【解説】JEITA 7月PC統計|台数半減でも金額は8割、2年前と並べ直すと変わる景色

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国内のパソコン出荷が、7月は前年の56.1%まで落ちました。ほぼ半減です。ところが金額は82.2%を保っています。台数と金額が正反対を向いた月に、何が起きているのか。比較する相手を1年ずらすと、見える景色が変わります。落ちたものと、上がったものを分けてみます。


一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)は2026年7月のパーソナルコンピュータ国内出荷実績を公開した。出荷台数は47万4000台で前年比56.1%、出荷金額は798億円で同82.2%だった。内訳はデスクトップが8万5000台(同74.6%)、ノートが38万9000台(同53.2%)で、モバイルノートは同49.5%と半減した。2026年度4月からの累計は249万7000台(同71.9%)、3470億円(同91.9%)となっている。

JEITAは概況で、前年のGIGAスクール第2期案件による特需の反動と、Windows 10サポート終了を背景とした買い替え需要の一巡を挙げ、市場全体の単価上昇により金額は台数ほど落ち込まなかったと説明している。統計は自主統計参加8社を集計したものである。

7月の統計をどう読むか

「56.1%」は「43.9%減」と読む

JEITAが公開した2026年7月のパーソナルコンピュータ国内出荷実績は、出荷台数47万4000台、前年比56.1%でした。統計における「前年比」は前年を100とした水準を示すため、この数字は「56.1%減った」ではなく「前年の56.1%まで下がった」、すなわち43.9%減を意味します。4割強が消えた計算になります。

モバイルノートは前年比49.5%と、前年の半分を下回りました。

比較の相手が、そもそも高い山だった

ただ、この数字を市場の失速と読む前に、比較の相手を見ておく価値があります。

前年の2025年6月、国内出荷は単月142万2000台を記録しました。前年比237.3%、2.4倍近い水準です。2025年度は通年で1091万3000台、前年比131.4%に達しました。文部科学省のGIGAスクール構想第2期による学習者用端末の更新と、Windows 10のサポート終了に伴う買い替えが、同じ年に重なったためです。

MM総研が2025年6月から7月にかけて全国の市区町村教育委員会に行った調査では、GIGA第2期の端末調達の72%が2025年度に集中し、2026年度は22%にとどまる見通しでした。少なくとも2025年夏の時点では、2025年度への集中と2026年度の反動が、自治体の調達計画から見えていたことになります。

JEITA自身も7月の概況で、前年のGIGAスクール第2期案件による特需の反動と、Windows 10サポート終了を背景とした買い替え需要の一巡を理由に挙げています。

ピーク前と並べ直すと、景色が変わる

そこで、2025年度の大型需要が本格化する前の2024年度と比べてみます。ただし2024年度自体も前年比124.3%と伸びており、GIGA第2期の更新もすでに一部が動いていました。ここでは平常時ではなく、ピーク前の比較基準年として扱います。

2026年度4月から7月の累計出荷台数は249万7000台。同じ4か月の2024年度は218万8000台で、2026年度が14.1%上回っています。

月別では、4月が2024年度比109.4%、5月が100.6%、6月は160.6%、7月が81.9%でした。

4〜7月 出荷台数(千台)4月5月6月7月累計
2024年度5124985995792,188
2025年度6425661,4228453,475
2026年度5605019624742,497
前年比87.3%88.6%67.7%56.1%71.9%
2024年度比109.4%100.6%160.6%81.9%114.1%

JEITA「パーソナルコンピュータ国内出荷実績」(一般社団法人 電子情報技術産業協会、2026年)をもとに作成。https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/pc/ ※「2024年度比」の行は編集部で算出

つまり、7月単月は2024年7月を下回る一方、4月からの累計では2024年度同期を上回っています。いずれもJEITA参加8社のメーカー出荷ベースの比較であり、国内販売全体の動きを示すものではありません。

落ちたのは台数、上がったのは単価

台数と金額を分けると、もう一つ別の像が浮かびます。

7月の出荷金額は798億円、前年比82.2%。台数が56.1%まで落ちた月に、金額は8割を保ちました。4月から7月の累計でも、台数71.9%に対して金額は91.9%です。

