世界中のウェブサイトの約43%が利用するWordPress。その創設者であるMatt Mullenweg氏が、主要メンバー5人を追放するという衝撃的な決断を下しました。この動きは、オープンソースコミュニティにどのような影響を及ぼすのでしょうか?
WordPressの共同創設者Matt Mullenweg氏が2025年1月13日(土)、WordPressコミュニティの主要メンバー5人のWordPress.orgアカウントを無効化した。
無効化されたメンバーには、オランダのSEOツール企業Yoast SEOの創設者Joost de Valk氏とデジタルエージェンシーAvanscopeのCEOであるKarim Marucchi氏が含まれる。
この措置は、以下の経緯で実施された:
- 2024年12月:De Valk氏がWordPressプロジェクトのリーダーシップ交代を求めるブログを公開
- 2024年10月:Mulenwegの関連企業グループから159人が退職
- 2024年12月:カリフォルニア州裁判所がAutomatticに対し、WP Engineへの干渉停止を命じる予備的差し止め命令を発行
背景には、WordPressの商標使用料を巡るAutomattic社(Mulenwegが率いる企業)とWP Engine社との対立がある。WP Engineは年間数千万ドルの商標使用料支払いを要求されていた。
現在のWordPressの市場シェアは、全世界のウェブサイトの約43%を占めており、約8億以上のウェブサイトで使用されている。この事態を受け、コミュニティ内でWordPressのフォーク(分岐開発)の可能性が議論されている。
Mulenwegは2025年1月15日(月)、この訴訟により自身の破産やWordPress.orgの閉鎖の可能性があることを認めている。
from:WordPress leader Matt Mullenweg exiles five contributors
【編集部解説】
WordPressを巡る今回の騒動は、オープンソースプロジェクトのガバナンスという重要な課題を浮き彫りにしています。
Matt Mulenwegは個人的にWordPress.orgを所有し、営利企業Automatticを率いながら、オープンソースプロジェクトのリーダーも務めています。この複雑な立場が、今回の対立の根本的な要因となっています。
特に注目すべきは、Mulenwegによる5人のコミュニティメンバーのアカウント停止が、プロジェクトの分散化を求める声に対する反応だったという点です。これは、中央集権的なコントロールと分散型ガバナンスの理想との間の緊張関係を示しています。
商標とオープンソースの境界線
この騒動の背景には、オープンソースソフトウェアの商標使用に関する根本的な問題があります。WP Engineに対する年間数千万ドルの商標使用料要求は、オープンソースビジネスモデルの持続可能性に関する重要な議論を提起しています。
コミュニティへの影響
Automatticが週3,988時間から45時間へと大幅に貢献時間を削減したことは、プロジェクトの将来に大きな影響を与える可能性があります。これは、オープンソースプロジェクトの持続可能性と、商業的利害との均衡を保つ難しさを示しています。
今後の展望
この状況は、分散型のガバナンスモデルへの移行の可能性を示唆しています。「フェデレーテッドな独立リポジトリ」という提案は、より民主的な管理体制への一つの解決策となる可能性があります。
テクノロジー業界への示唆
この事例は、テクノロジー企業がオープンソースプロジェクトを商業的に活用する際の課題を示しています。特に、プロジェクトの所有権、ガバナンス、収益化の方法について、業界全体で再考を促す契機となるでしょう。
リスクと機会
この騒動は、WordPressエコシステムの分断というリスクをはらんでいます。しかし同時に、より健全なガバナンス構造を構築する機会にもなり得ます。特に、商標管理とコミュニティ貢献のバランスについて、新しいモデルが生まれる可能性があります。