Last Updated on 2025-03-20 11:09 by admin
Master & Dynamic社とNeurable社が共同開発した脳波インターフェース(BCI)搭載ヘッドホン「MW75 Neuro」が2024年に発売された。このヘッドホンは通常のMW75をベースに、脳波測定機能を追加し、価格は699ドル(約10万円)となっている。
Neurable社は2015年に設立された脳-コンピュータインターフェース技術を専門とする企業で、当初はVR環境での神経制御のためのEEG(脳波計)ストラップを開発していた。その後、日常的に使えるウェアラブルBCI技術の開発にシフトし、Master & Dynamicとのパートナーシップにより今回のMW75 Neuroが誕生した。
MW75 Neuroは外見上は通常のMW75とほぼ同じだが、イヤーカップ内にEEG電極が組み込まれている。音質面では通常のMW75と同様に高品質で、Master & DynamicのアプリでEQやアクティブノイズキャンセリング機能の調整が可能である。
脳波モニタリング機能は専用のNeurableアプリで操作し、集中セッションを記録・分析できる。集中レベルは高・中・低に分類され、それぞれポイントが付与される仕組みになっている。1日100ポイントを目標とするゲーミフィケーション要素も組み込まれている。
Neurable社は今後、より小型のイヤホンタイプや、ヘルメットに組み込んだセンサーなど、さまざまな形態でのBCI技術の展開を計画している。これにより、兵士やアスリートのモニタリング、外傷性脳損傷の研究などへの応用が期待されている。
from:The MW75 Neuro headphones read your brainwaves and their potential is fascinating
【編集部解説】
脳波を読み取るヘッドホンという概念は、まさにSFの世界から飛び出してきたような革新的テクノロジーです。Master & DynamicとNeurable社のコラボレーションによるMW75 Neuroは、単なるオーディオデバイスを超え、私たちの認知状態をリアルタイムで可視化する新時代のウェアラブルデバイスと言えるでしょう。
この製品の最も注目すべき点は、高度な脳-コンピュータインターフェース(BCI)技術が、一見すると普通のプレミアムヘッドホンに見えるデザインに統合されていることです。イヤーパッド部分に組み込まれたEEGセンサーが脳波を検出し、専用アプリでデータを分析・可視化する仕組みになっています。
使用感としては、座って作業をしている時や音楽を聴いている時に最も安定して機能するようです。動きが多い状況では接続が不安定になることもあるようですが、これは今後の技術改良で解決されていく可能性があります。
集中力の可視化と数値化は、現代社会で多くの人が抱える「集中力の低下」や「マルチタスクによる生産性の低下」といった課題に対する具体的なソリューションとなり得ます。特に、リモートワークやデジタルディストラクションが増加する現代において、自分の認知状態を客観的に把握できることの価値は計り知れません。
また、この技術が神経多様性を持つ人々の理解や支援にも応用できる可能性は非常に興味深いポイントです。記事の筆者も言及しているように、ADHDや自閉症スペクトラム障害などを持つ人々の脳の働きを非侵襲的に観察できることで、個々に最適化された学習・作業環境の構築につながるかもしれません。
一方で、このようなBCI技術の普及には、プライバシーやデータセキュリティに関する懸念も付きまといます。脳波データは非常に個人的な情報であり、その取り扱いには細心の注意が必要でしょう。Neurableのアプリがどのようにデータを保護し、利用しているのかという点は、今後より透明性が求められるでしょう。
音質面では、高品質なサウンド体験を提供しているようです。ノイズキャンセリング機能も備えており、Master & DynamicのM&D Connectアプリで調整が可能です。
699ドル(約10万円)という価格は確かに高額ですが、高品質なオーディオ体験と革新的な脳波測定技術の両方を手に入れられることを考えると、テクノロジー愛好家にとっては魅力的な投資と言えるでしょう。
Neurableの将来計画として、より小型のイヤホンタイプやヘルメットに組み込んだセンサーなど、さまざまな形態でのBCI技術の展開が検討されているようです。これにより、兵士やアスリートのモニタリング、外傷性脳損傷の研究などへの応用が期待されています。
このMW75 Neuroは、消費者向けBCI技術の第一歩に過ぎません。今後、このような技術がさらに発展し、私たちの日常生活や健康管理、パフォーマンス向上にどのような影響をもたらすのか、非常に楽しみです。テクノロジーと人間の脳の新たな関係性が始まろうとしています。
【用語解説】
脳-コンピュータインターフェース(BCI):
脳の電気信号を検知し、コンピュータや外部デバイスに送信して理解可能なパターンに変換する技術。簡単に言えば、「考えるだけで機械を操作できる」技術である。
EEG(脳波計):
脳波を測定するための装置。頭皮に電極を取り付け、脳の電気活動を記録する。MW75 Neuroはイヤーパッド内に電極を組み込み、非侵襲的に脳波を測定している。
非侵襲式:
体を傷つけずに測定する方法。MW75 Neuroは頭皮から脳波を読み取る非侵襲式BCIである。対して「侵襲式」は手術で頭に電極を埋め込む方式である。
ニューロテック:
脳神経科学を応用した技術の総称。脳活動の計測・モニタリング技術や、脳を刺激して治療や能力向上を促す技術などが含まれる。
Neurable, Inc.:
2015年に設立されたスタートアップ企業。脳波を活用したBCI技術を開発している。CEOはRamses Alcaide博士で、神経科学の博士号を持つ。
Master & Dynamic:
2014年にニューヨークでJonathan Levineによって設立されたプレミアムオーディオブランド。高品質な素材と洗練されたデザインが特徴である。
【参考リンク】
Neurable公式サイト(外部)
脳波インターフェース技術を開発するNeurable社の公式サイト。MW75 Neuroの詳細情報や同社のビジョンを紹介している。
Master & Dynamic公式サイト(外部)
高級オーディオブランドMaster & Dynamicの公式サイト。同社の製品ラインナップやデザイン哲学を確認できる。
Master & Dynamic日本公式サイト(外部)
Master & Dynamicの日本公式サイト。日本で購入可能な製品情報や最新ニュースを日本語で確認できる。
【編集部後記】
脳波を読み取るヘッドホンという未来的なデバイスについて、どう感じられましたか?自分の集中力が可視化されたら、どんな発見があるでしょうか。仕事や勉強の効率が上がる場面、逆に集中力が低下するタイミングを知ることで、日常生活が変わるかもしれません。もし手に入れるなら、どんな場面で活用したいですか?脳とテクノロジーの新しい関係性が始まろうとしています。皆さんのご意見やアイデアをSNSでぜひ教えてください。