Metaの年次カンファレンス「Meta Connect」が、日本時間9月24日午前8時(現地23日16時)に開幕します。Meta公式が明らかにしているのは日程と、AI技術・AIグラス・VRを扱うという大枠のテーマのみです。一方、海外メディアの報道では、超軽量ヘッドセット「Phoenix」やカメラなしグラス「Luna」など、複数の新製品コードネームが飛び交っています。確定事実と未確認情報を整理しながら、Metaが今回何を語るのかを先読みします。
Metaは9月23日午後4時(太平洋時間、日本時間24日午前8時)に基調講演を、24日午前10時(同25日午前2時)に開発者向けState of the Unionを配信する。公式テーマはAI技術・AIグラス・VRである。Meta公式の開発者向けプログラムには「Meta VR Glasses」「Muse Spark」「Muse Glimmer」のセッションが明記されている。複数の海外メディアは、カメラを搭載しない新型グラス「Luna」や、外部演算パックと接続する超軽量ヘッドセット「Phoenix」のステージ披露を報じているが、いずれもMeta公式の確認はない。PhoenixにはQualcommがXR業界の展示会「AWE」2026年版で発表した「Snapdragon Reality Elite」チップの搭載が噂されている。Metaの自律型AIエージェント「Muse」は9月上旬にすでに正式ローンチしている。
From:
Meta Connect 2026: Date, Time, What to Expect — VR.org
【編集部解説】
プレビューか、製品か——ロードマップの現実
海外のXR専門メディアが積み上げてきた分析によれば、Metaが現在開発中の次世代ヘッドセットは大きく2系統に分かれます。Quest正統後継とされる「Griffin」は2027年後半以降、外部演算パックに処理を逃がす超軽量モデル「Phoenix」は2027年前半が目標とされており、いずれも今年出荷される見込みはありません。仮に明日のステージでPhoenixが披露されたとしても、それは製品発表ではなく「プレビュー」にとどまる可能性が高いというのが、複数ソースに共通する見立てです。
Reality Labsの明暗——スマートグラスは攻め、VRは守り
このタイミングを理解する鍵は、Meta社内での明暗の分かれ方にあります。Reality Labs部門は2026年第2四半期、売上4億3,100万ドルに対し46億2,000万ドルの営業赤字を計上しました。これは2020年末の開示開始から累計で約880億ドルに達する規模です。CFOのスーザン・リー氏は、投資の約70%をAIグラスなどのウェアラブルに、残り30%をVR/Horizon関連に振り向ける方針を示しており、同じ四半期にQuestヘッドセットの販売が前年割れした一方、AIグラスの伸びが成長を牽引したと報告されています。Ray-Ban Metaシリーズは2025年上半期の世界スマートグラス市場で73%のシェアを占めるまでになりました。
対照的に、VR・メタバース側は守りの姿勢が目立ちます。今年3月、MetaはHorizon WorldsのVR版終了を発表しましたが、わずか1〜2日で撤回し、既存コンテンツの提供は続けつつ新規開発は行わないという「保守モード」に落ち着きました。Muse(Metaの自律型AIエージェント)は9月上旬にすでに正式ローンチしており、Connectのアジェンダにも複数のMuse関連セッションが並んでいます。スマートグラスとAIエージェントという「攻め」の領域と、VRという「守り」の領域が、同じステージで語られることになりそうです。
公約をどれだけ守ってきたか
VR.orgが9月20日付で公開した検証記事は、この文脈を読み解く上で参考になります。2023年から2025年のConnectで発表された製品のうち、価格と発売日が明示された5製品はすべて予定通り出荷された一方、「Augments」機能は3年遅延し、Ray-Ban Display展開を約束した4か国の実現は道半ばです。Metaの公約実現率は一律ではなく、価格・日付付きのハードウェアは守られやすい一方、機能や地域展開の公約は守られにくい、という傾向が見えます。Phoenixが今回何らかの形で登場したとしても、それが確約なのか方向性の提示にとどまるのか、見極める必要がありそうです。
