innovaTopia

ーTech for Human Evolutionー

アフリカ・スーパープルームが大陸分裂を加速、東アフリカリフトシステムで地球深部からの証拠を発見

アフリカ・スーパープルームが大陸分裂を加速、東アフリカリフトシステムで地球深部からの証拠を発見 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-30 07:40 by admin

2025年5月28日、研究者らがアフリカ大陸の分裂を引き起こす地下深部の力に関する新たな証拠を発見したと発表した。地球の核とマントルの境界から上昇する巨大な高温岩石の柱「アフリカ・スーパープルーム」が、東アフリカリフトシステム(EARS)全体で地殻にひび割れを生じさせ火山活動を引き起こしている。

EARSはヨルダンから南のモザンビークまで約6,400キロメートル延びる地球最大の活動的大陸リフトである。
研究チームはケニアのミーンガイ地熱地帯でガス放出を測定し、地球マントル深部からのガスと一致するネオン同位体の化学的特徴を発見した。同じ特徴は紅海からマラウイまでの火山岩でも確認され、単一の巨大な源であるアフリカ・スーパープルームの存在を示している。
この上昇物質は地表から約2,900キロメートル下から上昇し、地殻を破砕させる力で押し付けている。現在の分裂速度は年間約12ミリメートルで、最終的に東アフリカの一部が剥がれて新しい大陸を形成する可能性がある。

From:
文献リンクResearchers found evidence that Africa might be breaking in two

【編集部解説】

今回の研究発表は、地球科学分野における長年の議論に決着をつける可能性のある重要な発見です。アフリカ大陸の分裂については約2,500万年前から始まったプロセスとして知られていましたが、その原動力が地表近くの浅い地質プロセスなのか、それとも地球深部からの巨大な熱上昇流なのかについて科学者たちの間で意見が分かれていました。

今回の研究で特に注目すべきは、ケニアのミーンガイ地熱地帯で検出されたネオン同位体の化学的特徴が、太平洋のホットスポットであるハワイの火山岩で見つかるものと酷似している点です。ハワイの火山活動は、地球の核に近い深部マントルから上昇するプルームによって引き起こされていると考えられており、その火山岩に含まれるネオン同位体(特に原始的な組成を保持するネオン)は、地球深部の物質を特定する重要な指標とされています。ミーンガイでこれと類似したネオン同位体の特徴が確認されたことは、アフリカ大陸の下にもハワイと同様に、地球のより原始的な部分から直接上昇してくる巨大なマントルプルームが存在し、それが大陸分裂の原動力となっていることを強く示唆しており、この類似性は偶然ではないと考えられます。

この発見が示唆する地質学的プロセスの規模は想像を絶するものがあります。地表から約2,900キロメートル下、つまり地球の核とマントルの境界付近から上昇する熱い岩石の柱が、アフリカ大陸全体を押し上げているのです。これにより、アフリカ大陸は通常より数百メートル高い位置に「浮いている」状態となっています。

このプロセスが人類に与える直接的な影響は限定的です。分裂の速度は年間約12ミリメートルと極めて緩やかで、新しい海洋の形成には数千万年という時間スケールが必要だからです。しかし、地熱エネルギーの観点では大きな可能性を秘めています。

東アフリカリフトシステム沿いの地熱活動は、再生可能エネルギー開発の重要な資源となり得ます。ケニアでは既に地熱発電が電力供給の重要な柱となっており、今回の研究結果は地熱資源の分布予測精度向上に貢献するでしょう。

一方で、この地質活動は地震や火山噴火のリスクも伴います。東アフリカ地域では今後も継続的な地質活動の監視が必要であり、防災対策の重要性が高まっています。

長期的な視点では、この研究は地球の内部構造と表面地形の関係について新たな理解をもたらします。プレートテクトニクス理論の発展にも寄与し、他の大陸や惑星の地質活動解明にも応用される可能性があります。

【用語解説】

東アフリカリフトシステム(EARS)
ヨルダンから東アフリカのモザンビークまで約6,400キロメートルにわたって延びる巨大な地殻の裂け目。約2,500万年前から形成が始まり、現在も年間約12ミリメートルずつ拡大している。将来的にアフリカ大陸を二つに分割する可能性がある地球最大の活動的大陸リフトである。

マントルプルーム
地球の核とマントルの境界付近から上昇する高温の岩石の柱状構造。通常の対流とは異なり、深部から表面に向かって直接上昇し、火山活動や地殻変動を引き起こす。ハワイ諸島の形成もマントルプルームによるものとされている。

アフリカ・スーパープルーム
アフリカ大陸下部に存在する特に巨大なマントルプルーム。地表から約2,900キロメートル下の核マントル境界から上昇し、アフリカ大陸全体を数百メートル押し上げている。直径数千キロメートルに及ぶ巨大な構造で、ハワイのプルームよりもはるかに広範囲で強力である。

ソマリアプレートとヌビアプレート
東アフリカリフトシステムによって分離されつつある二つのテクトニックプレート。ソマリアプレートは東アフリカの角状地域を含み、ヌビアプレートはアフリカ大陸の主要部分を占める。両プレートの境界に沿って分裂が進行している。

ネオン同位体
ネオンの原子核に含まれる中性子数が異なる同位体。特にネオン-22は地球形成時に核に閉じ込められた原始的なガスで、深部マントル由来の物質を特定する重要な地球化学的指標として使用される。

ミーンガイ地熱地帯
ケニア中部に位置する地熱発電地域。東アフリカリフトシステム上に位置し、地下の高温により地熱エネルギーの開発が行われている。今回の研究で深部マントル由来のガスが検出された重要な観測地点である。

【参考リンク】

ケニア エネルギー・石油省(外部)
ケニアの地熱エネルギー開発を統括する政府機関。同国の地熱発電ポテンシャルは10,000MWに達し、20以上の探査地域で開発が進められている。

東北大学大学院理学研究科(外部)
日本のマントル構造研究の最前線を担う研究機関。2025年3月に「日本列島下の全マントル構造とマントル流れ場の高精度推定に成功」を発表している。

【編集部後記】

地球の内部で起きている壮大なドラマを想像してみてください。私たちが日常を過ごしている足元で、約2,500万年という時間をかけて大陸が静かに分裂し続けているのです。今回の研究は、その原動力が地球の最深部から来ていることを科学的に証明しました。このような地質学的変化が、将来の地熱エネルギー開発や防災対策にどのような影響を与えるのでしょうか。また、他の大陸でも同様のプロセスが進行している可能性はあるのでしょうか。地球科学の最前線で明らかになる新発見に、ぜひ注目してみてください。

【参考記事】

Live Science – Africa is being torn apart by a ‘superplume’ of hot rock from deep within Earth, study suggests

Phys.org – Geothermal gases offer strong evidence of a superplume beneath East Africa

Nature Communications – Superplume mantle tracked isotopically the length of Africa

【関連記事】

エネルギー技術ニュースをinnovaTopiaでもっと読む

投稿者アバター
TaTsu
デジタルの窓口 代表 デジタルなことをまるっとワンストップで解決 #ウェブ解析士 Web制作から運用など何でも来い https://digital-madoguchi.com
ホーム » エネルギー技術 » エネルギー技術ニュース » アフリカ・スーパープルームが大陸分裂を加速、東アフリカリフトシステムで地球深部からの証拠を発見