ソニー製ディスプレイ搭載「VITURE Pro 2」|軽さと価格で広がるXRグラスの選択肢

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スマートフォンやゲーム機の画面を、メガネ型デバイスに映して持ち歩く——そんなXRグラスの市場は、この数年で「物珍しさ」から「選択肢の一つ」へと着実に立ち位置を変えてきました。米VITUREが発表した新モデル「VITURE Pro 2」は、その変化を体現する製品です。


VITURE Pro 2 XRグラスは、価格299ドルで発売された。ディスプレイにはソニー製Micro-OLEDを採用し、146インチ相当の仮想画面を1,600ニト・視野角50度・120Hzで表示する。近視調整ダイヤルは0〜−5.0Dの範囲に対応し、SGS眼精疲労A+認証を取得している。

ノーズパッドは7種類のサイズを用意し、長時間の装着を想定した設計とする。USB-C接続に対応し、Nintendo Switch・Switch 2やSteam Deckなどのハンドヘルド機、iPhone、Android、Mac、Windowsと接続できる。専用アクセサリーのMobile Dock Miniは99ドルで用意される。現在のレビュー評価は5点満点中4.9、件数は737件である。

From: 文献リンクVITURE Pro 2 XR Glasses | VITURE

【編集部解説】

VITURE Pro 2の中核は、ソニー製Micro-OLEDパネルを使った表示システムです。前モデルのVITURE Proと比べて視野角は46度から50度へ、輝度は1,000ニトから1,600ニトへと引き上げられており、146インチ相当の仮想スクリーンを120Hzで映し出します。解像度は片目あたり1920×1080とされ、数値だけを見れば着実な底上げです。

もう一つの軸が近視対応です。0〜−5.0Dのダイヤルをレンズごとに独立して回せる設計で、視力矯正用レンズの追加購入や外付けインサートが要らない点は、日常的にメガネをかけている人にとって実用的な差になりそうです。

重量面では、実機レビューによると63gまで軽量化され、前モデル比で16%薄く、20%軽くなったと報じられています。公式には7種類のノーズパッドサイズが用意されるとしており、「3時間経っても気にならない」快適性を前面に押し出す設計思想がうかがえます。

画質を支えるのはソニーの半導体技術

VITURE Pro 2が謳う「UltraClarity 3.0」の土台にあるのは、VITURE自身の光学設計だけでなく、ソニーが供給するMicro-OLEDパネルです。ソニーは2024年9月、AR向けに0.44インチ・画素密度約5,000ppi・ピーク輝度10,000cd/m²を実現するOLEDマイクロディスプレイ「ECX350F」を発表しており、この分野で世界的に主導的な立場にあるとされています。

ここで押さえておきたいのは、ソニー自身はコンシューマー向けのXRグラスを自社ブランドでは販売していないという点です。VITUREだけでなく、RokidやRayNeoといった競合ブランドも同じソニー製パネルを採用しており、「ソニー製」という打ち出し方は差別化要因というより、業界標準になりつつある部品をどこよりも早く・うまく製品に落とし込めたかという競争に近いのかもしれません。

VITUREという会社と、その足元にある係争

VITUREは2021年、Google・Appleなどの出身者を含むシリコンバレー系のチームによって設立された企業です。2026年8月に投入されたPro 2は、同社の5周年に合わせた製品という位置づけです。

資金調達の面では勢いがあります。2025年9月以降の半年間で2度、それぞれ1億ドル規模の調達を行い、累計調達額は2億ドルを超えたとされています。VITURE自身は、IDCの調査を引用する形で「米国のXRグラス出荷台数で首位」と説明していますが、これはスマートフォンやPCの画面を映す「拡張ディスプレイ」カテゴリーに限った話です。カメラやアシスタント機能を備えた「AIグラス」まで含めた市場全体で見ると状況は異なり、IDCの2026年3月公開データではMetaが72.2%を占め、VITUREは1.5%にとどまるとの報告もあります。

もう一つ、製品ページには出てこない情報として押さえておきたいのが、競合XREALとの特許係争です。XREALは2025年11月、ドイツ・ミュンヘン地方裁判所でVITURE関連会社に対する仮処分を獲得し、2026年1月には米テキサス州で「VITURE Pro」「Luma Pro」「Luma Ultra」などを対象とした特許侵害訴訟を提起しています。争点となっているのは、Birdbath方式と呼ばれる光学系の設計そのものです。VITURE側は「patent troll的な訴訟だ」と反論し、中国では独自に法的手続きを開始したとしています。

