Last Updated on 2025-05-08 13:40 by admin
インドのShri Shivraj Singh Chouhan農業・農民福祉大臣が、2025年4月にニューインドのShri Shivraj Singh Chouhan農業・農民福祉大臣が、2025年4月にニューデリーでの集会で、CRISPR-Cas9技術を用いたゲノム編集イネ2品種の開発を発表しました。これらのイネは、生産性向上と環境保全の両立を目指したもので、インドの農業現場における課題解決が期待されています。ただし、「少ない水で25%多く収穫できる」という具体的な数値については、現時点で公式な発表や論文による裏付けは確認できていません。
from:インドの科学者たちが、少ない水で25%多く収穫できるゲノム編集イネを発表
【編集部解説】
今回インドで発表されたゲノム編集イネは、従来の遺伝子組換え(GMO)とは異なり、イネ自身が持つ遺伝子の一部をピンポイントで編集する技術「CRISPR-Cas9」を活用しています。これは、パソコンのプログラムの一部だけを修正して動作を最適化するイメージです。
ゲノム編集イネの利点は、従来の品種改良よりも短期間で、狙った形質(例:収量増加、水効率の向上、病害抵抗性など)を高精度に導入できる点です。ただし、現時点では「少ない水で25%多く収穫できる」という具体的な数値は、公式には明記されていません。そのため、今後の研究成果や現場での実証結果に注目が必要です。
ゲノム編集技術は、外来遺伝子を導入しない場合が多いため、従来のGMOとは異なる規制の対象となる場合もあります。日本でもゲノム編集作物の規制や消費者の受容性が今後の焦点です。インドでの開発が成功すれば、将来的には日本への輸出も視野に入るかもしれませんが、規制や市場の動向に左右されるでしょう。
【編集部追記】
稲の栽培は、野生イネの中から「実が落ちにくい」個体を人間が選び出し、それを意図的に育てたことから始まったと考えられています。近年のゲノム解析研究によれば、中国の珠江中流域で栽培化が始まり、その後アジア各地へ広がったことが明らかになっています。こうした選抜と栽培の積み重ねが、現在の多様なイネ品種の基礎となりました。
米づくりの発展には「水」と「灌漑技術」が不可欠でした。縄文時代後期にはすでに排水溝や畦が整備され、灌漑が稲作に欠かせない技術として導入されていました。水田稲作は多量の水を必要とし、10アール(1000㎡)あたり年間400トンもの水が使われます。ため池や用水路の整備、共同作業による大規模な灌漑設備の構築は、集団の協力や統治機構の発展を促し、日本やアジアの社会形成にも大きな影響を与えてきました。
水資源は常に貴重であり、干ばつや水不足は米の生産に直結する重大なリスクでした。そのため、歴史を通じて水の確保と効率的な利用は、稲作社会の最重要課題の一つでした。
今回発表された、少ない水で高い収量を目指すゲノム編集イネは、こうした数千年にわたる人類の挑戦に対する新たな技術的可能性を提示するものです。ただし、現時点では「少ない水で25%多く収穫できる」といった具体的な数値は公式に確認されていません。今後、圃場試験や実用化の進展によって、水資源の制約が強まる現代において、稲作の歴史を塗り替えるほどのインパクトを持つ可能性も期待されます。
【用語解説】
- ゲノム編集
生物が本来持つ遺伝子の一部をピンポイントで書き換える技術。CRISPR-Cas9などが代表的で、従来の品種改良よりも短期間かつ高精度で目的の形質を導入できる。 - CRISPR-Cas9
特定のDNA配列を狙って切断・修復することで、遺伝子を自在に編集できる分子工具。近年のバイオテクノロジーの革新技術。
【参考リンク】
ICAR(インド農業研究評議会)
インドの農業研究・品種改良の中核機関
CRISPR-Cas9技術解説(理化学研究所)
ゲノム編集の基礎と応用について解説