Last Updated on 2024-08-13 07:41 by admin
米国議会で、中国のバイオテクノロジー企業との取引を制限する法案「BIOSECURE Act(バイオセキュア法)」が審議されている。
この法案は、WuXi AppTec社やBGI社などの中国バイオテク企業との取引を禁止し、アメリカ人の健康データと遺伝子情報を保護することを目的としている。
2024年5月10日、法案の改訂版が公開された。新版では、WuXi Biologics社も規制対象に追加され、米国企業が中国バイオテク企業との取引を停止する期限が2032年まで延長された。
この法案の影響を受ける可能性のある企業には、WuXi AppTec社、WuXi Biologics社、BGI社、MGI社、Complete Genomics社などがある。
バイオテクノロジー業界団体BIOの調査によると、バイオ医薬品・バイオテクノロジー企業の75%が中国のCDMO(医薬品受託製造開発機関)や遺伝子解析企業と提携している。また、製造パートナーの移行には最大8年かかる可能性があるという。
法案に対し、WuXi AppTec社は軍との関連性を否定し、BGI社はデータ保護を支持する立場を表明している。一方で、Complete Genomics社は法案が米国のバイオテク供給チェーンと患者の医薬品アクセスに影響を与える可能性を懸念している。
この法案は、2024年3月6日に米上院国土安全保障委員会で11対1で可決された。今後、下院委員会での審議を経て、上院本会議、下院本会議、大統領の承認を得て法律となる見込みである。
from:Pressure from anti-China legislation begins to ripple through biopharma
【編集部解説】
BIOSECURE Act(バイオセキュア法)は、アメリカの国家安全保障と経済競争力を守るための法案ですが、その影響は広範囲に及ぶ可能性があります。
まず、この法案が成立した場合、アメリカのバイオテクノロジー業界に大きな変化をもたらすことが予想されます。多くの企業が中国のCDMO(医薬品受託製造開発機関)や遺伝子解析企業と提携しているため、新たなパートナーを見つける必要に迫られるでしょう。これは短期的には開発の遅延やコスト増加につながる可能性があります。
一方で、この法案はアメリカ国内のバイオテク産業を活性化させる機会にもなり得ます。国内のCDMOや研究機関への投資が増加し、新たな雇用創出や技術革新につながる可能性があります。
しかし、グローバルな視点から見ると、この法案は国際的な科学協力を阻害する恐れもあります。バイオテクノロジーの発展には国境を越えた協力が不可欠であり、過度な規制は世界的な医療イノベーションの進展を遅らせる可能性があります。
また、この法案が中国企業を過度に標的にしているという批判もあります。国家安全保障は重要ですが、特定の国や企業を差別することなく、公平で透明性のある基準に基づいた規制が求められるでしょう。
長期的には、この法案がバイオテクノロジー分野における米中の技術覇権競争をさらに激化させる可能性があります。両国の対立が深まれば、世界のバイオテク業界全体に影響を及ぼす恐れがあります。