テラドローン、国産フライトコントローラー「Terra DFC」を量産

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7月にバッテリー、9月にフライトコントローラー。テラドローンは2か月足らずのうちに、経済産業省が重要部品に位置づける4品目のうち2つの国内量産を打ち出しました。防衛用ドローンの受注が続くなか、同社は機体に加えて、その内側の部品にも手を伸ばしています。問われているのは、機体を何台作れるかだけではなさそうです。


Terra Drone株式会社は2026年9月14日、防衛用ドローン向けの国産フライトコントローラー「Terra DFC」を自社開発し、量産体制を構築したと発表した。防衛省向けに納入予定の「汎用型防衛ドローン」への搭載を前提に開発したもので、姿勢制御、モーター制御、センサー情報の処理、飛行制御を担う。必要な制御機能を1枚の基板に集約し、価格を抑えながら小型化、量産性、改修性を重視して設計した。

国内で品質管理、改修、供給の体制を構築し、今後は迎撃ドローン、偵察ドローン、重要インフラ防護向けドローンへの展開も視野に入れる。同社は国産バッテリー事業に続く取り組みと位置づけ、電源系と制御系の国内供給基盤を強化するとしている。

From: 文献リンクテラドローン、防衛用ドローン向け国産フライトコントローラー「Terra DFC」を自社開発、量産体制を構築

【編集部解説】

「頭脳」は、替えのききにくい部品

フライトコントローラーは、ジャイロや加速度センサーなどから届く情報をもとに機体の姿勢を計算し、モーターの回転を絶えず調整し続ける基板です。これが止まれば、ドローンは空中で姿勢を保てません。リリースが「頭脳」と呼ぶのはこのためです。

バッテリーもフライトコントローラーも、機体の仕様に合わせて選ばれる部品で、簡単に別の製品へ置き換えられるものではありません。とくにフライトコントローラーを替える場合は、センサーや機体の特性に合わせた設定をやり直し、飛行を確かめ直す必要があります。供給が止まったときの影響は、機体の飛び方そのものに及びます。

経済産業省が2026年3月に公表した「無人航空機に係る安定供給確保を図るための取組方針」は、バッテリー、モーターとESC、フライトコントローラー、映像伝送モジュールの4つを重要部品に位置づけています。そのうえで、国内メーカーが完成機体をつくる場合でも、これらを特定国のメーカーから調達している事例が複数あると指摘しています。今回の発表は、このうち「頭脳」にあたる部品を、機体メーカー自身が手がけたものです。

電源系の次に、制御系

テラドローンは2026年7月27日、円筒形セルを用いたドローン向け高出力バッテリーパックの国内量産体制を構築すると発表していました。業務提携先の既存設備を生かし、国内で設計から組み立て、検査、品質保証までを手がける枠組みです。

そこから約1か月半で、今回のフライトコントローラーです。同社は両者をあわせて、電源系と制御系の国内供給基盤と位置づけています。

機体の受注も並行して進んでいます。5月には防衛装備庁から「モジュール型UAV(汎用型)教育用」300式を受注し、8月には迎撃ドローン「Terra B1」の量産調達契約に至りました。機体の受注と部品の供給体制づくりが、同じ時期に進んでいることになります。なお、搭載先とされる「汎用型防衛ドローン」と、5月に受注した教育用の機体との関係は、今後の発表で見えてくるはずです。

同じ9月14日には、ウクライナ・キーウを拠点とする防衛ドローン企業Kurin Technologiesへの出資と、チェコのティーアールエル(TRL)とのジェット型迎撃ドローンの製品化に向けた検討も発表しています。海外の防衛ドローン企業との連携と、国内での部品供給体制づくりを、同時に進めている格好です。

国産化の進め方は一つではありません。Prodroneが2026年4月に発表した純国産ドローンの試作機「PD4B-MS」では、モーター/ESCをキヤノン電子、フライトコントローラーをジェイテクト、バッテリーを古河電池が担いました。国内の部品メーカーが、得意分野ごとに役割を分けた形です。

機体メーカーが自らフライトコントローラーを開発する例もあります。ACSLは以前から、自社開発のフライトコントローラーを搭載した機体を展開してきました。テラドローンも7月の発表で、モーターやコントローラなどの主要部品の内製化を、国内の中小企業と緊密に連携して進める考えを示しています。

