Last Updated on 2025-06-15 07:42 by admin
CNETが2025年6月14日に公開した記事によると、インターネットの環境負荷が過去10年で急激に増大している。情報通信技術(ICT)セクターは世界の二酸化炭素排出量の3.6%を占め、今後20億から30億人がインターネットに新規接続する予定である。
接続方式別では、光ファイバーが最も環境効率が良く、ケーブルインターネットと比較して電力消費と炭素排出を93%から96%削減する。米国の51%の世帯は光ファイバーにアクセスできない状況にある。5G回線は同じデータ量の送信で有線接続より高いエネルギーコストを要し、低軌道衛星(LEO)は地上モバイルブロードバンドと比較して農村部で8倍、遠隔地で6倍高い排出量を記録する。
SpaceXのStarlinkは7000基以上のLEO衛星を運用している。2024年には259回のロケット打ち上げが実施され、うち134回がSpaceXによるものだった。
データセンターは2023年に米国電力消費の4.4%を占め、2028年には6.7%から12%に増加する見込みである。AI用サーバーは20から100キロワットの電力を消費し、通常サーバーの5キロワット以下と比較して大幅に高い。Googleのデータセンターは2023年に230億リットル以上の淡水を冷却用に消費した。GPT-3は中程度の回答10から50件に対し500ミリリットルのボトル1本分の水を消費する。
From: The Hidden Cost of the Internet: Why the Web’s Environmental Impact Matters Now More Than Ever
【編集部解説】
インターネットの環境負荷問題は、これまで見過ごされがちでしたが、AI技術の急速な普及により深刻な転換点を迎えています。特に注目すべきは、AIサーバーの電力消費が従来のサーバーと比較して桁違いに高い点です。通常のサーバーラックが5キロワット以下の電力消費であるのに対し、AIサーバーは20から100キロワットを必要とします。これは単にデータを取得するのではなく、新たにデータを生成する処理が必要なためです。
水資源への影響も深刻で、Googleのデータセンターだけで2023年に230億リットル以上の淡水を冷却用に消費しました。これはペプシコの年間淡水消費量にほぼ匹敵する規模です。GPT-3の場合、中程度の回答10から50件に対して500ミリリットルのボトル1本分の水を消費するという試算もあります。
接続方式による環境負荷の違いも重要なポイントです。光ファイバーはケーブルインターネットと比較して電力消費と炭素排出を93%から96%削減できますが、米国の51%の世帯は光ファイバーにアクセスできない状況にあります。
衛星インターネットの環境負荷は特に深刻で、SpaceXのStarlinkのような低軌道衛星システムは地上モバイルブロードバンドと比較して農村部で8倍、遠隔地で6倍高い排出量を記録しています。2024年には259回のロケット打ち上げが実施され、うち134回がSpaceXによるものでした。
この問題の複雑さは、環境負荷と利便性のトレードオフにあります。ICT技術は世界の温室効果ガス排出量を最大20%削減する潜在能力を持つ一方で、自身も排出源となっているのです。
規制面では、透明性の向上と技術革新による効率化が急務となっています。研究者らは、大手テック企業に対してエネルギー消費と水使用量の開示を求めており、規制がイノベーションを促進する「ニンジン」の役割を果たすべきだと指摘しています。
今後の展望として、2028年までにデータセンターが米国電力消費の6.7%から12%を占める見込みで、この問題は単なる環境問題ではなく、デジタル社会の持続可能性を左右する重要な課題として位置づけられています。
【用語解説】
ICT(情報通信技術)
Information and Communication Technologyの略で、情報処理や通信に関する技術の総称である。ラジオ、テレビ、インターネットなどの通信機器・技術を含む広範な分野を指す。
LEO衛星(低軌道衛星)
Low Earth Orbitの略で、地球表面から約160〜2000キロメートルの高度を周回する人工衛星である。従来のGEO衛星より地球に近いため、通信遅延が少なく高速通信が可能だが、広範囲をカバーするには多数の衛星が必要となる。
GEO衛星(静止軌道衛星)
Geostationary Earth Orbitの略で、地球から約35,786キロメートル上空の静止軌道を周回する衛星である。地球の自転と同期して移動するため、地上から見ると空の同じ位置に留まって見える。
ハイパースケールデータセンター
GoogleやAmazon、Microsoftなどの大手テック企業が運営する超大規模なデータセンターである。数万台のサーバーを収容し、クラウドサービスやAIサービスの基盤となっている。
コロケーションデータセンター
複数の企業や組織が共同でサーバーやネットワーク機器を設置・運用するデータセンターである。設備やインフラを共有することでコストを削減できる。
光ファイバー
光信号を使ってデータを伝送するケーブルである。ガラスまたはプラスチック製の細い繊維を使用し、従来の銅線ケーブルと比較して高速・大容量の通信が可能で、電力消費も少ない。
DOCSIS 4.0
Data Over Cable Service Interface Specificationの最新版で、ケーブルインターネットの通信規格である。従来のケーブル技術と比較して高速化を実現している。
5G SA(スタンドアローン)
5G Standalone の略で、5G専用のコアネットワークを使用する5G通信方式である。従来の4Gネットワークに依存しない独立した5G環境を提供する。
【参考リンク】
Starlink(外部)
SpaceXが運営する低軌道衛星インターネットサービス。世界中の遠隔地でも高速インターネット接続を提供する革新的な衛星通信システム
Google環境レポート(外部)
Googleのデータセンターの環境への取り組みや水使用量、エネルギー効率化の詳細情報を提供する公式サイト
Fiber Broadband Association(外部)
米国の光ファイバーブロードバンド普及を推進する業界団体。光ファイバー技術の環境効率性や展開に関する研究データを提供
Berkeley Lab(外部)米国のデータセンター使用量に関する最も包括的で詳細な調査を提供する研究機関。AI負荷によるエネルギー消費予測を発表
【参考動画】
【参考記事】
The destructive impact of the digital world on the environment(外部)
デジタル世界が環境に与える破壊的影響について詳細に分析したWorld Cleanup Dayの記事
The Internet’s Environmental Cost Is Literally Underwater(外部)
海底ケーブルがもたらすインターネットの環境コストについて解説したMozilla Foundationの記事
The Carbon Footprint of the Internet(外部)
インターネット利用による炭素フットプリントとその削減方法について詳細に解説したShift Blogの記事
【編集部後記】
私たちが当たり前に使っているインターネットが、実は地球環境に大きな負荷をかけているという事実をどう受け止められたでしょうか。毎日のメール送信、動画視聴、AI検索の積み重ねが、想像以上の環境コストを生んでいます。
あなたの家庭では光ファイバー、ケーブル、5G、衛星インターネットのうちどの接続方式を使っていますか?また、日常的にAIツールを活用する頻度はどの程度でしょうか?これからのデジタル社会で、利便性と環境配慮のバランスをどう取っていけばよいか、ぜひ一緒に考えていきませんか。
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