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zVault、FreeBSDベースのTrueNAS COREの精神を継承 – 第2プレビューリリースで知的財産権問題を解決

zVault、FreeBSDベースのTrueNAS COREの精神を継承 - 第2プレビューリリースで知的財産権問題を解決 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-13 10:44 by admin

FreeBSD 13.3をベースにした新しいオープンソースNAS OS「zVault」が2025年5月12日に第2プレビューリリースを公開した。このリリースでは、第1プレビューで問題となった知的財産権の問題が解決されている。

zVaultは、iXsystems社がメンテナンスモードに移行したFreeBSDベースのNAS OS「TrueNAS CORE」の後継を目指すコミュニティフォークプロジェクトである。iXsystems社は現在、Debian Linuxをベースとした「TrueNAS SCALE」に注力している。

zVaultの最初のプレビューリリースは2025年2月下旬に公開されたが、iXsystems社のシニアバイスプレジデント・オブ・エンジニアリングであるKris Moore氏が知的財産権の問題を指摘し、プロジェクトはISOを撤回した。現在、zVaultチームはiXsystems社の痕跡を取り除き、完全なオープンソース版の作成に取り組んでいる。

FreeBSDブロガーのVermaden氏によると、最初のリリースには50以上のファイルにTrueNASエンタープライズライセンス契約への言及があったという。

zVaultプロジェクトのロードマップは以下の通りである

  • 動作するものをリリース
  • 安定版のリリース
  • バージョン13.5へのアップデート
  • FreeBSD 14への再ベース化

一方、iXsystems社は2024年3月にTrueNAS COREをメンテナンスモードに移行すると発表し、2025年初頭には「TrueNAS Fangtooth」と呼ばれる統合版TrueNASを発表する予定である。

なお、TrueNAS COREの代替として、XigmaNASも存在するが、こちらはiXsystems社の関与以前の古いバージョンのFreeNASから継続しているもので、TrueNAS COREよりも複雑で、ウェブUIの洗練度も低いものの、機能し更新も受けている。

References:
文献リンクFreeBSD fans rally round zVault upstart

【編集部解説】

TrueNAS COREからzVaultへの移行は、オープンソースコミュニティにおける重要な動きを示しています。この事例は、商業的な判断とコミュニティの要望が衝突した際に生まれる「フォーク」の典型的な例と言えるでしょう。

iXsystems社がFreeBSDベースのTrueNAS COREをメンテナンスモードに移行し、Linux(Debian)ベースのTrueNAS SCALEに注力する決断をしたことは、ビジネス的には理解できる判断です。Linuxエコシステムの方が大きく、コンテナ技術やKubernetesとの統合が容易であるため、より広い市場にアピールできるからです。

しかし、この決断はFreeBSDを愛用するユーザーコミュニティには受け入れがたいものでした。FreeBSDはその安定性、セキュリティ、そしてZFSとの統合の深さで知られており、特にNASシステムにおいては理想的なOSと考える技術者が多いのです。

zVaultプロジェクトの誕生は、オープンソースの力を示す好例です。商業的な判断で放棄されたプロジェクトを、コミュニティが引き継ぎ発展させる姿勢は、テクノロジーの民主化を体現しています。

特に興味深いのは、最初のリリースで知的財産権の問題が浮上した点です。この問題は、オープンソースプロジェクトにおいても知的財産権の管理が複雑であることを示しています。zVaultチームは50以上のファイルからiXsystems社の独自コードを取り除く必要があり、これは「真のオープンソース」と「商業的に管理されたオープンソース」の境界線の難しさを浮き彫りにしています。

zVaultのロードマップは控えめながらも現実的です。まず動作するものをリリースし、安定版を提供した後、段階的にFreeBSDの新バージョンに対応していく計画は、持続可能な開発アプローチを示しています。

このプロジェクトが成功すれば、FreeBSDベースのNASソリューションを求めるユーザーに選択肢を提供するだけでなく、オープンソースコミュニティの自律性と持続可能性を示す好例となるでしょう。

一方で、iXsystems社も2025年初頭にFangtooth(TrueNAS 25.04)という統合版をリリースする予定で、ユーザーに対して継続的なサポートを約束しています。これは商業企業とオープンソースコミュニティの共存の可能性を示唆しています。

技術的な観点では、FreeBSDとLinuxの選択は単なるOSの好みだけでなく、コンテナ技術やハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)への対応など、より広い技術戦略の違いを反映しています。zVaultは「FreeBSDはNASに最適」「ハイパーコンバージェンスがすべての人にとっての解決策ではない」という明確な立場を取っています。

このような技術的分岐は、ユーザーにとって選択肢が増えることを意味し、それぞれのニーズに合ったソリューションを選べるようになるという点でポジティブな影響をもたらすでしょう。

今後の展開として注目すべきは、zVaultがどれだけ迅速に安定版をリリースできるか、そしてコミュニティの支援をどれだけ集められるかという点です。オープンソースプロジェクトの成功は、コードの質だけでなく、コミュニティの活力にも大きく依存します。

【用語解説】

FreeBSD
商用UNIXをベースとしたオープンソースOS。安定性と堅牢性に優れ、サーバー用途に適している。Linuxと異なり、カーネルとユーザーランドが一体開発されているため、システムの整合性が高い。

ZFS
高度なファイルシステム。データの整合性保護、スナップショット機能、RAID管理などの機能を持ち、大容量ストレージに適している。FreeBSDとの相性が特に良い。

NAS(Network Attached Storage)
ネットワークに直接接続できるストレージデバイス。複数のコンピュータからファイル共有が可能で、家庭やオフィスでのデータ保存・共有に使用される。

コミュニティフォーク
オープンソースプロジェクトが分岐し、元のプロジェクトとは別の開発チームによって新たな方向性で開発が継続されること。自動車メーカーが特定モデルの生産を中止したとき、ファンが独自に部品を製造して車種を存続させるようなものと例えられる。

【参考リンク】

iXsystems(外部)
エンタープライズ向けストレージソリューションを提供する企業。TrueNAS COREとSCALEの開発元。

TrueNAS CORE(外部)
iXsystemsが開発するFreeBSDベースの無料NAS OS。安定性に優れている。

TrueNAS SCALE(外部)
Debian Linuxベースの無料NAS OS。コンテナやKubernetesに対応した拡張性が特徴。

【参考リンク】

【編集部後記】

ストレージソリューションは、私たちのデジタルライフの土台となる重要な技術です。FreeBSDベースのNASを愛用されている方、この「zVault」プロジェクトについてどう思われますか? オープンソースコミュニティの力で生まれ変わるTrueNAS COREの精神に期待されますか? あるいは、LinuxベースのSCALEへの移行を検討されていますか? みなさんがNASに求める最も重要な要素は安定性でしょうか、それとも最新機能でしょうか? SNSでぜひ教えてください。

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TaTsu
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