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地球の大気の寿命は?|東邦大学とジョージア工科大学の研究で判明

地球の大気の寿命は?|東邦大学とジョージア工科大学の研究で判明 - innovaTopia - (イノベトピア)

現在の大気中の酸素濃度の1%を超える地球の大気の平均将来寿命は、10億8000万±1億4000万年(1 σ)である。

これは東邦大学の尾﨑和海助教とジョージア工科大学のクリス・ラインハード准教授の研究から導き出された結果である。

この研究は生物地球化学と気候を組み合わせたモデルを用いて、地球上の酸素に富む大気条件のタイムスケールを検討したものである。

これによると、太陽の老化に伴う温度上昇により大気中の二酸化炭素が減少し、光合成生物が生存不可能になる。この変化は地質学的に極めて短い期間で進行し、酸素レベルは現在の約100万分の1まで低下、同時にメタンレベルは大幅に上昇する。

この現象は24億年前の大酸化イベントの逆転に相当し、地球は太古の地球と同様に微生物のみが生存可能な環境に戻る。

地球の数十億年後の未来は、全体的に見てかなり暗いものになりそうだと記事は語っている。科学者たちは太陽系の生命が事実上約20億年後に消滅すると予測している。酸素濃度は現在の約100万分の1にまで低下すると予想されるからだ。
しかし、私たちにできることは実際にはほとんどない。イーロン・マスクとNASAが2030年代に人類を火星に送り込む計画がうまくいくことを祈るばかりである。

From: 文献リンクOur planet’s oxygen levels will drop, and there’s no way to stop it

【編集部解説】

東邦大学の尾﨑和海助教とジョージア工科大学のクリス・ラインハード准教授による研究は、2021年3月にNature Geoscience誌に発表された査読済み論文に基づいており、40万回のシミュレーションという大規模な計算によって導き出された科学的根拠のある予測です。

この研究が示す「約10億年後の酸素枯渇」は、単なる推測ではなく、太陽の進化と地球の炭素循環の相互作用を詳細にモデル化した結果です。太陽は主系列星として徐々に明るくなり続けており、これにより地球表面温度が上昇し、大気中の二酸化炭素が分解されやすくなります。

興味深いのは、この変化が約1万年という地質学的には「瞬間」とも言える短期間で進行する点です。現在の酸素濃度21%から、太古の地球レベルである1%未満まで急激に低下すると予測されています。これは24億年前の大酸化イベントの逆転現象に相当し、地球史上最大級の環境変化となります。

この研究は系外惑星探査にも重要な示唆を与えています。酸素は生命の存在を示すバイオシグネチャーとして注目されていますが、惑星の全生涯において酸素が豊富な期間は20-30%程度に過ぎないことが判明しました。これは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などの次世代観測装置による生命探査戦略の見直しを促す可能性があります。

一方で、この予測には不確実性も存在します。人類の技術進歩や地球工学技術の発展により、大気組成を人為的に制御する可能性も考えられます。また、10億年という時間スケールは人類の進化や宇宙進出計画を考慮すると、現実的な脅威というより学術的関心の対象と言えるでしょう。

むしろ注目すべきは、この研究が示す地球システムの精密なバランスです。現在の酸素豊富な環境は、太陽光度、大気組成、生物活動の絶妙な均衡によって維持されており、その脆弱性を改めて浮き彫りにしています。

【用語解説】

大酸化イベント(Great Oxidation Event)
約24億年前に起こった地球史上最大の環境変化。シアノバクテリアによる酸素発生型光合成により、それまで酸素のなかった地球大気に酸素が蓄積され始めた現象である。

太古の地球(Archaean Earth)
約40億年前から25億年前までの地質時代。大気中に酸素がほとんど存在せず、メタンが豊富で、微生物のみが生存していた時代を指す。

光合成
植物や藻類、シアノバクテリアが光エネルギーを使って二酸化炭素と水から有機物を合成し、酸素を発生させる生物学的プロセスである。

バイオシグネチャー
惑星の大気や表面に存在する生命活動の痕跡を示す化学的指標。酸素や水蒸気、メタンなどが代表的な例である。

系外惑星
太陽系外の恒星を周回する惑星。生命探査の重要な対象として注目されている。

【参考リンク】

東邦大学理学部環境科学科(外部)
尾﨑和海助教が所属する学科。地球環境科学と生命科学の融合分野を研究している。

ジョージア工科大学(外部)
アトランタに本部を置く州立工科大学。クリス・ラインハード准教授が所属している。

NASA Astrobiology Program(外部)
NASAの宇宙生物学プログラム。地球の酸素の未来に関する研究を支援している。

Nature Geoscience(外部)
尾﨑和海助教とラインハード准教授の研究論文が掲載された学術誌。

SpaceX(外部)
イーロン・マスクが設立した宇宙開発企業。2030年代の火星有人着陸を目指している。

【参考動画】

【参考記事】

The future lifespan of Earth’s oxygenated atmosphere – Nature Geoscience(外部)
尾﨑和海助教とクリス・ラインハード准教授による原著論文。40万回のシミュレーション結果を報告。

A billion years from now, a lack of oxygen will wipe out life on Earth – Space.com(外部)
研究成果を詳細に報じた記事。酸素レベルの急激な低下について解説している。

Extra 100 million years before Earth saw permanent oxygen rise – University of Leeds(外部)
大酸化イベントの新たな知見を報じた記事。酸素の永続的上昇が従来より遅かったことを明らかにした。

Earth nearly lost all its oxygen 2.3 billion years ago – Space.com(外部)
地球の酸素レベルが過去に大きく変動していたことを報じた記事。大酸化イベントの複雑性を解説。

Rise of oxygen on Earth: Initial estimates off by 100 million years – UC Riverside(外部)
カリフォルニア大学リバーサイド校による研究発表。酸素の永続的上昇時期の見直しについて報告。

Oxygen’s ups and downs in early atmosphere and ocean – ScienceDaily(外部)
初期地球の酸素レベル変動に関する研究報告。酸素濃度の上昇と下降パターンを分析。

Oxygen’s ups and downs in the early atmosphere and ocean – EurekAlert!(外部)
カリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームによる酸素変動研究の詳細報告。

【編集部後記】

今回の話は途方もない時間スケールの話ですが、この研究が示す地球システムの精密なバランスは、現在の環境問題を考える上でも重要な視点を与えてくれます。私たちが当たり前に吸っている酸素が、実は宇宙規模で見ると極めて特殊で貴重な存在だということを改めて実感させられませんか?また、この研究は系外惑星での生命探査にも新たな指針を提供しており、酸素以外のバイオシグネチャーの重要性を浮き彫りにしています。皆さんは、地球の未来や宇宙での生命探査について、どのような関心をお持ちでしょうか?ぜひSNSで、この記事を読んで感じたことや疑問をお聞かせください。

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TaTsu
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