Document FoundationはLibreOffice 25.8で一部のWindowsサポートを終了すると発表した。
同バージョンは2025年8月にリリース予定で、Windows 7、Windows 8、Windows 8.1のサポートを削除する。
また32ビット版Windowsビルドも非推奨となる。Windows 7は2020年にMicrosoftの公式サポートが終了し、Windows 8.1も2023年1月に延長サポートが終了している。
Document FoundationはWindows 10のサポート終了が2025年10月14日に迫る中、ユーザーにLinuxとLibreOfficeへの移行を推奨している。
LibreOffice 25.2では既にWindows 7/8/8.1が非推奨プラットフォームとなっており、25.8で完全にサポート終了となる。LibreOfficeは半年ごとのリリースサイクルを採用しており、現在25.8のベータテストが進行中である。
From: LibreOffice adds voice to ‘ditch Windows for Linux’ campaign
【編集部解説】
LibreOfficeによる古いWindowsサポート終了の発表は、単なる技術的な決定を超えて、オープンソースソフトウェア業界全体の戦略的転換点を示しています。この動きは、Microsoft Officeの独占的地位に挑戦する重要な局面でもあります。
Document Foundationが2025年8月リリース予定のLibreOffice 25.8でWindows 7、8、8.1のサポートを完全に終了する背景には、開発リソースの最適化があります。これらの古いOSは既にMicrosoftによる公式サポートが終了しており、セキュリティパッチの提供も停止されています。開発チームが限られたリソースを現代的なプラットフォームに集中させることで、より革新的な機能開発が可能になります。
実際、LibreOffice 25.2では既にWindows 7/8/8.1が非推奨プラットフォームとして位置づけられており、段階的な移行が進められてきました。この戦略的な移行により、開発チームは64ビットアーキテクチャに特化した最適化を進めることができます。
注目すべきは、LibreOfficeがこの機会を利用してLinux移行キャンペーンを展開している点です。2025年10月14日のWindows 10サポート終了を控え、ユーザーにWindows 11への強制的なアップグレードではなく、LinuxとLibreOfficeの組み合わせという「第三の選択肢」を提示しています。
この戦略は、特に企業や公的機関にとって重要な意味を持ちます。フランス政府の50万台、スペインのコムニタット・バレンシアナの12万台など、大規模なLibreOffice導入事例が既に存在しており、コスト削減とベンダーロックイン回避の有効性が実証されています。
ただし、移行には技術的な課題も存在します。特に複雑なドキュメントやマクロを多用するスプレッドシートでは互換性の問題が発生する可能性があります。また、ユーザーの変化への抵抗感も大きな障壁となり得ます。
長期的な視点では、この動きはソフトウェア業界のパワーバランスに影響を与える可能性があります。Microsoftの収益モデルがサブスクリプション型のMicrosoft 365に移行する中、無料のオープンソース代替案の存在は、企業のIT戦略に新たな選択肢を提供することになるでしょう。
【用語解説】
Document Foundation
LibreOfficeの開発・運営を行うドイツ法に基づく非営利財団。2010年にOracleがOpenOfficeプロジェクトを放棄した際に設立され、オープンソースオフィススイートの継続的な開発を担っている。
End of 10キャンペーン
Windows 10のサポート終了(2025年10月14日)に向けて、ユーザーにLinuxへの移行を促すKDE主導のキャンペーン。ハードウェアの延命と電子廃棄物削減を目的としている。
ODF(Open Document Format)
ISO標準化されたオープンなドキュメント形式。LibreOfficeが標準採用しており、ベンダーロックインを回避できる。20年の歴史を持ち、多くの国や機関で採用されている。
32ビット版Windows
x86アーキテクチャで動作するWindowsの旧版。メモリ使用量が4GB未満に制限されるため、現在では段階的に廃止されている。Windows 11では32ビット版は提供されていない。
非推奨プラットフォーム
LibreOffice 25.2以降でWindows 7/8/8.1が位置づけられたカテゴリ。動作保証外となり、これらのOSにのみ影響する問題への対処も行われなくなる。
【参考リンク】
LibreOffice公式サイト(外部)
無料のオープンソースオフィススイート。Microsoft Office互換でWriter、Calc、Impressなどを提供。
The Document Foundation(外部)
LibreOfficeの開発・運営を行う非営利財団の公式サイト。ソフトウェアの自由とデジタルデバイドの解消を使命とする。
Distro Chooser(外部)ユーザーの要求に応じて最適なLinuxディストリビューションを推奨するウェブサイト。16の質問に答えることで提案。
【参考動画】
【参考記事】
次期「LibreOffice」の最新版はWindows 7/8/8.1が非サポートに(窓の杜)(外部)
LibreOffice 25.8でのWindows 7/8/8.1サポート終了を日本語で報道。レガシーOS対応終了の背景と32ビット版非推奨化について解説。
LibreOffice 25.8 Beta 2 Drops Support for Windows 7/8/8.1(Security Online)(外部)
LibreOffice 25.8 Beta 2が古いWindowsと32ビットシステムのサポートを正式終了。開発リソースの64ビット版集中により効率化を図る。
LibreOffice 25.2 – ユーザーのニーズに応えるオフィススイート(Document Foundation)(外部)
LibreOffice 25.2の公式リリース発表。Windows 7/8/8.1の非推奨化とバージョン25.8でのサポート終了予定を明記。
【編集部後記】
LibreOfficeの動向を見ていると、オープンソースソフトウェアが単なる「無料の代替品」から、企業や個人の戦略的選択肢へと進化していることを感じます。
皆さんの職場や個人環境では、Microsoft Officeへの依存度はどの程度でしょうか。また、Windows 10のサポート終了を機に、LinuxやLibreOfficeといった選択肢を実際に検討されたことはありますか?
コスト面だけでなく、データの所有権やプライバシーの観点からも、この転換期は私たち一人ひとりにとって重要な判断の時期かもしれません。古いWindowsから脱却を検討されている方は、この機会にLinuxとLibreOfficeの組み合わせを試してみてはいかがでしょうか。