LG UltraGear™ AI|webOS搭載でPC不要、ゲームも動画も1台で完結するゲーミングモニター3モデル発売

PCは、もうそこにいなくていい。ゲーミングモニターとは本来、PCやコンソールの「出力先」に過ぎませんでした。何を映すかを決める権限は、常に別のデバイスが握っていました。LGの新モデル「UltraGear™ AI」は、その構造をひっくり返しにきています。webOSを内蔵し、ゲームも映像もモニター単体で完結する。「表示装置」という役割に収まり続けてきたモニターが、静かに自律を始めた瞬間です。


LGエレクトロニクス・ジャパンは、「LG UltraGear™ AI」シリーズとして有機ELゲーミングモニター3モデルを2026年7月中旬より順次発売する。ラインナップは44.5インチ「45GX90SB-B」(275,000円前後)、39インチ「39GX90SB-W」(242,000円前後)、34インチ「34GX90SB-W」(187,000円前後)の3モデル。

3モデルはいずれも、マイクロレンズアレイ(MLA)を採用した有機ELパネルを搭載し、ピーク輝度1300cd/㎡(APL 1.5% 標準値)、解像度3440×1440、リフレッシュレート240Hz、応答速度0.03ms(GTG)を共通スペックとする。曲率800Rの21:9ウルトラワイド曲面パネルで、DCI-P3を98.5%カバーする色域と、VESA DisplayHDR™ True Black 400認証を取得している。

LG独自のwebOSを搭載し、外部機器不要でYouTubeやNetflix、TVerなど600以上のVODアプリおよびXbox・GeForce NOWといったクラウドゲーミングに対応。映像・音声のAI最適化機能「AI Picture Pro」と「AI Sound Pro」(バーチャル11.1.2ch)も全モデルに搭載される。LG公式オンラインショップでは同日(6月10日)より予約販売を開始している。

From: 文献リンクAI機能とwebOSを搭載した有機ELゲーミングモニター3モデルを発売|LGエレクトロニクス・ジャパン株式会社

【編集部解説】

ゲーミングモニターをPCやコンソールにつないで使う、というのはこれまで前提のようなものでした。モニターは「映すだけ」のデバイスであり、何を映すかはPC側・ゲーム機側が決める。そういう役割分担が長らく続いてきました。

今回LGが発売する「LG UltraGear™ AI」の3モデルは、その前提を崩す方向に踏み込んでいます。最大の特徴はwebOSの搭載です。LGがテレビ向けに育ててきたこのOSをゲーミングモニターに載せることで、インターネットに接続するだけでYouTubeやNetflix、TVerといったVODサービスに直接アクセスできます。さらにXbox Cloud GamingやGeForce NOW、Amazon Lunaといったクラウドゲーミングにも対応しており、PCもコンソールも手元になくても、このモニター単体でゲームをプレイし始めることができます。

これは「ゲーミングモニター」という製品カテゴリの定義が静かに書き換えられていることを意味します。従来のゲーミングモニターは、高リフレッシュレートや低応答速度といった「表示性能」で競ってきました。一方でwebOSを搭載したスマートモニターは、コンテンツアクセスに強い反面、多くのモデルは高リフレッシュレート・低応答速度よりもコンテンツ視聴を優先した設計で、240Hzや0.03msといったゲーミング性能を備えていませんでした。今回の製品はその両方を1台に収めています。240Hzのリフレッシュレートと0.03ms(GTG)の応答速度、VESA DisplayHDR™ True Black 400認証、DCI-P3を98.5%カバーする色域というゲーミングモニターとしての本格的なスペックを持ちながら、webOSによるスタンドアロン動作も備えています。

こうした方向性はLGにとって今回が初めてではなく、2025年に発売した前モデル(45GX90SA・39GX90SA・34GX90SA)でもwebOSとゲーミング性能の融合を試みていました。今回のモデルはその継続線上にあり、プロセッサには「Alpha 8 AI Processor 4K Gen3」が採用されています。

この流れはLGだけにとどまりません。国内ではアイ・オー・データ機器が2026年4月に「webOS Hub」を搭載した27型ゲーミングモニター(直販価格79,750円)を発売しており、webOS搭載のゲーミングモニターという設計思想は他社にも広がっています。

