Natural AI Phone、ソフトバンクが4月24日発売 米ブレイン製AIスマホが日本上陸

アプリをタップして切り替えるスマートフォン体験が、ついに終わろうとしているのかもしれません。ソフトバンクが米国スタートアップと組み、AIが意図を汲み取って9つのアプリを横断操作する「Natural AI Phone」を、世界に先駆けて日本で4月24日に発売します


ソフトバンク株式会社は2026年4月17日、米国のBrain Technologies Inc.が開発したスマートフォン「Natural AI Phone」を2026年4月24日に“ソフトバンク”で発売すると発表した。

独自AI「Natural AI」と「Understanding System」を搭載し、5Gに対応する。発売後1年間はソフトバンク株式会社が国内で独占販売し、予約受付は同日開始された。

本体右側面にAIボタンを備え、Gmail、Google マップ、Google カレンダー、YouTube、LINE、食べログ、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの9アプリに対応する。

AIホーム画面「FocusSpace」では中長期目標を「フォーカス」として作成できる。OSはAndroid 15、CPUはSnapdragon 7s Gen 3、RAM 12GB、ROM 256GB、電池容量5,000mAh、サイズ約78×164×8.3mm、重さ約200g。カラーはTrue BlackとTrue Whiteの2色。

Brain Technologies Inc.は2015年に米国カリフォルニアで創業した企業である。

From: 文献リンク「Natural AI Phone」を“ソフトバンク”で4月24日に発売

【編集部解説】

ソフトバンクが4月24日に発売する「Natural AI Phone」は、単なる「AIを搭載したスマートフォン」という枠を超え、OS(基本ソフト)レベルからAIエージェントを前提に設計されたAIネイティブ端末と位置付けられます。開発元である米ブレイン・テクノロジーズ(Brain Technologies Inc.)社は、これを自社OS「Natural OS」の世界初の大規模商用展開と公表しており、日本が世界に先駆けた投入市場となる点も注目すべきポイントです。

2024年から2025年にかけて、ヒューメインAIピン(Humane AI Pin)やラビットR1(Rabbit R1)といった「スマホに代わる新しいAIデバイス」の試みが相次ぎました。しかし、ヒューメインは2025年2月にHPへ約1億1600万ドルで事業売却され、同月28日には既存端末「AIピン」の機能が停止しました。ラビットも販売した10万台に対し大量返品に直面するなど、結果としてこの第一世代は失敗と評価されています。その教訓はシンプルで、「スマホより便利でなければ、誰もスマホを置き換えない」というものでした。

Natural AI Phoneの設計思想は、この教訓に対する一つの回答です。つまり「新しいデバイスを作る」のではなく「スマホ自体をAIネイティブに作り替える」というアプローチをとっています。本体右側面の物理「AIボタン」で即座にAIを呼び出し、画面を認識して次の行動を予測、9つの対応アプリをまたいだ作業を一度に実行するという体験は、アプリをタップして切り替える従来の操作観を根本から問い直すものだと言えるでしょう。

ブレイン・テクノロジーズを率いるのは、2015年に米カリフォルニア州サンマテオで同社を創業したジェリー・ユー(Jerry Yue)氏です。米フォーブス誌の「30 Under 30」(2022年)にも選出されたシリアルアントレプレナーで、NLP(自然言語処理)におけるワンショット学習の先駆的研究で知られます。発表時の本人コメントでは「より良いスマートフォンを作ろうとしたわけではない」と述べており、同社の狙いがアプリ中心の計算機パラダイムそのものの再定義にあることがうかがえます。

経済面での注目点は価格と流通規模です。複数の海外報道によれば端末価格は9万3600円(約590ドル)で、SIMフリー端末としては中価格帯に収まります。ソフトバンクは全国5000店超の販売網と4100万件超の携帯契約基盤を擁し、プレミアム価格で先端技術を売る戦略ではなく、アーリーマジョリティにまで到達できる価格と流通を組み合わせた社会実装型のローンチを志向している点が、これまでのAIガジェットとの決定的な違いです。

