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LandSpace、6基の衛星を搭載した改良型メタン燃料ロケット「Zhuque-2E」の打ち上げに成功 – 再利用可能ロケット開発へ前進

LandSpace、6基の衛星を搭載した改良型メタン燃料ロケット「Zhuque-2E」の打ち上げに成功 - 再利用可能ロケット開発へ前進 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-18 08:03 by admin

中国の民間宇宙企業LandSpace Technology(藍箭航天)は2025年5月17日12時12分(世界標準時4時12分)、メタン燃料を使用した改良型ロケット「Zhuque-2E Y2(朱雀2号E型Y2)」の打ち上げに成功し、6基の衛星を軌道に投入した。

打ち上げは中国北西部の酒泉衛星発射センターから行われ、朱雀2号シリーズとしては5回目の飛行となった。

搭載された6基の衛星は、主に中国企業Spacety(長沙天儀空間科学技術研究所)が開発したもので、レーダー衛星1基、マルチスペクトル衛星2基、科学実験用衛星3基で構成され、重量は20kgから300kgの範囲である。

北京を拠点とするLandSpaceは2023年7月、世界初のメタン-液体酸素ロケットの打ち上げに成功し、イーロン・マスク氏のSpaceXやジェフ・ベゾス氏のBlue Originなどの米国のライバル企業に先んじた。

今回の打ち上げでは、液体酸素とメタンの両方を沸点以下に冷却する「ディープクライオジェニック」推進方式を初めて採用し、推力を向上させた。

Zhuque-2Eロケットは第1段に4基のTQ-12(天鹊)メタン-液体酸素エンジン、第2段に1基のTQ-15Aエンジンを搭載している。このロケットは高度500kmの太陽同期軌道に4トンのペイロードを投入する能力を持つ。

LandSpaceの創業者兼CEOである張昌武氏によると、同社は再利用可能ロケットの開発を開始しており、2025年後半にテスト打ち上げを実施する予定である。

2015年に設立されたLandSpaceは、HongShan(旧シーコイア・キャピタル・チャイナ)、カントリー・ガーデンの投資部門、国家支援の中国中小企業発展基金などから資金調達を行い、2025年12月には先進製造業に焦点を当てた国有ファンドから9億元(約1億2000万ドル)を調達した。

References:
文献リンクChina’s LandSpace launches improved methane-powered rocket

【編集部解説】

今回のLandSpaceによるZhuque-2E Y2ロケットの打ち上げ成功は、中国の民間宇宙産業の急速な発展を示す重要な出来事です。この打ち上げは2025年5月17日に行われ、朱雀2号シリーズとしては5回目の飛行となりました。

メタン燃料ロケットの開発競争において、中国のLandSpaceは2023年7月に世界初のメタン-液体酸素ロケットの軌道投入に成功し、SpaceXやBlue Originといった米国の宇宙企業に先んじました。これは宇宙開発における中国の技術的進歩を示す重要なマイルストーンと言えるでしょう。

メタン燃料が注目される理由は、従来の炭化水素燃料と比較して環境負荷が低く、安全性が高く、コスト効率に優れている点にあります。特に再利用可能ロケットの推進剤として適しているため、持続可能な宇宙輸送システムの構築に向けた重要な一歩となっています。

今回の打ち上げでは、液体酸素とメタンの両方を沸点以下に冷却する「ディープクライオジェニック」と呼ばれる推進方式が初めて採用されました。この技術により推力が向上し、より効率的な打ち上げが可能になっています。

メタンはケロシン(RP-1)などの従来の炭化水素燃料と比較して、燃焼時の煤やカーボン堆積物が少ないという大きな利点があります。これは単純な分子構造(CH₄)によるもので、エンジンの効率性と信頼性を高め、再利用可能ロケットの実現に不可欠な要素となっています。

中国の商業宇宙セクターは急速に拡大しており、2014年に政府が民間投資を許可して以来、多くの企業がこの分野に参入し、LandSpaceはその先駆者の一つとなっています。

