国連サイバー犯罪条約採択:テクノロジー企業とプライバシー擁護派の懸念高まる

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国連総会は2024年8月9日、サイバー犯罪に関する新たな条約案を承認した。この条約は、情報通信技術の犯罪目的での使用に対抗するための包括的な国際条約である。

条約の主な内容は以下の通り

  1. あらゆる国が、サイバー犯罪捜査のために技術企業にユーザーデータの保存と提供を要請できるようになる。
  2. 条約の適用範囲は、情報通信技術が犯罪の直接の対象および手段となる「サイバー依存型犯罪」に限定される。
  3. 人権尊重に関する条項が含まれているが、プライバシーや表現の自由の保護に関する懸念が指摘されている

この条約の策定過程では、2021年5月から2024年8月にかけて、ニューヨークとウィーンで計6回の交渉セッションが開催された。最終的な採択に至るまでには、人権団体や技術企業からの強い懸念が表明されていた。

条約の批准国には、オーストラリア、フランス、日本、ドイツなど50カ国以上が含まれている。

from:UN Approves Cybercrime Treaty Despite Major Tech, Privacy Concerns

【編集部解説】

国連が採択したサイバー犯罪条約は、グローバル化するデジタル社会における重要な一歩と言えます。しかし、その内容には慎重な検討が必要です。

まず、この条約の意義について考えてみましょう。サイバー犯罪は国境を越えて行われることが多く、国際的な協力体制の構築は不可欠です。この条約は、そのための法的枠組みを提供する可能性を秘めています。

一方で、人権団体や技術企業が指摘する懸念点も看過できません。特に、プライバシーや表現の自由に対する潜在的な脅威は深刻です。条約の文言が曖昧であることで、権威主義的な政府がこれを悪用し、反体制派や少数派を弾圧する口実になる可能性があります。

技術の進歩は速く、法律がそれに追いつくのは困難です。この条約が、急速に変化するデジタル環境に適応できるかどうかも課題となるでしょう。

また、国家間の技術力や法執行能力の格差も問題です。先進国と発展途上国の間で、条約の解釈や執行に差が生じる可能性があります。

【参考リンク】

  1. 国連薬物犯罪事務所(UNODC)サイバー犯罪ページ(外部)
    サイバー犯罪に関する国連の取り組みや最新情報を提供しています。
  2. 日本サイバー犯罪対策センター(JC3)(外部)
    産学官連携によるサイバー犯罪対策の推進を目的とした組織のサイトです。

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