中国のAIスタートアップDeepSeekが大規模なサイバー攻撃を受け、2025年1月27日から新規ユーザー登録を一時的に制限している。攻撃は中国時間21時33分(太平洋標準時07時33分)に始まった。
企業概要
DeepSeekは2023年5月に設立。創業者の李文峰氏はHigh-Flyerヘッジファンドの共同創業者で、本社を中国杭州に置く。従業員数は約150名。
最新モデルの詳細
DeepSeek-R1およびDeepSeek-V3は、総パラメータ数671億、実際の使用パラメータは1回の処理につき37億という効率的な設計を実現。開発費用はわずか558万ドル(約8.3億円)で、2025年1月20日に公開された。
from:DeepSeek limits new accounts amid cyberattack
【編集部解説】
DeepSeekの革新性
DeepSeekの技術的な特徴として最も注目すべきは、Mixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャの効率的な実装です。671億のパラメータを持つモデルでありながら、実際の推論時には37億パラメータしか使用しないという革新的な設計となっています。
このアプローチにより、従来のモデルと比較して計算リソースを大幅に削減することに成功しました。特筆すべきは、開発コストがMetaのLlama 3.1の約10分の1で済んでいることです。
産業への影響
DeepSeekの台頭は、AI業界に大きな衝撃を与えています。特に、米国による半導体輸出規制下でも、NVIDIA H800チップと代替チップを組み合わせることで高性能なAIモデルを開発できることを実証しました。
この成功は、高額な投資や最先端のハードウェアがAI開発の絶対条件ではないことを示しています。これにより、NVIDIAやMicrosoftなどの大手テック企業の株価に影響を与え、市場全体にも動揺が走っています。
セキュリティの課題
今回のサイバー攻撃に関して、注目すべき点が2つあります。サイバーセキュリティ企業KELAの報告によると、DeepSeekのモデルはChatGPTと比較して脆弱性が高く、有害なコンテンツの生成が可能であることが指摘されています。
また、急速な人気の高まりが攻撃者の注目を集める結果となり、サービスの安定性に影響を及ぼしています。これは、AIサービスの普及に伴うセキュリティリスクの新たな課題を提起しています。
今後の展望
DeepSeekの成功は、AI開発における効率性とコスト削減の可能性を示唆しています。これは、特に限られたリソースで開発を行う必要がある新興企業や研究機関にとって、大きな希望となるでしょう。
しかし同時に、モデルの安全性とセキュリティの確保が重要な課題として浮き彫りになっています。今後は、効率性と安全性のバランスをどのように取るかが、AI開発における重要なテーマとなっていくと考えられます。
日本企業への示唆
このケースは、必ずしも潤沢な開発資金や最先端のハードウェアがなくても、効率的なアプローチで競争力のあるAIモデルを開発できることを示しています。日本企業にとっても、独自の強みを活かした AI 開発の可能性を示唆する重要な事例といえるでしょう。