スマートフォンの寿命を決めているのは、電池や画面より、ソフトウェア更新の期限なのかもしれません。メーカーが約束した年数を過ぎると、端末は動いていても、新しいAndroidは届かなくなります。Nothingは、Android 17ベースのNothing OS 5.0の対象から、初代Nothing Phone (1)を含む3機種を外しました。そのPhone (1)に、有志が開発するLineageOSが10月、Android 17ベースの新版を用意しています。ただし、外された3台のうち、LineageOSで次のAndroidに進めたのは1台だけです。行き先の違いから、メーカーとコミュニティ、それぞれの約束のかたちを見ていきます。
目次▼外された3台は、どこへ行ったか▼年数で区切る約束、担い手が支える約束▼コミュニティにも、引く線がある▼使い続けるための条件▼「認証されたAndroid」の外側▼まだ分からないこと
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2026年10月11日に公開されたLineageOS 24.0は、Android 17を基盤とする。開発チームは、過去数バージョンでGoogleによる大規模な作り替えに対応してきたため、独自の変更の移し替えが想定より早く済んだとしている。初回のビルド対象は174機種で、Pixel 10シリーズの5機種が新たに加わり、Nothing Phone (1)は23.2から移行した。Linuxカーネル4.4・4.9を使う機種は22.2でのみ受け付け、22.2はGoogleがAndroid 15のセキュリティ情報の配布を止めるまで、月次でパッチの取り込みを続ける。ブラウザから書き込むツールはflash.lineageos.orgで案内された。LineageOSは2026年12月24日に10周年を迎える。
From:
Changelog 32 – Slick Seventeen, Awesome Applications, Universal USB Tools
【編集部解説】
外された3台は、どこへ行ったか
Nothingが、Nothing OS 5.0の対象から外した3台は、LineageOSの上でも、それぞれ別の場所にいます。
| 機種 | 発売 | Nothingの対応 | LineageOSの公式対応(2026年10月14日時点) |
|---|---|---|---|
| Phone (1) | 2022年7月(国内は同年8月19日) | 大型更新はAndroid 15まで。セキュリティ更新は2026年7月のパッチで4年を完了 | 24.0(Android 17) |
| Phone (2) | 2023年7月 | Android 17の対象外 | 23.2(Android 16) |
| CMF Phone 1 | ― | Android 17の対象外 | 公式対応なし |
Phone (1)は、Nothingの大型更新がAndroid 15で終わったあと、LineageOSの上でAndroid 16(23.0、2025年10月)、そして今回のAndroid 17へと進んだ端末です。国内でも家電量販店やMVNOを通じて販売されていました。
ただし、これはNothingの決定を受けて起きたことではありません。Phone (1)は2023年9月にLineageOS 20の公式対象に加わり、同年12月に表示の不具合などを理由に一度外されました。戻ったのは2025年1月で、その後22.2、23.0、23.2と版を重ね、今回24.0に移っています。Nothingの期限とは別の時間軸で、対応が続いてきたことになります。
年数で区切る約束、担い手が支える約束
Nothingの約束は、年数で示されていました。Phone (1)とPhone (2)は、Androidの更新が3年、セキュリティ更新が4年です。Phone (1)は2026年7月のパッチで、その4年を終えました。期限は購入前から分かっていて、その日までは更新が届くことも約束されていました。
LineageOSは、期限を約束しません。公開時期の目安も示さない、というのが従来からの方針です。機種ごとの対応は、その機種を担うメンテナーがいて、機種サポート要件(Charter)を満たせるかどうかで決まります。Charterは、メンテナー自身がその端末を持っていることを求めています。
Phone (1)の担当は、現在2名です。ビルド対象の変更履歴には、時期ごとに別の開発者の名前が並びます。一方、Phone (2)が23.2にとどまっている理由は、公開されている情報からは分かりません。
メーカーの約束は「いつまで」がはっきりしている代わりに、その先がありません。コミュニティの約束は「いつまで」がない代わりに、担い手がいる限り続きます。そして、担い手の事情や技術的な問題で、予告なく止まることもあります。表示の不具合で外れたPhone (1)の、2023年からの1年余りの空白は、その一例です。どちらの約束が長く続くのかは、一概には言えません。
コミュニティにも、引く線がある
今回のリリースで、LineageOSはもう一つの線を引きました。Linuxカーネル4.4・4.9を使う機種は、23.2・24.0への移植が済んでいるものがあっても、22.2でのみ受け付けると正式に決めています。古いカーネルとそれを使う機種には、無理のある改修が数多く積み重なっており、新しいAndroidへ運び続けるのが難しい、というのが理由です。
移植できることと、維持し続けられることは別の問題だ、という判断です。端末を延命する側にも、技術的負債を抱えきれなくなる地点があります。
その22.2も、GoogleがAndroid 15のセキュリティ情報の配布を止めるまで、と期限が区切られています。セキュリティパッチレベルの表記を更新するのも、Googleが情報を配布している版(Android 14以降)に限られます。コミュニティOSの「その先」も、上流にあるGoogleの時間軸からは自由ではありません。