部品メーカーによる分担と、機体メーカーによる自社開発。日本のドローン産業では、この二つが並行して厚みを増しつつあります。

1枚の基板に集約するということ

公開された写真を見ると、Terra DFCは四隅に固定用の穴を持つ正方形に近い基板で、中央に大きなチップが1つ配置されています。周囲にUSB Type-Cの端子と、配線をつなぐ白いコネクタが複数並ぶ、すっきりとした構成です。必要な制御機能を1枚に集約したという設計方針が、そのまま形に表れています。

同社は、この設計で価格、量産性、改修性を重視したと説明しています。防衛用ドローンでは、損耗に備え、必要な数を途切れず供給し続けられる体制が重要になります。同社が、有事や供給制約のもとでも生産・改修・運用を続けられる体制を重視すると述べているのは、この事情を踏まえたものでしょう。

「改修できる」ことの価値

リリースは、海外製のブラックボックス部品に頼る場合の制約として、仕様変更、制御ソフトウェアの改修、ログ管理、センサー連携、セキュリティ確認、緊急時の代替調達を挙げています。

改修できることの価値は、調達する側の要件にも表れています。防衛装備庁が2026年6月に公表した迎撃ドローンの早期取得プログラムでは、提案に含めるべき内容として、システムソフトウェアなどの技術情報を官側へ開示できることや、搭載装置を載せ替えられることを挙げました。防衛用途では、制御の中身を説明し、手を入れられることが、調達する側から求められています。

挙げられた利点の多くはソフトウェアに関わるものです。基板の自社開発に加えて、制御ソフトウェアをどこまで自社で持つのかは、これから輪郭が定まっていく部分です。

政策の「8万台」との距離

リリースは背景として、2つの政策に触れています。無人航空機が経済安全保障推進法の特定重要物資に指定されていることと、2030年時点で約8万台の国内量産基盤を構築する方針があることです。

この約8万台は、経済産業省の無人機産業基盤強化検討会が2025年12月の中間取りまとめで示した数字です。2030年の国内需要を約14万台と見込み、とくに安定供給が求められる点検・物流・防犯の3用途を想定して、約8万台の完成機体と重要部品を供給できる体制を目指すとしています。

経済産業省は取組方針への意見募集の結果で、支援の対象はこの3用途に限らず、災害対応や測量も含まれると回答しています。いずれにしても、防衛用途の調達台数を示す数字ではありません。

それでも、両者は切り離された話ではありません。フライトコントローラーのような基幹部品は、民生機と防衛機に共通する技術基盤になりえます。リリースも迎撃や偵察に加え、重要インフラ防護向けのドローンへの展開を視野に入れています。防衛の需要で量産の足場を固めた部品が、民生の量産基盤づくりを支える側に回っていくのか。中長期で注目したい点です。

手のひらに載る基板が、備えの土台になる

防衛装備の国産化というと、大型の機体やミサイルを思い浮かべがちです。けれども、安価な無人機を数多く使う時代には、手のひらに載る基板やバッテリーをどれだけ国内で安定して作れるかが、備えの土台になります。

機体メーカーが部品のレイヤーまで降りて、量産体制をつくる。Terra DFCは、国内で積み重ねられてきたフライトコントローラーの自社開発の裾野を広げ、防衛用ドローンの量産へとつなげる一歩です。次は、この基板が実際に機体へ載り、現場で改修を重ねていく姿を見届けたいと思います。

【関連記事】

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Terra B1が迎撃ドローン早期取得プログラムの実証試験を経て量産調達契約に至った経緯を、公募の区分とあわせて扱った記事。

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経済産業省の取組方針の数値を詳しく扱った記事。国産化率の低さを背景に、修理しやすい機体という別の国産化の道を紹介している。

【編集部後記】

経済産業省の取組方針への意見募集には、12件の意見が寄せられました。そのなかに、機体を国内で製造していても、制御ソフトウェアや飛行アルゴリズムが海外依存やブラックボックスのままなら、改良の主導権を国内に持っているとは言いがたい、という意見がありました。

経済産業省は、重要部品の対象を4品目としたうえで、ソフトウェアの研究開発費をどこまで認めるかは計画ごとに審査すると回答しています。「国産」という言葉が、基板の先にある制御の中身までどう広がっていくのか。Terra DFCの次の発表を待ちます。


