Last Updated on 2025-03-07 17:37 by admin
中国のVRヘッドセットメーカーPimaxが、開発中の2つのPC VRヘッドセット「Dream Air」と「Crystal Super」の最新開発状況を発表した。
Dream Airの製品仕様
- 価格: 1,895ドル(約28万5,000円)
- プレオーダー特別価格: 1,199ドル+追加支払い
- 発売予定: 2025年5月
- 重量: 約200g
- ディスプレイ: 1.35インチマイクロOLEDパネル
- 解像度: 片目あたり3,840×3,552(合計約2,700万ピクセル)
- リフレッシュレート: 72Hz/90Hz
- コントラスト比: 100,000:1
- 視野角: 105°
- 主な機能:
- 自動IPD調整(58-72mm)
- アイトラッキング
- 4台のカメラによるSLAMトラッキング
- ハンドトラッキング
- 内蔵スピーカー
- デュアルマイク
Crystal Superの製品仕様
- 価格: 999ドル+696ドルの一括払いオプション、月額32.99ドルの24回払いオプション
- 発売予定: 2025年3月末(50 PPD)、4月中旬(57 PPD)
- ディスプレイ: QLEDパネルとMiniLED(片目あたり1,000ゾーンのローカルディミング)
- 解像度: 片目あたり3,840×3,840
- リフレッシュレート: 72Hz/90Hz
- 視野角: 120〜135°
- 主な機能:
- アイトラッキング
- 自動IPD調整
- ダイナミックフォビエイテッドレンダリング
- 特徴: 交換可能な光学エンジン(QLEDとマイクロOLEDの両方のディスプレイエンジンを切り替えて使用可能)
Dream Airはパンケーキレンズの設計改良により視野角が当初の102°から105°に拡大される見込みだ。ディスプレイについては、同一解像度のマイクロOLEDパネル2種類から選定中で、ソニー製パネルを採用する場合は光学特性が向上する一方で、価格が「少しだけ」上昇する可能性がある。
Crystal Superは57 PPDモデルがQLED+MiniLEDで水平視野角120°、50 PPDモデルは水平視野角135°となっている。ベータテスターからのフィードバックに基づき、ヘッドストラップデザインを以前のモデルに近い単純な頭上ストラップに変更し、重量分散を改善するために大きめのフェイスパッドを採用するとのことだ。
また、2025年2月4日に発表された米国の対中関税については、発表前に注文された製品については同社が関税コストを負担するが、今後はヘッドセットの価格上昇につながる可能性があるとしている。
from Pimax Shares Development Updates on Dream Air and Crystal Super Headsets
【編集部解説】
Pimaxの新型VRヘッドセット開発に関する最新情報について、いくつかの興味深いポイントがあります。
まず、Dream AirとCrystal Superは別々の製品に見えますが、実は内部的には同じ光学エンジンソリューションを共有しています。両製品の主な違いはフォームファクターとターゲットユースケースにあり、Dream Airが軽量性と携帯性を重視しているのに対し、Crystal Superは没入感と視野角の広さを優先しています。
Crystal Superについては、CES 2025での実機展示が行われており、複数のメディアが実際に体験レビューを公開しています。特に注目すべきは、初日の展示では歪みの問題が大きかったものの、2日目には改良された歪みプロファイルが実装され、体験が大幅に向上したという点です。これはPimaxが開発過程でフィードバックに基づいて迅速に改良を進めていることを示しています。
Crystal Superの実機レビューからは、解像度と視野角の広さについては高い評価が得られていますが、重量や歪み補正については改善の余地があるという指摘もあります。特に「最も没入感のあるヘッドセット」というPimaxの主張に対して、重量の問題が没入感を損なう可能性が指摘されています。
また、日本市場においてもPimaxは積極的に展開を進めており、2024年5月に東京でのローンチイベントを開催し、ヤマダ電機との販売パートナーシップを結んでいることが確認できます。VR市場において日本を重要な市場と位置づけていることがうかがえます。
Dream AirとCrystal Superの価格設定については、どちらも一括払いとサブスクリプション型の支払いオプションが用意されています。これはVRヘッドセット市場における高価格帯に位置づけられますが、サブスクリプションモデルを取り入れることで初期投資のハードルを下げる試みと言えるでしょう。
興味深いのは、Pimaxが「Dream AirとCrystal Super以上に高性能なヘッドセットは12K以外には予定していない」と明言している点です。これは同社の製品ロードマップにおいて、これら2製品が当面のフラッグシップとなることを示しています。
VR市場全体を見ると、Pimaxは高解像度・広視野角という特徴で差別化を図っていますが、Meta Quest 3やApple Vision Proといった競合製品との比較において、PCVRという接続形態を維持している点が特徴的です。無線接続の便利さよりも、高画質・高没入感を優先するユーザー層をターゲットにしていると言えるでしょう。
最後に、米国の対中関税の影響についても触れられていますが、これはVR業界全体に影響を与える可能性のある政治経済的要因として注目に値します。グローバルなサプライチェーンと地政学的な緊張の狭間で、VRハードウェアメーカーがどのように事業を展開していくかは今後も重要なトピックとなるでしょう。
【用語解説】
PPD(Pixels Per Degree): 視野角1度あたりのピクセル数を表す単位です。数値が高いほど解像度が高く、より鮮明な映像が得られます。人間の目の解像度は約60PPDと言われており、57PPDのCrystal Superはほぼ人間の目と同等の解像度を実現しています。
パンケーキレンズ: 従来のフレネルレンズより薄く軽量で、光の反射を利用して光路を折り畳むレンズ技術です。スマートフォンのカメラレンズのように薄くできるため、VRヘッドセットの小型・軽量化に貢献します。
マイクロOLED: 従来のOLEDよりもさらに小型化された有機ELディスプレイで、高精細・高コントラスト・低消費電力が特徴です。スマートウォッチの小さな画面からVRヘッドセットまで幅広く使用されています。
インサイドアウトトラッキング: ヘッドセット自体に搭載されたカメラで周囲の環境を認識し、位置や動きを追跡する技術です。外部センサーが不要なため、セットアップが簡単で持ち運びにも便利です。スマートフォンのARアプリのように、デバイス自身が周囲を認識する仕組みです。
【参考リンク】
Pimax公式サイト(日本)(外部)Pimaxの日本向け公式サイトで、製品情報や購入ができます。
Mogura VR Store(外部)日本のVR専門ストアで、Pimaxを含む様々なVRヘッドセットを販売しています。