Last Updated on 2024-12-07 23:05 by admin
ルーマニアの憲法裁判所は2024年12月初旬、第一回大統領選挙の結果を無効とし、12月8日に予定されていた決選投票の中止を決定した。
事案の詳細
第一回投票で勝利した親ロシア派のカリン・ジョルジェスク候補の選挙運動において、TikTok上で25,000アカウントによるロシアの組織的な影響力工作が確認された。また、選挙期間中には85,000件以上のサイバー攻撃が検知されている。
TikTokは11月下旬に90アカウント(78件と12件の2グループ)を削除。さらに9月には22アカウント(フォロワー総数30万人)のネットワークを削除している。
from:Romania Cancels Presidential Election Results After Alleged Russian Meddling on TikTok
【編集部解説】
今回のルーマニア大統領選挙の無効化は、ソーシャルメディアを介した選挙干渉の新たな形を浮き彫りにした重要な事例といえます。
特筆すべきは、TikTokというプラットフォームが選挙干渉の主要な舞台となったことです。ジョルジェスク候補は従来型のテレビ討論や選挙ポスターを一切使用せず、代わりにTikTok動画を数百本制作。伝統的な衣装を着て乗馬する姿や、正教会でろうそくを灯す様子など、「伝統」「信仰」「強さ」を強調する映像が数百万回再生されました。
このケースは、EUのデジタルサービス法(DSA)が実際のケースで適用される初めての重要な事例となりました。欧州委員会はDSAに基づき、TikTokに対してアルゴリズムやレコメンドシステムの詳細な情報開示を要求しています。
注目すべきは、サイバー攻撃と情報操作が組み合わされた「ハイブリッド作戦」の形態です。85,000件以上のシステム侵入の試みと、25,000のボットアカウントによる組織的な情報拡散が同時に行われました。
このケースは、ウクライナやモルドバで確認されたクレムリンの影響力工作と類似のパターンを示していると指摘されています。EUの東端に位置するルーマニアは、NATOの重要な前線国家であり、この事例は地政学的な意味も持ちます。
今回の事態は、選挙におけるソーシャルメディアの影響力と、それを規制する法的枠組みの重要性を改めて示しました。特に、TikTokのような新興プラットフォームに対する監視体制の整備が急務となっています。
デジタル時代の民主主義を守るため、各国は技術的対策と法的整備の両面で新たな取り組みを迫られています。この事例は、日本を含む他の民主主義国家にとっても重要な教訓となるでしょう。