【用語解説】

フライトコントローラー
ジャイロや加速度センサーなどの情報から機体の姿勢を計算し、モーターを制御して飛行を保つ基板である。ドローンの「頭脳」にあたる。

ESC(Electronic Speed Controller)
フライトコントローラーからの指令を受け、モーターの回転数を制御する電子回路である。経済産業省はモーターとあわせて重要部品の1つに位置づけている。

映像伝送モジュール
機体のカメラ映像を地上の操縦者へ無線で送る装置である。重要部品4品目の1つとされる。

経済安全保障推進法/特定重要物資
国民の生存や経済活動に不可欠で、外部依存による供給途絶のおそれがある物資を政府が「特定重要物資」に指定し、国内の生産能力強化などを支援する制度である。無人航空機はその対象に指定されている。

円筒形セル
筒状の外装を持つリチウムイオン電池のセルである。薄い袋状のパウチセルと比べ、衝撃や振動への耐久性に優れるとされる。

迎撃ドローン
敵の無人機を空中で無力化するためのドローンである。長距離自爆型の無人機などへの対処手段として開発が進んでいる。

UAV(Unmanned Aerial Vehicle)
無人航空機のことである。ドローンとほぼ同じ意味で使われる。

意見募集(パブリックコメント)
行政機関が命令や方針を定める前に案を公表し、広く国民から意見を募る手続きである。寄せられた意見と、それに対する行政の考え方も公表される。

【参考リンク】

Terra Drone株式会社(外部)
測量・点検・農業などの産業用ドローン事業と運航管理システムに加え、迎撃ドローンをはじめとする防衛事業を国内外で展開する。

Terra Defense(外部)
テラドローンの防衛事業サイト。防衛用ドローン事業の情報を掲載し、国産バッテリー事業の発表でも問い合わせ先として案内された窓口を設けている。

経済産業省「無人航空機」(外部)
経済安全保障推進法に基づく無人航空機の取組方針や、供給確保計画の認定申請に使う様式、制度に関する連絡先を掲載する経済産業省のページ。

無人機産業基盤強化検討会(外部)
経済産業省が無人機産業の基盤強化に向けて設置した検討会。2030年の国内需要推計や量産基盤の目標を含む中間取りまとめを公表した。

株式会社ACSL(外部)
自社開発のフライトコントローラーを搭載した国産の産業用ドローンを開発・販売する。点検、物流、防災などの分野で機体を展開している。

【参考記事】

テラドローン、ドローン向け国産バッテリー事業に本格参入(外部)
円筒形セルを用いた高出力バッテリーパックの国内量産を発表。業務提携先は累計約50万パックの供給実績を持ち、他社にも外販する計画とする。

無人航空機に係る安定供給確保を図るための取組方針(外部)
バッテリー、モーターとESC、フライトコントローラー、映像伝送モジュールの4品目を重要部品と位置づけ、国内生産能力の強化を支援する方針。

無人機産業基盤強化検討会 中間取りまとめ(外部)
2030年の国内需要を約14万台と推計し、点検・物流・防犯用途を想定して約8万台の完成機体と重要部品を供給できる体制の構築を目標に掲げた。

経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律に基づく、「無人航空機に係る安定供給確保を図るための取組方針(案)」についての意見募集の結果について(外部)
寄せられた12件の意見と回答を掲載する。支援の対象は3用途に限らず、災害対応や測量の分野も認定の範囲内になると経済産業省が回答している。

迎撃ドローン早期取得プログラムの実施について(外部)
迎撃ドローン早期取得プログラムの募集資料。提案内容としてシステムソフトウェア等の技術情報の官側への開示や、搭載装置の載せ替えを求めた。

ACSL、国産産業用ドローンの製品サイトを公開(外部)
2021年の発表。ドローンの制御を担うフライトコントローラーを自社開発しているため、用途に応じた柔軟なカスタマイズが可能だと説明した。

テラドローン、ジェットエンジン搭載シャヘド向け、迎撃ドローン製品化の具体化に向けた検討を本格化(外部)
チェコのティーアールエルと、ジェットエンジンを搭載したシャヘド系無人機に対応する迎撃ドローンの製品化に向けた検討を本格化すると発表した。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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