噂のコードネームを一つずつ読み解く
Aperol / Bellini(Ray-Ban Meta Gen3、ディスプレイなし)
現行Ray-Ban Meta(ディスプレイなし)の後継とされる2機種です。XR Research Instituteが公開したレンダー画像によれば、Aperolはサングラス型で厚めのフレーム、Belliniは度付き眼鏡向けの軽量フレームとされ、価格帯は300〜500ドル程度。ディスプレイ搭載型の「Hypernova」(Meta Celesteとも呼ばれる、1000ドル超と噂される別ライン)とは異なる製品だと報じられています。Live AIの連続稼働時間を現行の約30分から「数時間」に伸ばすというバッテリー強化も噂されています。The Informationの5月報道とXR Research Instituteの7月報道とで名称が一致している点は確度を高める材料ですが、発売時期の見立ては「今年中」とする声と「2026年内」とする声とで食い違っており、完全には収束していません。
Malibu 2(スマートウォッチ)
2022年に一度お蔵入りになった計画の復活版です。ロイターの報道(2月18日)によれば、この復活はザッカーバーグ氏のハワイの自宅で行われた戦略会議の場で決まったとされ、健康トラッキングとMeta AI組み込みが軸になる見通しです。同じ報道では、Metaが約4機種のAR/MRグラスを並行開発しており、「一度に出しすぎない」よう発売時期を再調整している最中だとも伝えられています。この報道はさらに「PhoenixのMRグラスは2027年に延期されたと、12月に社内へ伝えられた」とも記しており、VR.orgの分析と一致します。Malibu 2自体には、現行Neural BandのEMG(筋電位センサー)ジェスチャー機能を吸収する可能性も指摘されていますが、これは単一メディアの推測にとどまります。
Griffin(Quest 4系)
Quest正統後継の現在のコードネームです。当初「Pismo Low」「Pismo High」の2グレード体制で計画されていたものが白紙化され、Griffinの名で再始動したとされています。今回のConnectでの実機発表はないというのが複数ソース共通の見立てです。
3つを並べて見えてくること
Aperol/Bellini(ディスプレイなしグラス)、Malibu 2(スマートウォッチ)、Griffin(次期Quest)——これらを時系列で並べると、Metaが「ヘッドセット」単体ではなく「身につけるもの全般」でポートフォリオを組もうとしている構図が浮かびます。ロイターの報道にある「発売時期の再調整」は、この並行開発ラッシュを企業側も持て余している証左と読めます。仮に今回のConnectで複数のコードネームが一挙に言及されたとしても、それは「発売」の宣言ではなく「ポートフォリオの見取り図」を示す場になる可能性が高い、というのがここまでの調査から導ける最も妥当な予測です。
一週間前に出た、もう一つの文脈
Connect開幕のわずか1週間前、ValveがPC接続型のVRヘッドセット「Steam Frame」の予約受付を開始しました。256GBモデルで1,059ドルからの価格設定で、抽選制の予約方式を採っています。ボズワースCTOは5月時点で「MetaはSteam Frameから学ぶ」と発言しており、新型ヘッドセットを持たないままステージに立つMetaが、この競合にどう応えるかも、今回のConnectを見る上でのもう一つの軸になりそうです。
ここから先はまだ分からないこと
Phoenix、Luna、Griffin——ここまで見てきたコードネームは、いずれもMeta自身が公式に認めたものではありません。重量、価格、発売時期といった具体的な数字は、どの報道にも含まれていません。基調講演で実際に何が語られるかは、9月23日を待つほかない、というのが現時点で誠実に言える範囲です。
【関連記事】
Meta Connect 2026|今年のXRカンファレンスで見えてくるものとは?
