Last Updated on 2025-04-28 18:36 by admin
量子コンピューティング市場は、IQT Researchの調査によると2026年までに22億ドル規模に達する見込みです。主な成長要因は、IBM、マイクロソフト、富士通など大手企業によるハードウェア・ソフトウェア開発の進展と、金融・医療分野での応用拡大です。IBMは「Quantum for Finance」で金融ポートフォリオ最適化を推進し、マイクロソフトは2022年7月にトポロジカル量子ビットの生成に成功、Azure Quantumの開発を加速しています。富士通と理化学研究所は2025年4月、256量子ビット超伝導量子コンピュータの開発を発表しました。2024年時点で北米が市場の33.6%を占め、アジア太平洋地域は2030年までに年平均成長率(CAGR)27.9%と高い伸びが見込まれています。米国は国家量子イニシアチブ法により5年間で12億ドルを投資、日本も国産量子コンピュータの開発に力を入れています。
from:https://www.iotworldtoday.com/quantum/quantum-computing-market-to-hit-2-2b-survey
【編集部解説】
量子コンピューティング市場の成長予測には大きな幅がありますが、これは「量子アドバンテージ」(量子コンピュータが従来型コンピュータを性能で上回る状態)の到達時期や、実用化範囲の見解が分かれているためです。IBMやGoogle、マイクロソフトなどが主導する超伝導方式やトポロジカル方式の量子ビット開発は進んでいますが、依然としてエラー率やコヒーレンス時間(量子状態を維持できる時間)など技術的な課題が残っています。
金融分野では、IBMの「Quantum for Finance」によるリスク管理やポートフォリオ最適化、医療分野ではケースウエスタンリザーブ大学によるMRIスキャンの高速化など、量子技術の実証例が増えています。ただし、現時点では多くが古典コンピュータとのハイブリッド運用であり、完全な量子優位性はまだ実現していません。
また、量子コンピュータの進展は暗号技術やデータ保護の分野にも大きな影響を与えるため、「ポスト量子暗号(PQC)」の標準化や倫理的ガバナンスが急務となっています。各国政府も積極的に投資を進めており、特に中国、日本、シンガポールなどアジア勢の台頭が目立ちます。
今後10年で量子コンピューティングは「実験」から「社会インフラ」へと進化する可能性がありますが、技術革新と同時に量子リテラシー教育やデジタル格差解消も重要な課題となるでしょう。
【用語解説】
トポロジカル量子ビット
幾何学的な安定性を利用し、エラーに強い量子ビット。Microsoftが開発を推進。
量子アドバンテージ
量子コンピュータが従来型コンピュータを明確に上回る性能を発揮する状態。
コヒーレンス時間
量子ビットが量子状態を維持できる時間。長いほど計算精度が高まる。
【参考リンク】
IBM Quantum:IBMの量子コンピューティング研究ポータル。Qiskitや事例が豊富。
Azure Quantum:Microsoftの量子クラウドサービス。トポロジカル量子ビットの概要も。
富士通 量子ハイブリッドサービス:富士通の量子プラットフォーム。国産量子マシンの技術解説。