2026年7月実績前年比
出荷台数47万4000台56.1%
出荷金額798億円82.2%
出荷台数(4〜7月累計)249万7000台71.9%
出荷金額(4〜7月累計)3,470億円91.9%

JEITA「パーソナルコンピュータ国内出荷実績」(一般社団法人 電子情報技術産業協会、2026年)より作成。https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/pc/2026/07.html

出荷金額を出荷台数で割った1台当たりの出荷金額は、2026年度4月から7月が約13万9000円。2025年度の同期が約10万9000円、2024年度の同期が約12万円でしたから、2024年度同期比では16.2%高い計算になります。

4〜7月累計出荷台数出荷金額1台当たり
2024年度218万8000台2,616億円約11万9600円
2025年度347万5000台3,776億円約10万8700円
2026年度249万7000台3,470億円約13万9000円

JEITA「パーソナルコンピュータ国内出荷実績」(一般社団法人 電子情報技術産業協会、2026年)のデータをもとに編集部で算出。https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/pc/ 1台当たりは出荷金額を出荷台数で割った集計上の平均であり、店頭価格ではない

ただし、この値は製品構成を含んだ集計上の平均です。店頭価格や、同じ仕様のPCの値動きを示すものではありません。GIGA向け端末の構成変化と部材価格の上昇を、この統計だけで切り分けることもできません。

メモリの値段が、PCの値段を決めている

それでも、いま1台当たりの出荷金額が上がっている背景として広く指摘されているのが、世界的なメモリ価格の上昇です。

AIデータセンター向けの需要がDRAMとNANDの生産能力を吸い上げ、PC向けに回る分が細っています。TrendForceによると、汎用DRAMの契約価格は2026年第1四半期に前四半期比で約93〜98%上昇しました。四半期のあいだに価格がほぼ倍になった計算です。上昇はその後も続いていますが、上げ幅は縮んでおり、同社は第3四半期を13〜18%と見込んでいます。背景として挙げられているのは、消費者向け需要の弱まり、比較の基準がすでに高いこと、そして買い手側の価格抵抗です。8月19日に更新された同社の月次データでは、消費者向けメモリの供給逼迫と契約価格の上昇が続いており、部材とメモリのコスト上昇がスマートフォンやノートPCの端末価格を押し上げていると整理されています。

メモリは、PCメーカーが単独では制御しにくい外部コストです。部材価格が急騰すれば、在庫や調達契約を通じて時間差を伴いながら、製品への価格転嫁圧力が強まります。ただし、7月のJEITAの集計値にメモリがどれだけ寄与したかまでは、この統計からは測れません。

中国勢の増産は、いつ効くのか

この逼迫の出口として、たびたび名前が挙がるのが中国のメモリメーカーです。

中国最大のDRAMメーカーであるCXMT(長鑫存儲技術)の親会社、長鑫科技集団は、2026年7月27日に上海証券取引所の科創板へ上場しました。公開価格8.66元に対して初日の終値は49元、上昇率は約466%。オーバーアロットメント行使前の調達額は約579億2000万元、およそ85億5000万ドルで、上場時点で2026年のアジア最大の新規株式公開となりました。目論見書が引用するOmdiaによれば、同社の2025年第4四半期の世界DRAM売上高シェアは7.67%で、世界4位、中国1位です。

IPOでは大規模な資金が集まりました。目論見書は、生産ラインの技術改造、DRAM技術の高度化、先行研究開発を募集資金の使途に掲げています。中期的な供給能力の拡大を支える材料ではあります。ただし、それが日本の店頭価格に届くまでには、いくつもの時間差があります。

新しいラインの立ち上げと、歩留まりの安定には時間を要します。投資がそのまま供給増に直結するわけではありません。加えて、中国向けのEUV露光装置は輸出管理上の制約を受けており、CXMTを含む中国メーカーは先端の露光装置へのアクセスに制限があります。

そして、構図そのものが変わりつつあります。「中国勢の増産が価格を押し下げる」という筋書きは、いまのところ実現していません。韓国メディアは2026年8月、業界関係者の話として、Appleの値下げ要求をCXMTが受け入れず、SamsungやSK hynixと同等かそれ以上の価格を提示したと報じました。両社による公式の確認はありません。