Phoenixというコードネームについては、6月の時点でも取り上げていました。当時は「Puffin」という呼び名も使われていましたが、その後Luna・Aperol/Bellini・Malibu 2といった新コードネームとともにさらに具体化しています。
Meta Connect 2026で新型VRヘッドセット発表か|Quest後継機・軽量MR・高性能モデルの可能性
Reality Labsの収益動向については、Bosworth氏の発言を受けて以前にも取り上げました。その後の2026年第2四半期決算でも同様の傾向が続いています。
【編集部後記】
Phoenix、Luna、Griffin——今夜語られるかもしれない名前の数々は、どれもまだ噂の域を出ません。ただ、Reality Labsの巨額の赤字とスマートグラスの好調という、Meta社内の明暗を並べて見ると、噂そのものよりも「なぜ今この組み合わせなのか」という問いの方が気になってきます。基調講演を見届けたとき、私たちは何が変わり、何が変わらなかったと感じるでしょうか。続報でまた確かめたいと思います。
【参考リンク】
Meta Connect公式サイト(外部)
基調講演・State of the Unionのライブ配信とセッション一覧を掲載する公式ページ。
Meta Connect公式FAQ(外部)
視聴方法・参加方法についての公式Q&A。
Meta Connect開発者向けプログラム表(外部)
セッション内容と時間割を確認できる公式ページ。
Meta Wearables開発者ページ(外部)
AIグラス向けアプリ開発のツールとドキュメント。
【用語解説】
Meta Connect
Metaが毎年秋に開催する年次開発者会議。2014年開始時の名称は「Oculus Connect」で、当初はVR/AR分野に特化した開発者向けイベント。2020年に「Facebook Connect」へ改称、2021年の社名変更(Facebook→Meta)を機に現在の「Meta Connect」に。初期はSamsung Gear VR、Oculus Touch、Oculus Go、Oculus Questなどハードウェア発表が中心だったが、2021年には社名変更そのものの発表の場に、2024年には初のARグラスプロトタイプ「Orion」、2025年には市販のディスプレイ搭載AIグラス「Ray-Ban Display」の発表の場となるなど、近年はAI・ウェアラブル戦略の年次宣言の場としての性格が強い。
Phoenix
開発中とされる超軽量ミックスドリアリティヘッドセットのコードネーム。演算処理とバッテリーを外部パックに逃がし、本体を眼鏡に近い薄型フォルムに抑えた設計。物理コントローラーなしの視線・ハンドトラッキング操作という構想も。Meta公式の確認はなし。
Luna
カメラを搭載しない新型AIグラスのコードネーム。マイク6基以上とサイドボタンでMeta AI・Museエージェントを呼び出す設計とされ、2種類のフレームスタイルでの展開が報じられている。プライバシー対応の文脈で語られることが多い。
Griffin
Meta Quest正統後継機の開発コードネーム。当初の「Pismo」計画が白紙化された後に改めて進行中とされる。2027年後半以降の登場が見込まれ、今回のConnectでの発表はないとの見方が大勢。
Aperol / Bellini
現行Ray-Ban Meta(ディスプレイなし)の後継とされる2機種の開発コードネーム。Aperolはサングラス型、Belliniは度付き眼鏡型とされ、価格帯は300〜500ドル程度と噂される。
Malibu 2
Meta初の本格スマートウォッチとされる開発コードネーム。2022年に一度中止となった計画の復活版で、健康トラッキングとMeta AI組み込みが軸とされる。筋肉の電気信号を読み取るEMG(筋電位)センサーの搭載も噂される。
Muse(Museファミリー)
Metaの自律型AIエージェントのブランド名。メール送信や支払いなど、ユーザー不在時の自律作業をこなす本体に加え、開発者向けツール「Muse Spark」、ローカル実行用オープンウェイトモデル「Muse Glimmer」、画像生成モデル「Muse Image」で構成される。
Reality Labs
MetaのVR・AR・ウェアラブル事業を担う部門。2020年の開示開始以降、毎四半期赤字が続き、累計損失は約880億ドル。
Codec Avatars
Metaが研究開発を進める写実的なアバター生成技術。2024年のOrion発表時にも披露された。
【参考記事】
Reality Labs Lost $4.62 Billion in Q2 — VR.org(外部)
Reality Labsの四半期赤字・累計損失・投資配分の数値出典。
Meta’s share of the global smart glasses market rise to 73% — Storyboard18(外部)
スマートグラス市場シェアの数値出典。
Meta Reality Labs Burns $4.62B in Q2 — 5thscape(外部)
Quest販売減・AIグラス牽引の数値出典。
Meta Connect 2026: 6 devices and AI services we expect to see — Tom’s Guide(外部)
Phoenix詳細・プライバシー動向の裏取り。
Meta Connect 2026: what to expect from Meta’s AI glasses — tbreak.com(外部)
Luna仕様の裏取り。
Apparent Renders Of Next-Gen Ray-Ban Meta Glasses Leak — UploadVR(外部)
Aperol/Belliniのデザイン・価格帯の出典。


















