Last Updated on 2025-05-08 11:57 by admin
Meta Platformsは、2025年5月7日(現地時間、日本時間5月8日)に、顔認識AI技術「スーパーセンシング(super sensing)」の開発を再開していることが報じられた。この新機能は、Metaが展開するRay-Ban Metaスマートグラスや今後発売予定のAI搭載イヤホンなどのウェアラブルデバイスに搭載され、周囲の人物の顔をスキャンして名前などの情報を識別できるように設計されている。
Metaは2021年に顔認識機能を停止し、10億人以上の顔データを削除したが、近年のAI技術の進化や米国でのプライバシー規制の緩和を受けて、顔認識技術の再導入を検討している。
スーパーセンシング機能はデフォルトで有効化されるのではなく、ユーザーが自らアプリ設定などで利用を選択するオプトイン方式となる予定だが、周囲の人々が自分の顔がスキャンされていることを認識できない可能性が指摘されている。
Metaはこの技術を2026年以降の新製品に搭載する計画で、現行のRay-Ban Metaスマートグラスでは録画中にライトが点灯するなどプライバシー配慮の設計がなされている。なお、EUや韓国、米国の一部州(テキサス州、イリノイ州)では現地規制によりこの機能の提供が制限される見通しである。
References:
・Meta Renews Work on Facial Recognition Tech as Privacy Worries Fade
・Meta is reportedly working on facial recognition for its AI glasses
【編集部解説】
Metaが顔認識技術の開発を再開する背景には、AI技術の進化と社会のデジタル化、そして米国を中心としたプライバシー規制の緩和があります。2021年にMetaはプライバシーへの懸念から顔認識システムを停止し、10億人以上の顔データを削除しましたが、AIの精度向上や社会的な受容度の変化を受け、再び顔認識技術の導入に舵を切りました。
今回の「スーパーセンシング」機能は、Ray-Ban Metaスマートグラスや今後登場予定のAIイヤホンなど、ウェアラブルデバイスを通じて現実世界の情報を拡張することを目指しています。例えば、対面した知り合いの名前やプロフィールを瞬時に表示したり、観光地で歴史的な人物像を認識して解説を受けたりするなど、日常生活やビジネスシーンでの利便性向上が期待されています。Metaは、ユーザーが自ら機能を選択して有効化する「オプトイン」方式を採用する予定ですが、周囲の人が自分の顔がスキャンされていることに気づきにくいという課題も残ります。
一方で、顔認識技術の社会実装にはリスクも伴います。2024年には、ハーバード大学の学生がMetaのスマートグラスと顔検索サービス「PimEyes」を組み合わせて、見知らぬ人物の個人情報を特定できることを実証し、技術の悪用リスクが改めて浮き彫りになりました。また、AIによる顔認識には人種や性別によるバイアスの懸念も根強く、透明性や倫理的な運用が求められています。
規制面では、EUがAI法で公共空間における生体認証技術の利用を厳しく制限し、韓国や米国の一部州(テキサス州、イリノイ州)でも同様の規制が敷かれています。Metaはこれらの地域ではスーパーセンシング機能を提供しない方針を明らかにしており、今後も各国の法規制への柔軟な対応が不可欠となるでしょう。
顔認識AIの復活は、利便性とプライバシーのバランスを社会全体で問い直す契機となります。技術の進化による新たな価値創出と、個人の権利や倫理的配慮をどう両立させるか――その答えを探る議論が、今後ますます重要になると考えられます。
【用語解説】
スーパーセンシング(Super Sensing):
Metaが開発中の新しいAI機能で、スマートグラスやAIイヤホンなどのウェアラブルデバイスを通じ、周囲の人物や物体をリアルタイムで認識・解析する技術。顔認識を含む高度なセンシングにより、現実世界の情報を拡張することを目指している。
オプトイン方式:
サービスや機能の利用開始にあたり、ユーザーが自ら明示的に同意や設定を行う仕組み。デフォルトでスーパーセンシングは無効化されており、ユーザーの選択によって有効化される。
【参考リンク】
Meta公式サイト(外部)
Meta Platforms, Inc.は、SNSやメタバース、AI、ウェアラブルデバイスなどを展開する米国のテクノロジー企業。
Ray-Ban Metaスマートグラス(外部)
MetaとRay-Banが共同開発したスマートグラス。写真・動画撮影や音声アシスタント機能を搭載し、日常生活を拡張するウェアラブルデバイス。
PimEyes公式サイト(外部)
インターネット上の写真から指定した顔を検索できる顔認識検索サービス。自己監視や権利侵害の確認などに利用されるが、悪用リスクも指摘されている。