Last Updated on 2024-12-04 16:38 by admin
NASAの深宇宙探査機ボイジャー1号・2号が、46年以上の活動期間を経て、任務終了の時期を迎えつつある。
■主要データ
・打ち上げ日:
- ボイジャー2号:1977年8月20日
- ボイジャー1号:1977年9月5日
・現在の状況:
- 運用期間:46年4ヶ月
- ボイジャー1号:太陽系外(2012年8月25日に到達)
- ボイジャー2号:太陽系外(2018年12月10日に到達)
・電源システム:
- RTG(放射性同位体熱電気転換装置)3基搭載
- 各RTGにプルトニウム238酸化物球24個(総質量4.5kg)
- 設計寿命:60年
■最近の動き
・2023年10月:ボイジャー2号のプラズマ科学機器の電源を停止
・現在稼働中の機器:4台(磁力計を含む)
・予測される完全停止時期:2034年までの間
■現在の位置
・ボイジャー1号:地球から約240億km
・ボイジャー2号:地球から約200億km
■ミッション責任者
・プロジェクトマネージャー:スザンヌ・ドッド
・所属:NASA/ジェット推進研究所(JPL)
※ボイジャー計画では、ボイジャー2号が1977年8月20日に最初に打ち上げられたが、その後、ボイジャー1号が同年9月5日に打ち上げられている。この打ち上げの順序が逆転しているように思えるかもしれないが、その理由は宇宙船の軌道とミッションの設計にある。
ボイジャー2号はより長い軌道を設定されており、木星、土星、天王星、海王星という4つの巨大惑星を訪れる長期間の旅を計画していた。一方、ボイジャー1号はより短い軌道を選択し、木星と土星のみを訪れる予定で、特に土星の衛星タイタンに近づくフライバイが計画されていた。
from:The End Is Near for NASA’s Voyager Probes
【編集部解説】
深宇宙探査の金字塔が迎える新たな局面
ボイジャー計画は、人類の宇宙探査史上最も成功した長期ミッションの一つとして知られています。2024年現在も稼働を続ける両探査機の状況について、最新の動向を解説させていただきます。
特に注目すべきは、2023年11月から2024年4月までの約5ヶ月間、ボイジャー1号で発生したデータ送信の問題です。これは単なる機器の故障ではなく、46年以上稼働し続けてきたコンピュータシステムの記憶装置に関する重大な課題でした。
NASAのエンジニアチームは、この問題に対して革新的な解決策を見出しました。故障したメモリチップの代わりに、プログラムコードを複数の場所に分散して保存するという方法です。この対応は、古い技術でも創造的な発想で新しい解決策を見出せることを示しています。
宇宙探査における技術の長期運用という観点から見ると、ボイジャープローブの現状は貴重な教訓を提供しています。1977年に設計された技術が、想定をはるかに超えて46年以上も機能し続けているという事実は、技術の耐久性と設計の重要性を示しています。
特筆すべきは、地球から約240億kmという途方もない距離での通信を実現している点です。片道22.5時間かかる通信遅延の中で、問題解決を行うNASAのエンジニアリング能力には目を見張るものがあります。
今後の展望と課題
ボイジャープローブの電力供給は、プルトニウム238を用いたRTGによって支えられていますが、年間約4ワットずつ減少しています。このペースで行くと、2030年代前半には科学観測機器の運用が困難になると予測されています。
しかし、ミッションの価値は科学観測だけにとどまりません。搭載されているゴールデンレコードは、人類文明のタイムカプセルとして、何十万年もの間、宇宙空間を旅し続けることになります。
技術開発への示唆
ボイジャー計画から学べる最も重要な教訓は、長期運用を前提とした設計の重要性です。現代の宇宙機器は高性能化している一方で、耐久性や修復可能性という観点では、必ずしもボイジャーの水準に達していない可能性があります。
また、限られたリソースの中で最大限の成果を引き出すための運用方法も、今後の深宇宙探査に活かせる重要な知見となるでしょう。特に、両機の観測機器を相補的に運用する現在の戦略は、将来の長期ミッションの参考になると考えられます。
※2024/12/04 16:04 タイトルを変更しました。