GEヘルスケアは業界初となる全身3D MRI研究用ファウンデーションモデル(FM)を開発しました。これまでのMRI画像解析では2Dスライスに分割する必要がありましたが、このモデルは初めて全身の3D画像をそのまま処理することが可能になりました。
技術的特徴
- 173,000以上の画像と19,000以上の研究データに基づいて構築
- 従来の5分の1の計算リソースで学習が可能
- AWS SageMakerを活用し、複数のGPUによる分散学習を実現
性能と成果
- 前立腺がんやアルツハイマー病の分類タスクで既存モデルを上回る性能を達成
- MRIスキャンとテキスト説明のマッチングで30%の精度を実現(従来モデルは3%)
- 画像からテキスト、テキストから画像への変換が可能なマルチモーダル機能を搭載
今後の展望
現在は研究段階であり、Mass General Brighamが初期評価を開始する予定です。放射線治療計画の効率化や、MRI検査時間の短縮など、さまざまな医療分野への応用が期待されています。
from:Learn how GE Healthcare used AWS to build a new AI model that interprets MRIs
【編集部解説】
GEヘルスケアが発表した全身3D MRIファウンデーションモデルは、医療画像分析における大きなブレイクスルーといえます。これまでのAIモデルは2次元のスライス画像しか処理できませんでしたが、このモデルは3次元データを直接処理できるようになりました。
この技術革新の重要性は、人体の複雑な解剖学的構造をより正確に分析できる点にあります。特に脳腫瘍や骨格系の疾患、心血管系の異常などの診断において、立体的な視点が極めて重要になってきます。
実用化への道のり
このモデルは現在研究段階にありますが、すでに前立腺がんやアルツハイマー病の分類タスクで既存モデルを上回る性能を示しています。特筆すべきは、MRIスキャンとテキスト説明のマッチングで30%の精度を達成したことです。
GEヘルスケアはAWSとの戦略的提携により、Amazon SageMakerやAmazon Bedrockなどの最新のクラウドサービスを活用しています。これにより、開発サイクルを「年単位」から「月単位」へと大幅に短縮することが期待されています。
医療現場への影響
この技術は、放射線科医の作業効率を劇的に向上させる可能性があります。例えば、AIR Recon DLというGEヘルスケアの既存AI製品は、スキャン時間を最大50%短縮することに成功しています。
さらに重要なのは、この技術が医療の民主化に貢献する可能性です。高度な医療画像診断の専門家が不足している地域でも、AIの支援により質の高い診断が可能になるかもしれません。
今後の展望と課題
このファウンデーションモデルは、単なるMRI画像の解析ツールを超えて、医療ワークフロー全体を変革する可能性を秘めています。例えば、生検、放射線治療、ロボット手術などの医療処置の精度向上にも応用できると期待されています。
ただし、医療AIの実用化には慎重な検証が必要です。Mass General Brighamによる評価実験の結果が、この技術の実際の臨床価値を決定する重要な指標となるでしょう。
セキュリティとプライバシーの考慮
GEヘルスケアは、HIPAAなどの規制フレームワークに準拠したデータ管理を徹底しています。医療データの取り扱いには特に慎重を期す必要があり、この点は今後の実用化においても重要な検討事項となるでしょう。