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スタンフォード大学が常圧下での新型高温超伝導体の合成に成功 – 研究の新たな展開へ

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Last Updated on 2025-02-06 16:16 by admin

米国スタンフォード大学とSLAC国立加速器研究所の研究チームが、常圧下で安定した新しい高温超伝導体の開発に成功した。この研究成果は2024年12月、科学誌「Nature」に掲載された。
研究チームは、スタンフォード材料エネルギー科学研究所(SIMES)所長のハロルド・ファン教授が率いる。

【研究成果のポイント】

特殊な基板を用いた薄膜成長技術により、常圧(1気圧)での超伝導体の安定化に成功
開発された材料は、圧縮歪みの程度に応じて-247℃から-231℃の範囲で超伝導転移を示す
完全な抵抗ゼロ状態は-271℃で達成

from:https://www.nature.com/articles/s41586-024-08525-3

【編集部解説】

今回の研究成果は、超伝導体の実用化に向けた大きな一歩となります。
従来の高温超伝導体研究では、数十万気圧という極端な高圧環境が必要でした。これは研究自体を困難にし、実用化への大きな障壁となっていました。今回の成果により、常圧下での研究が可能になり、より詳細な物性研究への道が開かれました。
特に注目すべきは、基板からの横方向の圧縮力のみで超伝導状態を実現できることを実証した点です。これは、超伝導のメカニズムに関する新しい知見をもたらす可能性があります。
この技術が実用化されれば、以下のような革新的な応用が期待できます:

・送電損失ゼロの電力網の実現
・高性能量子コンピュータの開発
・超伝導磁気浮上式鉄道の効率化
・医療用MRI装置の小型化・低コスト化

【用語解説】

  • 超伝導体
  • 電気抵抗がゼロになる特殊な状態の物質です。リニアモーターカーの浮上走行やMRI装置などに利用されています。
  • 薄膜成長技術
  • 原子レベルで制御しながら物質の薄い膜を作る技術です。

【参考リンク】

  1. SLAC国立加速器研究所(外部)
    米国エネルギー省が所管する世界最先端の物理学研究施設。スタンフォード大学が運営
  2. スタンフォード大学(外部)
    シリコンバレーの中心に位置する世界トップクラスの研究大学。工学系研究で世界をリード

【参考動画】

投稿者アバター
野村貴之
理学と哲学が好きです。昔は研究とかしてました。
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