少なくとも8月の時点では、メモリ市場の供給逼迫と価格上昇の圧力は続いています。ただし、JEITAの1台当たり出荷金額が今後も同じ方向へ動き続けるとは限りません。製品構成の変化だけでも、この値は動くためです。

なお、JEITAは概況で「市場全体の単価上昇傾向」とだけ述べ、原因を特定していません。ここまでのメモリとの接続は、統計そのものから導かれるものではなく、周辺の市場データと重ねた見立てです。

この統計が映しているもの

JEITAのパーソナルコンピュータ国内出荷実績は、自主統計に参加する8社を集計したものです。Apple Japan、NECパーソナルコンピュータ、セイコーエプソン、Dynabook、パナソニック コネクト、富士通クライアントコンピューティング、ユニットコム、レノボ・ジャパンが名を連ねています。国内で流通するすべてのPCを網羅する設計ではなく、この8社が見ている国内市場の断面です。参加社は2024年度から2026年度まで同じで、年度をまたいだ比較の連続性は保たれています。

同協会は、資料名・発行元・発行年・URLを明記すれば、統計データの引用も加工もグラフ化も認めています。現在のJEITAのサイトでは、2007年度分まで遡って月次の台数と金額を無償で確認できます。市場を語るための共通の物差しが、これだけ長期にわたって公開されていること自体が、日本のIT産業の資産です。

移行の猶予が、1年延びた

ところで、この夏のあいだに、移行の猶予が1年延びていました。Windows 10の個人向けESUは、2026年10月13日までとされていた提供期限が延長され、現在は2027年10月12日まで利用できます。無償で登録する方法も残されており、すでに登録済みの端末は手続きなしで期限が繰り延べられます。

GIGAスクール第2期についても、MM総研の集計で2026年度分とされた全体の22%、約144万台は、2025年6月から7月時点の自治体の調達計画です。2026年8月現在の残り台数を示すものではありません。

メモリ高でPCの価格に上昇圧力がかかるなか、セキュリティ更新を受けながらWindows 10を使い続けられる期間が延びたことは、利用者にとっては選択の時間が増えたということです。同時に、PCへの移行時期を後ろへずらす要因にもなり得ます。

7月の統計だけで、市場の局面が変わったと言い切ることはできません。それでも、台数と1台当たりの出荷金額が正反対の方向を向いた月を前にすると、次に見るべきなのは何台出荷されたかだけではなく、その1台にどんな価値と製品構成が反映されているかだという気がしてきます。メモリ価格の上昇は逆風であると同時に、安さで比べられてきた製品を性能や設計で語り直す機会でもあります。

次回の2026年8月分は、9月29日10時に公開される予定です。

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【編集部後記】

表のいちばん目立たない行に、オールインワンのデスクトップがあります。7月の出荷は1万3000台で前年比83.8%。ところが金額は27億円、前年比はちょうど100.0%でした。

台数が2割減っても、金額は1円も減っていません。一体型デスクトップは、いま最も語られないカテゴリーだと思います。それでも数字を見るかぎり、値付けを守り切っている製品が確かにある。次の月次で、この行がどう動くかを見ておくつもりです。


【用語解説】

出荷実績(メーカー出荷)
メーカーから販売代理店や小売店へ渡った台数・金額を示す統計値。消費者が実際に購入した実需(セルスルー)とは区別される。

前年比
前年を100としたときの水準。「前年比56.1%」は「56.1%減った」ではなく「前年の56.1%まで下がった」、すなわち43.9%減を意味する。

自主統計
業界団体が、参加を表明した企業から任意に数値の提供を受けて集計する統計。法令に基づく全数調査ではないため、参加社の範囲が集計値の射程を決める。

1台当たりの出荷金額
出荷金額を出荷台数で割った値。製品構成の変化を含む集計上の平均であり、店頭価格や同一仕様品の値動きとは異なる。

モバイルノート
JEITA統計のノートPC内の区分の一つ。もう一方は「ノート型・その他」。区分の定義は統計ページに示されていない。

GIGAスクール構想第2期
文部科学省の政策。2020年前後に配備された児童生徒1人1台端末の更新を、都道府県に造成した基金を通じて支援する。端末の補助基準額は1台あたり5万5000円。