同時に見逃せないのが、発売と同日(4月17日)にソフトバンクが無料AIサービス「だれでもAI」を立ち上げた点です。端末単体の勝負ではなく、AIを日常に浸透させるエコシステム戦略の一環としてNatural AI Phoneが位置付けられていることが分かります。オープンAI(OpenAI)との合弁「SB OAI Japan」によるクリスタル・インテリジェンス(Crystal Intelligence)の法人展開と併せて見ると、ソフトバンクが個人・法人の両面でAI前提の通信事業者を目指している構図が浮かび上がります。

潜在的な課題も冷静に見ておく必要があります。Natural AIが操作できるアプリは現時点で9つに限定されており、対応アプリ以外での自動化は効きません。また、全機能の動作にはインターネット接続が前提で、オフラインでの完結性はクラウド型AIの宿命として残ります。海外報道ではユーザーデータは日本国内で管理され、AIモデルの学習には利用されないとされており、プライバシー設計としては合理的ですが、実運用での透明性確保は今後の論点です。

規制面では、日本政府が検討を進めるAI関連法制や、EUのAI法(AI Act)が要求する透明性・説明責任との整合が問われます。特に「ユーザーの意図を予測する」タイプのエージェントは、判断根拠の可視化や同意取得の設計次第で体験の質が大きく変わります。ここをきちんと積み上げられるかが、AIスマホ全体の信頼性を左右するはずです。

長期的に見れば、この発売は「画面とアイコンのマス目に従ってアプリを選ぶ」という2007年以来のスマートフォン体験が、意図(インテント)中心の対話的インターフェースへ移行する起点になり得ます。ブレイン・テクノロジーズは2026年内の米国を含む複数国への展開を予告しており、仮に世界市場で一定の支持を得れば、アップルとグーグルが主導してきたOS二強体制に「AIネイティブOS」という第三の選択肢が加わる可能性も出てきます。

筆者としては、この端末が成功するか否かそのものよりも、「スマホはAIに溶けていく」という未来の輪郭がここから見えてくるかどうかに注目したいところです。読者の皆さんにとっても、次に買い替えるスマホを選ぶ視点が、カメラ性能や画面サイズから「どのAIと一日を過ごすか」に変わっていくかもしれない——そんな転換点に私たちは立ち会っているのだと思います。

【用語解説】

Natural AI / Understanding System
ユーザーとの会話や指示、画面操作の履歴を情報として蓄積・管理し、利用者の意図や次の行動を予測する仕組みだ。Understanding Systemは「情報の保管庫」、Natural AIはその情報を使って判断と提案を行う「頭脳」に相当する。

Natural OS(ナチュラルOS)
ブレイン・テクノロジーズが開発する、AIエージェントを中核に据えて設計された基本ソフトだ。従来のOSのようにアプリのアイコンを並べる発想ではなく、ユーザーの意図に応じて必要な機能を組み立てる「意図ベース」の操作体系を特徴とする。

AIネイティブ(AI-native)
AIを後から追加機能として載せるのではなく、設計段階からAIの存在を前提にハードウェア・ソフトウェアを構築する思想を指す用語だ。

AIエージェント
指示を受けて複数の手順やアプリをまたいだ作業を自動的に実行するAIプログラムを指す。チャットのように一問一答で終わらず、目標達成に向けて自律的に行動する点が特徴である。

ワンショット学習(One-shot learning)
大量の訓練データを必要とせず、少数、あるいは一度だけの例示から新しい概念やタスクを学習する機械学習手法のひとつだ。ブレイン・テクノロジーズはNLP(自然言語処理)分野でこの手法を初期から実用化した企業として知られる。

インテント(intent)
ユーザーが本当にやりたい「目的」のことを指す。ITの文脈では、「どのアプリを開くか」ではなく「何を達成したいか」に操作の軸を置く考え方として使われる。

FocusSpace / フォーカス
AIホーム画面上で、旅行計画や資格取得のような中長期的な目標を登録する機能だ。登録された「フォーカス」に対して、AIが情報収集や整理、次の行動の提案などを継続的にサポートする。

Snapdragon 7s Gen 3
米クアルコムが提供するミドルレンジ向けモバイルSoC(システム・オン・チップ)である。オクタコアCPUを搭載し、AI処理を含む日常利用に十分な性能を持つ。

