人類の月面探査に新たなページが加わろうとしています。2025年1月15日、民間企業Firefly Aerospaceの月面着陸機『Blue Ghost』が、NASAの実験機器を搭載し、49年ぶりに『危機の海』への挑戦を開始します。このミッションは、月面探査の新時代を切り開く鍵となるでしょう。
Firefly Aerospace社の月面着陸機「Blue Ghost」が、2025年1月15日午後2時11分(日本時間)にフロリダ州ケネディ宇宙センターの発射台39Aから、SpaceX社のFalcon 9ロケットで打ち上げられる。
Blue Ghostは高さ2メートル、幅3.5メートル、ペイロード搭載能力155kgの月面着陸機で、650Wの太陽光発電システムを搭載している。
打ち上げ後、約45日間の月への航行期間を経て、3月上旬に月のマレ・クリシウム(Mare Crisium)地域のモンス・ラトレイユ付近に着陸する予定。
from:How to watch Firefly launch its Blue Ghost mission to the moon on Tuesday night
【編集部解説】
Firefly Aerospaceの月面着陸機「Blue Ghost」は、民間企業による月面探査の新時代を象徴する重要なミッションとなります。昨年2月のIntuitive Machines社による初の民間月面軟着陸成功に続き、商業月面輸送サービス(CLPS)の第2弾として注目を集めています。
技術的特徴と革新性
Blue Ghostには、特筆すべき技術革新が搭載されています。高さ2メートル、幅3.5メートルのコンパクトな機体に、衝撃吸収機能を備えた着陸脚や低重心設計など、確実な着陸を実現するための工夫が随所に施されています。
特に注目すべきは、Vision-based Terrain Relative Navigation(地形相対航法)システムです。この技術により、着陸の最終1時間で周辺地形を詳細にスキャンし、クレーターや岩、傾斜を自動検知して最適な着陸地点を選定することが可能となります。
科学的意義
Mare Crisium(危機の海)地域への着陸は、1976年のソ連のLuna 24以来、実に49年ぶりとなります。この地域は30億年以上前の火山活動で形成された玄武岩質の平原で、月の地質学的歴史を解明する上で重要な手がかりを秘めています。
搭載される10個の科学機器は、月面環境の理解を大きく前進させる可能性を秘めています。特に注目すべきは、LEXIと呼ばれる観測装置で、地球の磁気圏が太陽風によってどのように変化するかを、月面から観測することができます[5]。
商業月面探査の展望
このミッションの成功は、月面探査の商業化に大きな影響を与える可能性があります。NASAのCLPSプログラムを通じて、民間企業が月面探査に参入する機会が増えており、技術革新とコスト削減の好循環が生まれつつあります。
特筆すべきは、同じロケットで日本のispace社の月着陸機「RESILIENCE」も打ち上げられることです。これは、月面探査における国際協力と競争の新しい形を示しています。
今後の課題と期待
月面探査において最も厄介な問題の一つが月のレゴリス(月の表土)対策です。Blue Ghostミッションでは、静電場を利用した革新的なダスト除去技術のテストも予定されており、将来の月面活動に向けた重要な知見が得られることが期待されています。
2027年に予定されているアルテミス計画での有人月面着陸に向けて、このような商業月面ミッションの成功は不可欠です。月の持続可能な探査と利用に向けた重要な一歩として、このミッションの成否が注目されています。