparkが2025年6月24日、VB Transform 2025で「Super Agent」の新機能を披露した。
同社はローンチから45日で年間経常収益3,600万ドル(約54億円)を達成し、500万人のユーザーを獲得している。GensparkのCTOであるKay Zhu氏は、従来の厳格なワークフローを排除し、AIエージェントの自律性を重視する「バイブワーキング」アプローチを発表した。
Super Agentは9つの大規模言語モデルをMixture-of-Experts構成で組み合わせ、80以上のツールと10以上のプレミアムデータセットを装備している。システムは計画、実行、観察、バックトラックの古典的エージェントループで動作し、失敗からの知的回復を可能にする。
ライブデモでは、AIエージェントがVentureBeat創設者Matt Marshallに実際に電話をかけ、プレゼンテーション時間の変更を交渉した。日本ユーザーの中には退職連絡や恋人との別れ話にこの機能を活用する事例も報告されている。同社は共同創設者Eric JingとKay Zhuによって設立され、パロアルト本拠の企業として急成長を遂げている。
【編集部解説】
GensparkのSuper Agentが示すのは、企業AIの根本的なパラダイムシフトです。従来の「ワークフロー型AI」は、あらかじめ決められた手順を忠実に実行するだけでしたが、Gensparkは「計画→実行→観察→バックトラック」という古典的なエージェントループを採用し、失敗から学習して代替案を見つける能力を持っています。
この技術の核心は、9つの大規模言語モデルを組み合わせたMixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャにあります。80以上のツールと10以上のプレミアムデータセットを活用することで、単一のAIモデルでは不可能な複雑なタスクを処理できるのです。特に注目すべきは「バックトラッキング」機能で、これにより想定外の状況でも柔軟に対応できます。
ローンチから45日で年間経常収益3,600万ドルという成長速度は、AI業界でも異例の記録です。500万人のユーザー獲得と合わせて、この数字は企業がワークフロー型AIの限界を実感し、より柔軟なソリューションを求めていることを物語っています。
しかし、この技術には潜在的なリスクも存在します。AIエージェントが退職連絡や恋人との別れ話を代行するという事例は、人間関係における責任の所在を曖昧にする可能性があります。また、電話での自動交渉機能は、相手方の同意なしに録音や分析が行われる可能性もあり、プライバシーや倫理的な問題を提起します。
規制面では、EUのAI法やアメリカの各州法において、自律的なAIエージェントの責任範囲をどう定義するかが今後の焦点となるでしょう。特に、AIが人間の代理として行った行為の法的効力について、明確なガイドラインが必要になります。
長期的な視点では、「バイブワーキング」は知識労働の性質そのものを変える可能性があります。定型的なタスクから解放された人間は、より創造的で戦略的な業務に集中できるようになる一方で、AIエージェントとの協働スキルが新たな職業能力として求められるようになるでしょう。
【用語解説】
バイブコーディング(Vibe Coding)
OpenAI共同創設者のAndrej Karpathy氏が2025年初頭に提唱した開発手法。AIに自然言語で指示を出してコードを生成し、厳密な設計よりも「ノリ」や直感を重視してスピーディに開発を進める新しいプログラミングスタイル。
Mixture-of-Experts(MoE)
複数の専門家モデルを組み合わせて使用する深層学習アーキテクチャ。入力データに応じて適切な専門家モデルを選択し、それぞれの出力を重み付け平均することで単一モデルより高い性能を発揮する。
エージェンティックAI(Agentic AI)
自ら考え、行動するAIシステム。従来のAIとは異なり、自ら目標を設定し、環境と相互作用しながら自律的にタスクを遂行する能力を持つ。
LLM-as-a-Judge
大規模言語モデルを使って他のLLMの出力内容を多角的な視点から自動評価する技術。GPT-4による評価と人間の評価の一致度が80%を超えるケースも報告されている。
強化学習(Reinforcement Learning)
ロボットが経験から学ぶことで知的な意思決定を可能にする機械学習技術。プログラム的な報酬やペナルティを受けることで、試行錯誤を繰り返して改善される。
【参考リンク】
Genspark公式サイト(外部)
AI駆動の次世代検索エンジンとSuper Agentを提供するサービス
VentureBeat公式サイト(外部)
Matt Marshall創設のサンフランシスコ本拠テクノロジーニュースサイト
VB Transform 2025公式サイト(外部)
企業AI戦略に特化した20年の歴史を持つカンファレンス
【参考記事】
Genspark’s Super Agent ups the ante in the general AI agent race(外部)
GensparkのSuper Agentが汎用AIエージェント競争で優位性を示す分析記事
Genspark builds the future of AI agents with Claude(外部)
Anthropic公式によるGenspark事例研究と技術的背景の詳細解説
【編集部後記】
GensparkのSuper Agentが示す「バイブワーキング」は、私たちの働き方を根本から変える可能性を秘めています。皆さんの職場でも、定型的なタスクに時間を取られて本当にやりたい創造的な仕事に集中できない経験はありませんか?
AIエージェントが電話代行や資料作成を担当する未来が現実になりつつある今、どのような業務を人間が担い、どこまでをAIに委ねるべきか、一緒に考えてみませんか?皆さんなら、このような自律型AIをどんな場面で活用したいと思われますか?ぜひSNSでお聞かせください。