5G SA(スタンドアローン)
5Gコア網と5G基地局のみで通信を完結させる方式のことだ。既存の4Gコア網に依存するNSA(ノンスタンドアローン)方式より低遅延で、本来の5G性能を発揮しやすい。

VoLTE / VoNR
VoLTEは4G LTE回線で音声通話を行う方式、VoNRは5G SA回線で音声通話を行う方式だ。本機は2026年4月時点でVoLTE対応、VoNR非対応となっている。

Humane AI Pin / Rabbit R1
2024年から市場投入された、スマートフォンに代わる新世代AIデバイスの代表例である。いずれも商業的には苦戦し、前者は2025年にHPへ売却、後者も大量返品を抱えるなど、第一世代AI専用端末の教訓となった。

Crystal Intelligence(クリスタル・インテリジェンス)
ソフトバンクとオープンAI(OpenAI)の合弁会社「SB OAI Japan」が提供する、日本企業向けAIサービスパッケージの名称だ。業務ワークフローへのAI統合を想定している。

EU AI Act(EU AI法)
欧州連合が2024年に成立させたAIに関する包括的規制の枠組みのことだ。リスクに応じたAIシステムの分類、透明性確保、説明責任などを事業者に求めており、世界各国の法整備に影響を与えている。

アーリーマジョリティ
マーケティング理論「イノベーター理論」において、新技術の普及曲線でイノベーター、アーリーアダプターに続く3番目のグループを指す。市場全体の約34%を占め、ここに到達するかどうかが技術の社会実装を左右するとされる。

【参考リンク】

Natural AI Phone 製品ページ(ソフトバンク公式)(外部)
Natural AI Phoneの機能紹介、購入案内、対応サービスをまとめたソフトバンクの製品ページ。

Brain Technologies, Inc. 公式サイト(Brain.ai)(外部)
Natural AI Phoneを開発した米AIスタートアップの公式サイト。Natural OSや企業理念を掲載。

だれでもAI(ソフトバンク)(外部)
ソフトバンクが2026年4月17日に開始した、生成AIを誰でも試せる無料サービスの公式ページ。

【参考動画】

【参考記事】

Brain Technologies and SoftBank Launch Natural AI Phone in Japan (Yahoo Finance)(外部)
Natural OSの世界初大規模商用展開であること、5000店超の販売網と4100万件超の契約基盤を記述した一次情報配信記事。

AI Product Failures 2026: Sora, Humane & Rabbit R1 (Digital Applied)(外部)
ヒューメインの1億1600万ドル売却やラビット10万台販売後の苦戦など、AI端末失敗事例を数値検証。

SoftBank to Launch Natural AI Phone with Integrated AI Agent on April 24 (BigGo Finance)(外部)
本体価格9万3600円(約590ドル)、1年独占販売、データ国内管理方針など実務情報を詳しく報じた記事。

SoftBank Enters AI Smartphone Market with Exclusive Japan Sales Rights (BigGo Finance)(外部)
9アプリ対応、AIボタン、だれでもAIとの同時展開を含むソフトバンクのAI戦略全体を位置付ける記事。

SoftBank to sell US startup Brain’s AI smartphone in Japan (Nikkei Asia)(外部)
日本の通信キャリアが米AIスタートアップのハードを独占販売する構造を国際ビジネス視点で紹介。

Forbes Names Brain Technologies Founder Jerry Yue to 30 Under 30 (GLOBE NEWSWIRE)(外部)
ジェリー・ユー氏の2022年版「30 Under 30」選出と、ブレイン・テクノロジーズの原点を伝える公式発表。

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【編集部後記】

AIボタンを押すたびに、自分の「やりたいこと」をAIが少しずつ学んでいく——そんな体験が日常になる日は、思ったより近いのかもしれません。みなさんなら、最初にAIに任せたい「手間」は何でしょうか。

スケジュールの調整でしょうか、食事の予約でしょうか、それとも旅行の計画でしょうか。便利さと引き換えに手放すもの、受け取れるもの、両方の手触りを一緒に確かめていけたらと思います。もし実機を触る機会がありましたら、ぜひ感想を聞かせてください。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。