購入を検討する上では、いくつか注意点があります。webOSはLGのスマートテレビで使われているOSですが、地上波チューナーは内蔵していません。リアルタイムの地上波放送を見たい場合は別途チューナーが必要です。また、VODサービスの利用には各サービスとの別途契約が必要になります。価格帯は34インチで187,000円前後、44.5インチで275,000円前後と、ハイエンドの位置づけです。

「ゲームも映像もこの1台で」という使い方が現実的な選択肢になってきた今、モニターを「PCの周辺機器」として選ぶ時代は少しずつ終わりに向かっているのかもしれません。

【用語解説】

webOS
LGエレクトロニクスが開発したスマートTV向けOS。テレビ向けに長年アップデートを重ねており、現在はモニター製品にも展開されている。VODアプリやクラウドゲーミングへのアクセス、Webブラウジングなどをモニター単体で実行できるのが特徴。

マイクロレンズアレイ(MLA)
有機ELパネルの前面に微小なレンズを並べた層を設ける技術。有機ELの発光を効率よく前方に集めることで輝度を向上させる。有機ELは従来、輝度の低さが弱点とされてきたが、MLAの採用でピーク輝度の大幅な引き上げが可能になった。

クラウドゲーミング
ゲームの処理をクラウドサーバー側で行い、映像をストリーミングで受け取る方式のゲームサービス。ゲーム機やゲーミングPCを手元に用意しなくてもゲームを遊べる。代表的なサービスにXbox Cloud Gaming、GeForce NOW、Amazon Lunaなどがある。

VESA DisplayHDR™ True Black 400
ディスプレイ業界の標準化団体VESAが策定したHDR認証規格のひとつ。「True Black」はOLEDなど自発光型パネルを対象とした区分で、ピーク輝度400nits以上に加え、バックライトなしで完全な黒(0cd/㎡)を表示できる能力を認証したもの。数字「400」はそのピーク輝度基準を示す。

DCI-P3
映画業界のデジタルシネマ向けに策定された色域規格。一般的なsRGBよりも広い色域を持ち、赤・緑の表現範囲が特に広い。「98.5%カバー」は、この規格が定める色域のほぼすべてを再現できることを意味する。

AI Picture Pro / AI Sound Pro
LGが搭載するAIによる映像・音声の自動最適化機能。AI Picture Proは低解像度映像の高精細化(AI Super Upscaling)やシーンごとの明るさ・細部調整(Dynamic Tone Mapping Pro)を行う。AI Sound Proは内蔵スピーカーの音声をバーチャル11.1.2chの立体音響に変換する。

【参考リンク】

LG UltraGear™ AI ゲーミングモニター 45GX90SB-B(LG公式)(外部)
今回発売される45GX90SB-Bの製品ページ。スペック詳細、webOS対応機能、価格・購入情報を確認できる。

LG公式オンラインショップ(外部)
LGエレクトロニクス・ジャパンの公式サイト。予約販売ページへのアクセスはこちらから。

アイ・オー・データ GigaCrysta LCD-GDQ271JAWOS製品情報(外部)
国内他社によるwebOS Hub搭載ゲーミングモニターの発売記事。LG以外にもwebOSをゲーミングモニターに搭載する流れが広がりつつある状況を確認できる。

【参考記事】

LG UltraGear 45GX90SB-B 製品ページ|LG USA(外部)
米国向け公式製品ページ。webOSによるスタンドアロン動作の詳細、Alpha 8 AI Processor 4K Gen3プロセッサ搭載、クラウドゲーミング対応サービス一覧などを確認できる一次情報源。

webOS Hub搭載ゲーミングモニター LCD-GDQ271JAWOS発表|AV Watch(外部)
アイ・オー・データ機器が2026年2月に発表したwebOS Hub搭載ゲーミングモニターの詳細記事。LG以外のメーカーにもwebOS搭載ゲーミングモニターが広がりつつある背景を確認するための参考情報。

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【編集部後記】

「モニターは映すだけ」という前提が、静かに書き換えられています。デバイスの役割とは、設計者が決めるものではなく、技術の積み重ねによって少しずつ更新されていくものなのかもしれません。テレビがスマート化し、スマートフォンがカメラになり、そして今度はモニターが自律する。私たちはそのたびに「これは何のための道具か」を問い直してきました。LG UltraGear™ AIを前に、私たちはまた同じ問いの入り口に立っています。デバイスの「役割」を固定して考えることの意味を、もう一度問い直してみたくなります。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。