今回打ち上げられた6基の衛星は、レーダー衛星、マルチスペクトル衛星、科学実験用衛星など多岐にわたります。特にレーダー衛星は、天候に左右されず地表のミリメートル単位の変化を検出できる能力を持ち、都市開発、交通、エネルギーインフラの監視など幅広い分野での活用が期待されています。

注目すべき点として、衛星開発企業のSpacety(長沙天儀空間科学技術研究所)は2023年1月に米国から制裁を受けています。米国はSpacetyがロシア企業にウクライナ上空のレーダー衛星画像を提供し、ワグネルの戦闘作戦を支援したと主張していますが、同社はこれを否定しています。この事実は、宇宙技術の軍民両用性と国際政治の複雑な関係を浮き彫りにしています。

中国の宇宙開発は国家戦略としても重要視されており、民間企業の活躍は「宇宙強国」を目指す中国の野望を支える重要な要素となっています。LandSpaceのような民間企業の成功は、国家主導の宇宙開発から官民連携へと移行する中国の宇宙政策の変化を反映しています。

メタン燃料ロケットの実用化は、宇宙輸送コストの大幅な削減と環境負荷の低減をもたらす可能性があります。これにより、衛星コンステレーションの展開や宇宙資源の利用など、新たな宇宙ビジネスの可能性が広がることでしょう。

【参考リンク】

LandSpace(藍箭航天):
2015年に張昌武氏によって設立された中国の民間宇宙企業。メタン燃料ロケットの開発で世界をリードしている。

Zhuque-2(朱雀2号):
LandSpaceが開発したメタン-液体酸素を燃料とする中型ロケット。2023年7月に世界初のメタン燃料ロケットとして軌道投入に成功した。

メタン燃料:
従来のケロシン(RP-1)に比べて環境負荷が低く、すすや炭素堆積物が少ないため、再利用可能なロケットに適している。メタンは単純な分子構造(CH₄)を持ち、完全燃焼しやすい。

ディープクライオジェニック:
液体酸素とメタンの両方を沸点以下に冷却する推進方式。燃料密度が高まり、推力が向上する。

TQ-12エンジン(天鹊12):
LandSpaceが開発したメタン-液体酸素ロケットエンジン。第1段に4基搭載され、各エンジンの推力は約67トン。

TQ-15Aエンジン:
Zhuque-2Eの第2段に搭載される改良型メタン-液体酸素エンジン。推力は約80トン。

Spacety(長沙天儀空間科学技術研究所):
2016年に設立された中国の衛星技術企業。小型衛星の開発・製造・運用を行っている。

SAR(合成開口レーダー):
全天候型のリモートセンシング技術。雲や雨を透過して地表を観測できる。

【参考リンク】

LandSpace公式サイト(外部)
中国の民間宇宙企業LandSpaceの公式サイト。メタン燃料ロケットZhuque-2シリーズの情報を提供している。

Spacety公式サイト(外部)
小型衛星の開発・製造・運用を行う中国の衛星技術企業Spacetyの公式サイト。

国際宇宙航行連盟(IAF)のLandSpace紹介ページ(外部)
国際宇宙航行連盟に加盟しているLandSpaceの紹介ページ。

【参考動画】

LandSpaceのZhuque-2ロケットの初の成功打ち上げ映像(2023年7月12日)

2025年5月17日のZhuque-2E Y2ロケット打ち上げに関するロイターのニュース映像

【編集部後記】

メタン燃料ロケットの台頭は、宇宙開発の新たな潮流を示しています。皆さんは日常生活で使うガスコンロの燃料と同じメタンがロケットを宇宙へ運ぶ時代が来たことをどう感じますか?日本でも北海道の企業が牛のふん尿由来のバイオメタンをロケット燃料に活用する取り組みが進んでいます。環境に優しい宇宙開発の未来に、私たちはどう関わっていけるでしょうか。宇宙と地球の持続可能な関係について、ぜひ一緒に考えてみませんか?

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TaTsu
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