ハンドヘルドゲーミングPCでは、最高性能だけでなく、限られた電力でどこまで性能を維持できるかが使い勝手を左右します。IntelのArc G3 Extremeは、AMD製プロセッサーが広く採用されてきた市場でどこまで戦えるのでしょうか。量産版MSI Clawの実機テストから、その性能と電力効率を見ていきます。
Digital Trendsは、Intel Arc G3 Extremeを搭載した量産版MSI Claw 8 EX AI+を実機テストした。専用ベンチマークとゲーム性能は35WのPerformance設定で測定され、3DMark Time Spyは7,098、Forza Horizon 5は99fps、Baldur’s Gate 3はUltra設定・アップスケーラーなしで51fpsを記録した。
筆者は自身のテスト範囲でRyzen Z2 Extremeを上回り、これまで試した中で最も高性能なハンドヘルドだったと評価している。一方、Endurance ModeではSleeping Dogsを4時間以上連続プレイでき、スリープ時のバッテリー消費も非常に小さかったと報告している。
From:
Intel Arc G3 Extremeのハンドヘルドゲーム性能テスト|Digital Trends
【編集部解説】
今回のポイントは、Intelが単にノートPC向けプロセッサーを小型筐体へ載せたのではなく、ハンドヘルド向けに電力配分を意識したArc G3 Extremeを投入したことです。Digital Trendsは、CPUよりもグラフィックスへ電力を振り分ける設計を特徴として挙げています。
Arc G3 ExtremeにはXe3アーキテクチャーのArc B390 GPUが統合され、12基のXeコア、ハードウェアレイトレーシング、最大113 TOPSのINT8 GPU演算性能を備えます。CPUは14コア構成で、NPUを搭載し、最大LPDDR5X-8533メモリをサポートします。
ただし、今回の性能評価には明確な条件があります。Digital Trendsの筆者が専用ベンチマークとゲームテストを行ったのは35WのPerformance設定のみで、17W、20W、25Wなど複数のTDPを横断した比較ではありません。筆者自身も、Arc G3 Extremeの全電力域を評価する包括的な分析ではないと断っています。
その35W環境では、3DMark Time Spyが7,098、Fire Strikeが12,307、Night Raidが44,355を記録しました。筆者はゲームテストでArc G3 ExtremeがRyzen Z2 Extremeを明確に上回り、今回のClawを自身がこれまでテストした中で最も高性能なハンドヘルドゲーミングPCと評価しています。これはDigital Trends筆者の比較結果であり、すべての端末や消費電力設定で同じ順位になることを意味するものではありません。
| ゲーム | 主な設定 | 平均fps |
|---|---|---|
| Forza Horizon 5 | High、RT Medium、MSAA 2x | 99 |
| Cyberpunk 2077 | Medium、RTなし、XeSS 2.0 Balanced、Frame Generation | 153 |
| DOOM: The Dark Ages | Low、XeSS Balanced、Frame Generationなし | 78 |
| Black Myth: Wukong | Medium、XeSS 60、RTなし、Frame Generation Auto | 105 |
| Red Dead Redemption 2 | Favor Performance、Vulkan、アップスケール/FGなし | 90 |
| Baldur’s Gate 3 | Ultra、アップスケーラー/FGなし | 51 |
| Control | Medium、DX11、AAなし | 85 |
数字を見る際には、アップスケーリングやフレーム生成の有無を分けて考える必要があります。たとえばCyberpunk 2077の153fpsはXeSS 2.0 BalancedとFrame Generationを有効にした結果です。一方、Baldur’s Gate 3の51fpsやRed Dead Redemption 2の90fpsはアップスケーリングやフレーム生成を使わずに測定されています。Digital Trendsは、こうした結果から1080p級のゲームプレイがハンドヘルドでも現実的になっていると評価しています。
より興味深いのは35W時の最高性能だけではありません。筆者は時間の制約から17W、20W、25Wでの体系的なベンチマークを実施できなかった代わりに、Endurance ModeでSleeping Dogsを数時間プレイしました。その結果、ゲーム体験を大きく損なわず4時間以上の連続プレイができたとしています。
さらに、スリープ状態で一晩置いた際の待機時消費も非常に小さく、翌朝もバッテリー残量がほぼ変わらなかったと報告しています。Windowsハンドヘルドでは、持ち出そうとしたときに待機中の放電でバッテリーが減っていることが使い勝手を損ねるため、この点はピーク性能とは別の実用上の評価材料になります。
Intelは以前からMSI Claw向けにCore Ultraプロセッサーを供給しているため、今回がハンドヘルド市場への初参入ではありません。元記事が評価しているのは、初代Clawでは十分ではなかったIntelのハンドヘルド向けプラットフォームが、Arc G3 ExtremeでAMDの上位製品と性能面で競える段階に達したという変化です。
Arc G3 Extremeは将来の製品ではなく、日本でも搭載機を購入できる段階に入っています。
MSIは「Claw 8 EX AI+ CG3EM」の日本国内向けモデルを2026年7月29日に発売しました。Arc G3 ExtremeとArc B390 GPU、32GB LPDDR5Xメモリを搭載し、ディスプレイは8インチ、1,920×1,200、120Hz。バッテリー容量は80Wh、本体重量は約785gです。
MSI公式ストアでの価格は289,800円(税込)です。2026年8月10日時点では、9月初旬入荷予定として予約販売されています。