ESU(Extended Security Updates/拡張セキュリティ更新プログラム)
サポート終了後の製品に対し、重要なセキュリティ更新のみを提供する仕組み。機能追加や技術サポートは含まない。

DRAM
電源を切るとデータが消える揮発性メモリ。PCやスマートフォンの主記憶に使われる。

NAND
電源を切ってもデータが残る不揮発性メモリ。SSDやストレージに使われる。

契約価格
メーカーと大口顧客の間で一定期間まとめて決める価格。市場でその都度取引されるスポット価格とは動きが異なる。

科創板(STAR Market)
上海証券取引所が2019年に開設した、科学技術系企業向けの市場。

オーバーアロットメント
新規株式公開で需要が想定を上回った場合に、追加で株式を売り出せる仕組み。行使の有無で調達総額が変わる。

EUV露光装置
極端紫外線を使い、半導体の微細な回路を焼き付ける製造装置。先端世代のメモリやロジックに用いられる。

歩留まり
製造したもののうち、良品として出荷できる割合。

【参考リンク】

2026年7月パーソナルコンピュータ国内出荷実績|JEITA(外部)
本記事の起点となる7月分の実績表と概況。JEITAは下落の理由として、前年の特需の反動と買い替え需要の一巡を挙げている。

パーソナルコンピュータ国内出荷実績|JEITA(外部)
デスクトップとノートの台数・金額を毎月公開する統計トップ。2007年度分まで遡れるほか、引用ポリシーと次回発表日も掲載されている。

2026年度 パーソナルコンピュータ国内出荷実績|JEITA(外部)
2026年度の月次推移と4月からの累計を掲載するページ。本記事で用いた台数と金額は、すべてこのページの数値に基づいている。

2025年度 パーソナルコンピュータ国内出荷実績|JEITA(外部)
特需の年となった2025年度の実績。6月に単月142万2000台、通年では1091万3000台を記録し、前年比131.4%に達している。

2024年度 パーソナルコンピュータ国内出荷実績|JEITA(外部)
本記事が比較基準年とした2024年度の実績。4月から7月の出荷台数は512・498・599・579千台で、累計は218万8000台となる。

Windows 10 Extended Security Updates|Microsoft(外部)
個人向けESUの公式ページ。提供期限が2027年10月12日であること、3つの登録方法、既登録端末は手続き不要であることを明記する。

次期ICT環境整備方針の在り方ワーキンググループ 取りまとめ|文部科学省(外部)
GIGAスクール構想第2期の制度設計を示す中央教育審議会の取りまとめ。端末の補助基準額を1台あたり5万5000円とする根拠を示す。

【参考記事】

AI Server Demand Continues to Support Memory Prices in 3Q26, but Gains Moderate as Consumer Demand Weakens and High Base Effects Take Hold, Says TrendForce(外部)
2026年7月3日発表。第3四半期の汎用DRAM契約価格を前四半期比13〜18%上昇と予測し、上げ幅が縮む理由もあわせて説明している。

DRAM Monthly Datasheet Aug. 2026|TrendForce(外部)
2026年8月19日更新の月次データ。消費者向けメモリの供給逼迫と契約価格の上昇が続く一方、買い手のコスト抵抗が値上げ率を鈍らせるとする。

AI Server Demand to Drive Memory Contract Price Increases in 2Q26 as CSPs Secure Supply via Long-Term Agreements(外部)
DRAMとNANDの生産能力がサーバー・企業向けへ再配分され、消費者向けの割当が細っていく構造を、価格予測とともに説明している。

GIGAスクール端末更新でOSシェアに大きな変化|MM総研(外部)
2025年6月から7月に全国の市区町村へ実施した調査。661万台を対象に、調達の72%が2025年度、22%が2026年度と集計している。

GIGAスクール端末の更新需要で2年連続の増加|MM総研(外部)
2025年暦年のタブレット国内出荷を812万台、前年比27.9%増と発表。2026年後半に買い替え需要が一巡するとの見通しも示していた。

Microsoft quietly extends free Windows 10 ESU support to October 2027(外部)
2026年6月25日、Microsoftが正式発表を伴わず個人向けESUを1年延長した経緯を、同社の回答とあわせて報じた記事である。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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