使い続けるための条件
LineageOSで端末を使い続けるには、いくつかの条件があります。
導入にはブートローダーのアンロックが必要で、Phone (1)のwikiにも手順の前提として記載されています。アンロックすると、端末のデータはすべて消去されます。Phone (1)の場合、導入前に純正のAndroid 15のファームウェアにしておく必要があります。
Googleのアプリやサービスは含まれません。LineageOSは、これまでも今後もGMSを同梱しないと明言しています。また、Play Integrityなどの端末の完全性チェックを回避しない方針のため、そうしたチェックに依存するアプリは動作しません。どのアプリが該当するかは、アプリ側の設計によります。
ブラウザから書き込めるツールも用意されましたが、公式は機種ごとのwikiの手順が既定の方法だとしています。このツールは7月から提供が始まっていたもので、今回のリリースでflash.lineageos.orgとして案内されました。
使い続けられるのは、こうした手順と制約を引き受けられる人です。メーカーの期限の先にある選択肢は、すべての持ち主に開かれているわけではありません。
「認証されたAndroid」の外側
いま、もう一つの線が引かれようとしています。Googleの「Android開発者認証」です。
GMSを搭載した認証済み端末(Android 7以降)で、アプリの開発者に本人確認を求める仕組みです。2026年9月30日にブラジル、インドネシア、シンガポール、タイで、参加するストアからのインストールを対象に始まり、2027年には全世界のすべてのアプリに広げる予定です。認証されていないアプリを入れるための「高度なフロー」も用意されますが、24時間の待機が必要です。Googleのページに、日本の扱いは明記されていません。
Googleは、詐欺やマルウェアへの対策を目的に挙げています。LineageOSは、GMSを載せないため認証済み端末の要件に縛られず、この仕組みを組み込む義務もないとして、直接の影響はないと表明しています。一方で、利用者が後から入れるGoogleアプリのパッケージにこの仕組みが含まれる可能性や、Googleが機能をGoogle Play開発者サービスに移す可能性にも触れています。LineageOSは、この方針の撤回を求める「Keep Android Open」の請願に署名しました。
Androidは、Googleが認証する内側と、その外側に分かれつつあります。Phone (1)がLineageOSで受け取ったAndroid 17は、外側のAndroidです。何を入れるかを自分で決められる代わりに、Googleのサービスと、完全性チェックに依存するアプリを手放すことになります。端末を「使い続ける」ことの意味は、一つではなくなっています。
まだ分からないこと
- Phone (2)が24.0に進むか、進むとすればいつか。
- CMF Phone 1に公式対応が生まれるか。
- Phone (2)とCMF Phone 1について、Nothingのセキュリティ更新がいつ終わるか(未発表)。
- 12月24日に10周年を迎えるLineageOSで、個々のメンテナーに支えられる仕組みが、この先も続くのか。
- 開発者認証が2027年に全世界へ広がるとき、日本の利用者と、認証の外側のAndroidがどう扱われるのか。
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【編集部後記】
手元のスマートフォンを、私たちはいつまで使うつもりで手に入れているのでしょうか。更新の期限は、箱を開ける前から決まっています。それでも、期限を過ぎた端末のために、名前も知らない誰かが次のAndroidを用意していることがあります。そこへ乗り換える手間とリスクを引き受けるのは、私たち自身です。メーカーに委ねるか、コミュニティに頼るか、買い替えるか。端末を「持っている」とは、その選び方を自分で決められることなのかもしれません。
【参考リンク】
【用語解説】
コミュニティOS(カスタムROM)
メーカー純正ではなく、有志の開発者が配布するスマートフォン向けOS。多くはGoogleが公開するAndroidのソースコードをもとに作られる。
AOSP(Android Open Source Project)
Googleがオープンソースとして公開しているAndroidの基盤部分。Googleのアプリやサービスは含まない。
GMS(Google Mobile Services)
Google Play、Google Play開発者サービス、Gmail、マップなど、Googleがメーカーに提供するアプリとサービスの一式。搭載には認証が必要。
ブートローダーのアンロック
端末の起動時に、メーカーの署名がないOSを読み込めるようにする操作。コミュニティOSを導入する際の前提となる。
Play Integrity
アプリが、動いている端末やOSが改変されていないかを確認するためのGoogleの仕組み。この確認に依存するアプリは、LineageOS上では動作しない。
セキュリティパッチレベル
端末に、どの時点までのAndroidセキュリティ情報の修正が適用されているかを示す日付表記。
メンテナー
LineageOSで、特定の機種への対応を担当する開発者。機種ごとにおり、その機種を自分で所有していることが要件とされる。
WebUSB
ブラウザからUSB機器と直接通信するための仕組み。ChromeやEdgeなど、対応するブラウザでのみ使える。
A/B方式のアップデート
システム領域を2つ持ち、使用していない側に更新を書き込む方式。更新中も端末を使え、失敗時には元の状態に戻せる。


















