Last Updated on 2025-01-16 11:02 by admin
製薬大手GSK(GlaxoSmithKline plc、本社:英国ロンドン)が、創薬開発におけるAIのハルシネーション問題への対策を2025年1月14日に発表した。
AIを活用した科学文献レビュー、ゲノム分析、創薬分野において、モデルの推論時(実際の使用時)における2つの主要対策を実施する。一つは自己反省メカニズムで、AIが自身の出力を検証・修正する仕組み。もう一つはマルチモデルサンプリングで、複数のAIモデルによる相互検証を行う。
キム・ブランソン氏(GSK AI・機械学習部門上級副社長)は、これらの技術により創薬プロセスの信頼性と効率性が大幅に向上すると述べている。
また、Cerebras SystemsがMayo ClinicとMicrosoftとの協力で、関節リウマチ患者の最適な治療法を予測するゲノム基盤モデルを開発したことも発表された。
from:Hallucinations in AI: How GSK is addressing a critical problem in drug development
【編集部解説】
AIハルシネーション対策の意義
製薬業界におけるAIの活用は、新薬開発の効率化や革新的な治療法の発見に大きな期待が寄せられています。しかし、AIが生成する誤った情報(ハルシネーション)は、特に医療分野において深刻な問題となっています。
GSKが今回発表した対策は、AIの信頼性向上に向けた重要な一歩と言えます。特に注目すべきは、トレーニング段階ではなく実際の使用時(推論時)での対策アプローチです。
技術的なブレークスルー
GSKが採用している自己反省メカニズムとマルチモデルサンプリングは、AIの出力精度を向上させる革新的な手法です。これらの技術により、AIが生成する情報の信頼性が大幅に向上することが期待されています。
特筆すべきは、この技術がGSKの創薬プロセス全体に適用可能という点です。文献調査から臨床試験データの分析まで、幅広い領域での活用が見込まれています。
医療分野への影響
ハーバード公衆衛生大学院の調査によると、AIを診断に活用することで治療コストを最大50%削減し、健康状態の改善を40%向上させる可能性があるとされています。
しかし、この技術の導入には慎重な姿勢も必要です。医療分野でのAIの誤った判断は、患者の生命に直接影響を及ぼす可能性があるためです。
規制と倫理的な観点
GSKは2024年2月に発表した「責任あるAI」に関する方針で、AIの開発・使用における5つの重要な原則を掲げています:
- プライバシーの保護
- データセキュリティの確保
- システムの堅牢性と信頼性
- 公平性と代表性
- 透明性と説明責任
今後の展望
医療分野におけるAI活用は、まさに転換点を迎えています。Clarivateの最新レポートによると、AIと機械学習の進歩により、創薬プロセスの効率化が急速に進むと予測されています。
ただし、技術の発展と同時に、適切な規制枠組みの整備も重要です。特に医療分野では、各国の規制当局が個別のリスク評価に基づいて、バランスの取れたアプローチを採用することが求められています。
読者の皆様へのメッセージ
AIのハルシネーション問題は、単なる技術的な課題ではありません。医療の未来を左右する重要な問題として、私たち一人一人が理解を深める必要があります。GSKの取り組みは、その解決に向けた重要な一歩と言えるでしょう。