Pro 2の「UltraClarity 3.0」も同じBirdbath方式の発展形とされていますが、Pro 2そのものが今回の訴訟の対象に含まれるかどうかは、現時点で確認できていません。画質や軽さといった目に見える進化の裏側で、技術の出どころを巡る争いが続いていることは、XRグラスというカテゴリーがまだ「誰のものか」が固まりきっていない証拠とも言えそうです。

メディアの反応

実機に触れたメディアの反応はおおむね好意的です。Tom’s Guideは発売直後のレビューで、スペック競争よりも快適性を優先した判断が功を奏していると評価しました。価格も、上位モデルのLuma(399ドル)やLuma Ultra(599ドル)と比べて299ドルに抑えられており、XRグラスという体験を試すハードルを下げる方向に働きそうです。

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【編集部後記】

スペックの数字が並ぶ製品ページの裏側には、部品を供給する企業や、技術の出所を巡る特許係争など、見えにくい層が積み重なっています。軽さや価格といった分かりやすい進化の陰で、XRグラスというカテゴリーはまだ、誰が何を築いてきたのかが定まりきっていません。画面の向こうにある技術の来歴まで気にする視点は、これから広がっていくのでしょうか。


【用語解説】

UltraClarity 3.0
VITUREが独自に呼称する光学系のブランド名。像の歪みやピント精度を改善したとする、Birdbath方式光学系の最新世代。

Birdbath方式
ハーフミラーと曲面レンズを組み合わせ、小型ディスプレイの映像を反射させて眼前に虚像として映し出す光学設計。単眼〜両眼型のXRグラスで広く採用される方式。

Micro-OLED(マイクロOLED)
シリコン基板上に直接有機EL素子を形成した超小型・高精細ディスプレイ。XRグラス向け表示デバイスとして採用が広がる。

ニト(nit)
ディスプレイの輝度を表す単位。数値が大きいほど明るく、屋外や明るい室内でも視認しやすい。

ジオプター(D)
レンズの屈折力を示す単位。近視・遠視の度数調整に用いられ、マイナス表記は近視用レンズを意味する。

SGS認証
スイスに本部を置く検査・認証機関SGSが発行する第三者認証。低ブルーライト・フリッカーフリーなど眼精疲労対策の基準適合を示す。

patent troll(特許トロール)
自ら製品を製造・販売せず、特許権の行使によるライセンス料や賠償金の獲得を主目的とする個人・企業を指す俗称。訴訟の是非を巡ってしばしば議論の対象となる。

【参考リンク】

VITURE Pro 2 製品ページ(外部)
価格・スペック・同梱物を掲載する公式ページ。購入や仕様確認に。

ソニーセミコンダクタソリューションズ|OLED Microdisplay(外部)
VITURE Pro 2にも採用されるソニー製Micro-OLEDの技術解説ページ。AR/VR向け展開の背景を確認できる。

XREAL公式サイト(外部)
VITUREと特許係争中の競合ブランド。Birdbath方式を含む光学設計や自社製品ラインを掲載。

Rokid公式サイト(外部)
同じくソニー製Micro-OLEDを採用するAR/AIグラスブランド。製品ラインナップを確認できる。

RayNeo公式サイト(外部)
TCL傘下のAR/AIグラスブランド。VITURE・XREALと並ぶ主要プレイヤーの一つ。

VITURE公式Reddit(r/VITURE)(外部)
ユーザーコミュニティが実使用レポートや設定Tipsを共有する場。購入前の実機情報収集に。

VITURE公式Discord(外部)
ユーザー同士の交流やサポートが行われる公式コミュニティ。

【参考記事】

Viture Pro 2 review: Cheaper, more comfortable AR glasses — Tom’s Guide(外部)
発売直後の実機レビュー。前モデル比の視野角・輝度データと総評を掲載。

Viture Pro 2 XR Glasses Shrink the Weight Problem to 63 Grams — The Gadgeteer(外部)
重量・薄さの前モデル比データ、解像度スペックを報告。

Gear Review: VITURE Pro 2 XR Glasses — Pure Nintendo(外部)
5周年タイミングでの発売経緯、上位モデルとの価格比較を報告。

Viture Closes Second $100 Million Round As Display Glasses Category Finds Its Footing — Forbes(外部)
累計調達額とXREALとの特許係争の経緯を報告。

XREAL Files U.S. Patent Infringement Lawsuit against Viture — PRNewswire(外部)
XREAL側の提訴内容と対象製品を報告する一次資料。

XREAL is suing VITURE for freeriding on technological breakthroughs — Tom’s Guide(外部)
争点となっているBirdbath方式特許の内容を解説。

Xreal deals blow to Viture with patent victory and German sales ban — Android Central(外部)
2025年11月のミュンヘン地裁仮処分の経緯を報告。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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