Last Updated on 2025-01-03 10:30 by admin
Palo Alto Networks Unit 42の研究チームが、OpenAIなど主要なAIプロバイダーのLLM(大規模言語モデル)の安全対策を突破する新手法「Bad Likert Judge」を発見しました。この手法により、AIシステムの防御機能を60%以上の確率で回避できることが判明しています。
研究チームは6つの主要LLM(OpenAI、Azure、Google、AWS、Meta、NVIDIA)に対してテストを実施。リッカート尺度を用いた評価システムを悪用することで、通常では生成できない有害なコンテンツの生成に成功しました。
from:‘Bad Likert Judge’ Jailbreak Bypasses Guardrails of OpenAI, Other Top LLMs
【編集部解説】
「Bad Likert Judge」の発見は、AIセキュリティの分野に大きな波紋を投げかけています。この手法は、Palo Alto NetworksのUnit 42チームによって2024年12月末に発見され、2025年1月2日に公開された新しいジェイルブレイク手法です。
特筆すべきは、この手法が従来のジェイルブレイク手法と比べて非常に高い成功率を示していることです。Unit 42の研究によると、OpenAI、Azure、Google、AWS、Meta、NVIDIAなど主要な6つのLLMに対して平均60%以上の攻撃成功率の向上が確認されています。
この手法が注目される理由は、心理測定で使用されるリッカート尺度という、一見無害な評価手法を巧妙に利用している点にあります。LLMに「判定者」として振る舞わせることで、通常のセーフガードをバイパスするという、これまでにない独創的なアプローチを取っています。
特に懸念されるのは、この手法が様々な種類の有害なコンテンツ生成に応用可能だという点です。ヘイトスピーチ、ハラスメント、不適切な性的コンテンツ、違法活動の促進など、幅広い範囲での悪用の可能性が指摘されています。
しかし、この発見にはポジティブな側面もあります。Enkryptなどのセキュリティ企業が提供する最新の防御技術を使用することで、攻撃成功率を89.2%も低下させることができることが実証されています。これは、適切な対策を講じることで、AIシステムの安全性を大幅に向上できることを示しています。
企業のAI活用に関して言えば、この発見は重要な示唆を与えています。Enkryptの調査によると、Fortune 500企業でのLLM使用において、ジェイルブレイクの脆弱性への露出を6%から0.6%まで低減できることが示されています。
長期的な視点では、このような脆弱性の発見は、AIシステムの安全性向上に不可欠なプロセスとなっています。Stanford大学の研究が示すように、AIへの過度な依存はセキュリティリスクを高める可能性がありますが、適切な対策と監視体制を整えることで、そのリスクを最小限に抑えることができます。
将来的には、EU AI法などの規制強化も予想される中、企業はAIシステムのセキュリティ対策により一層の注意を払う必要があるでしょう。特に、96%の開発チームが既にAIアシスタントを使用している現状を考えると、セキュリティとユーザビリティのバランスを取ることが重要な課題となっています。