2025年2月1日夜、スコット・ベセント財務長官は、イーロン・マスク率いる政府効率化局(DOGE)の代表者たちに連邦支払いシステムへの完全なアクセス権を付与した。
このシステムは年間6兆ドル(約890兆円※為替レートにより変動)の支払いを管理し、以下の資金を取り扱う:
- 社会保障給付
- メディケア給付
- 政府契約支払い
- 税金還付
- 連邦職員給与
重要な出来事の時系列
- 2025年1月31日:デビッド・レブリク財務省高官が休職・退職
- 2025年2月1日夜:DOGEチームがアクセス権を獲得
- 2025年2月2日:NYTによる報道
from:Elon Musk’s DOGE gains access to Treasury Department’s payments system: NYT
【編集部解説】
今回の決定は、単なるシステムアクセス権の付与以上の意味を持っています。年間約890兆円規模の連邦支払いシステムは、アメリカの社会保障制度の根幹を支える重要インフラです。
このシステムが持つ影響力は絶大です。社会保障給付、メディケア給付、政府契約支払い、税金還付、連邦職員給与など、数億人のアメリカ国民の生活に直結する支払いを管理しています。
テクノロジーと行政の新しい関係
マスク氏率いるDOGEチームの特徴は、シリコンバレー流の効率化手法を政府システムに導入しようとしている点です。クラウドソフトウェアグループCEOのトム・クラウス氏を含む民間テクノロジー企業の専門家たちが、政府システムの改革に着手します。
懸念される課題
最も深刻な問題は、利益相反のリスクです。マスク氏の企業と競合する政府契約企業への支払いを管理できる立場になることで、公平性が損なわれる可能性があります。
また、数億人分の個人情報を含むシステムへのアクセス権が民間人に付与されることで、データセキュリティやプライバシーの観点からも懸念が示されています。
効率化と透明性のトレードオフ
DOGEチームは、不正支払いの防止を主要な目的として掲げています。2023年度には約236億ドルの不適切な支払いが発生したとされており、その75%が過払いだったことが報告されています。
しかし、政治的な意図による支払い停止のリスクも指摘されています。議会で承認された資金の支払いを一方的に停止できる可能性があり、権力分立の観点から問題視する声もあります。
テクノロジーによる行政改革の未来
この動きは、テクノロジー企業の経営手法を政府機関に導入する大規模な実験とも言えます。成功すれば、行政の効率化とコスト削減の新しいモデルケースとなる可能性があります。
一方で、民主的なプロセスや説明責任、透明性の確保との両立が課題となります。今後、他の政府機関でも同様の取り組みが進められる可能性があり、その成否は世界中の行政改革に大きな影響を与えるでしょう。