購入を考える際には、この価格も重要になります。高いゲーム性能を持つだけではなく、約29万円を支払って携帯型PCとして使う価値があるかを、重量やバッテリー駆動時間まで含めて判断する必要があります。
MSIはClaw 8 EX AI+について5時間以上のゲームプレイが可能としていますが、これはEndurance Mode、30fps、Diablo IV、1200p、XeSSオンという条件での測定値です。すべてのゲームで5時間以上動作することを意味するわけではありません。
Arc G3 Extremeが向いているのは、Windows向けPCゲームを携帯機でも高い画質やフレームレートで楽しみたいユーザーです。一方、価格や約785gという重量、ゲームごとのXeSS対応状況などを考えると、携帯性や価格を最優先するユーザーには必ずしも適しているとは限りません。
今回の実測結果から見えてくるのは、Intelが専用設計のArc G3 Extremeによって、少なくとも35Wの高性能領域ではAMDのRyzen Z2 Extremeとトップクラスの性能を争える段階へ進んだことです。Digital Trendsの筆者は、初代Clawでは準備不足だったIntelがArc G3 Extremeでようやくハンドヘルド市場に本格的な競争力を持ったと評価しています。
一方で、今回の専用ベンチマークは35Wに限られており、17W、20W、25Wなど低い電力域でRyzen Z2 Extremeに対してどの程度の優位性を保てるかは、元記事だけでは判断できません。今後は消費電力別の性能、実際のバッテリー駆動時間、ゲームごとのドライバー安定性まで含めた比較が、Arc G3 Extremeの評価を左右することになります。
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【編集部後記】
ROG Xbox Ally Xを実際に使っている身としては、IntelのArc G3 Extreme搭載機と比較できる機会が来るのが楽しみです。AMDとIntelで、同じゲームを動かしたときの性能やバッテリー持ちがどこまで違うのかも気になります。今回の結果を見ると、単純な最高fpsだけでなく、低電力時の使い勝手も比較したくなります。
ハンドヘルドPCの選択肢が増え、メーカー間の競争が活発になるのはユーザーとして歓迎したいです。実機同士でどれだけ違いが出るのか、今後の比較が楽しみです。
【用語解説】
Intel Arc G3 Extreme
Intelがハンドヘルドゲーミング向けに設計したプロセッサー。14基のCPUコア、NPU、Xe3アーキテクチャーのArc B390 GPUを統合し、最大LPDDR5X-8533メモリをサポートする。
Intel Arc B390
Arc G3 Extremeに統合されるXe3アーキテクチャー採用GPU。12基のXeコア、ハードウェアレイトレーシングを備え、最大113 TOPSのINT8 GPU演算性能を持つ。Arc G3 Extremeはプロセッサー全体、Arc B390はその内蔵GPUを指す。
XeSS 3
Intelのゲーム向けグラフィックス技術。AIを利用するアップスケーリング「XeSS Super Resolution」、複数の補間フレームを生成する「XeSS Multi-Frame Generation」、入力遅延を抑える「Xe Low Latency」で構成される。
3DMark Time Spy
DirectX 12対応PCのグラフィックス性能などを測定するベンチマークテスト。異なるPCやGPUの性能を比較する目安として利用されるが、実際のゲーム性能とは必ずしも一致しない。
AMD Ryzen Z2 Extreme
AMDがハンドヘルドゲーミングPC向けに展開するRyzen Z2シリーズのプロセッサー。今回のDigital Trendsによる性能比較の対象となっている。
AMD Ryzen AI Z2 Extreme
Ryzen Z2 Extremeとは別のプロセッサー。NPUを搭載するRyzen Z2シリーズの上位製品で、ROG Xbox Ally Xなどに採用されている。今回の比較対象であるRyzen Z2 Extremeとは区別する。
【参考リンク】
Intel Arc G-Series Processors for Handheld Gaming|Intel(外部)
ハンドヘルドゲーミング向けIntel Arc Gシリーズの公式製品ページ。Arc G3 ExtremeとArc G3の位置づけ、製品仕様や関連資料への入口を掲載。
Claw 8 EX AI+ CG3EM|MSI(外部)
Intel Arc G3 Extremeを搭載するMSIのポータブルゲーミングPC公式ページ。ディスプレイ、バッテリー、冷却、XeSS 3、接続端子などの製品情報を掲載。
Claw 8 EX AI+ CG3EM-406JP|MSI公式オンラインストア(外部)
日本国内向けモデルの販売ページ。販売価格、発売日、在庫・入荷状況などを確認できる。
【参考動画】
【参考記事】
Intel Arc G-Series Processors Set a New Standard for Handheld PC Gaming|Intel Newsroom(外部)
Intel Arc G3/G3 Extremeの公式発表。ハンドヘルド専用設計、Arc B390、XeSS 3、電源管理、Day-0ドライバーなど、Arc Gシリーズの特徴を掲載。
Three ways Intel and MSI co-engineered the world’s first Arc G3 handheld|Intel Newsroom(外部)
IntelとMSIによるClaw 8 EX AI+の共同開発を解説。ハンドヘルド専用プロセッサーの設計、冷却・電力効率、ソフトウェア面での取り組みを紹介。
「Claw 8 EX AI+ CG3EM」シリーズの日本国内向けモデル発表|MSI(外部)
Arc G3 Extreme搭載Claw 8 EX AI+の日本向け公式発表。2026年7月29日からの国内販売や日本向けモデルの仕様を確認できる。


















