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ポケモンGO、Scopelyに売却 – Nianticが空間AI企業へ転身、300億枚の画像データが示す次世代AR戦略

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-03-13 17:29 by admin

Nianticは2025年3月12日、35億ドル(約5,250億円)の取引で会社を二分割することを正式発表した。一方は「Niantic Spatial」と名付けられ、300億枚の位置情報付き画像データを活用した地理空間AI技術の開発に特化する。この新会社は創業者ジョン・ハンケ氏が率い、Scopelyからの5000万ドル(約75億円)を含む合計2億5000万ドル(約375億円)の資金を確保している。

もう一方のゲーム部門は、ポケモンGOやピクミンブルーム、モンスターハンターナウなどを含めて米モバイルゲーム企業Scopelyに売却された。Scopelyはサウジアラビア公共投資基金が全額出資するSavvy Games Group傘下の企業であり、2023年に49億ドル(約7,350億円)で買収されている。

Niantic Spatialは今後、現実世界とデジタル世界を融合させる視覚的位置決めシステム(VPS)や大規模地理空間モデル(LGM)などの技術開発に集中する。

from Niantic Sells Pokémon Go To Saudi Arabia To Fund Spatial AI Transition

【編集部解説】

今回のNianticによるポケモンGOのゲーム事業売却は、単なる企業再編を超えた、テクノロジーと政治経済が交差する重要なターニングポイントとして注目すべき出来事です。

まず、政治的な背景を見てみましょう。ポケモンGOを取得したScopelyは、サウジアラビアの政府系ファンドである公共投資基金(PIF)が全面的に出資するSavvy Games Groupの傘下企業です。サウジアラビアは石油依存型経済から脱却し、多角化を進めるために「Vision 2030」という国家戦略を掲げています。その一環としてゲームやエンターテインメント分野への投資を積極化しており、任天堂やElectronic Artsなど世界的なゲーム企業への出資も行っています。一方で、同国は人権問題などから国際社会で批判を浴びており、今回の取引についても「スポーツウォッシング」ならぬ「ゲームウォッシング」として批判的な見方が存在します。こうした政治的背景が今後ポケモンGOのブランドイメージやユーザー離れに影響する可能性も否定できません。

一方でNiantic自身が選択した道は、AR技術の未来に向けた明確な戦略転換と言えるでしょう。同社が新たに設立した「Niantic Spatial」は、これまでポケモンGOを通じて蓄積された300億枚もの画像データベースを活用し、「地理空間AI(GeoAI)」技術の開発に特化します。GeoAIとは、現実世界の空間情報とAI技術を融合させることで、機械が物理的環境を人間と同じように理解・認識できるようになる技術です。この技術が実現すれば、自動運転車やドローン配送、スマートシティ構築など、多くの分野で革新的な応用が可能となります。

また、Nianticが推進するVisual Positioning System(VPS)は、従来のGPSでは難しかった都市部や屋内環境での高精度な位置特定を可能にします。これは次世代ARグラスやロボット、自動運転車などの精密な位置情報把握に欠かせない基盤技術となり得ます。AppleやMetaなど大手テック企業が競う空間コンピューティング市場において、このデータ資産と技術力はナイアンティックSpatialにとって強力な競争優位性となるでしょう。

一方でポケモンGOを取得したScopelyは、「MONOPOLY GO!」や「Stumble Guys」といったヒット作で知られるモバイルゲーム企業です。同社は積極的な収益化戦略で知られており、一部プレイヤーからは課金要素強化への懸念も聞かれます。ただしScopely側はナイアンティックから引き継ぐ開発チームをそのまま維持し、「ポケモンGO」の長期的な発展に向けて投資を継続すると表明しています。今後、プレイヤー体験がどのように変化するか注視すべきでしょう。

今回の事業売却は、AR技術がゲームというエンターテインメント領域から産業応用へと主軸を移していることを示唆しています。ナイアンティックSpatialによる空間AI技術が成熟すれば、自動運転車やロボット工学など多様な産業分野でARの実用化が進み、人々の日常生活にも大きな影響を与えることになるでしょう。

【用語解説】

地理空間AI(GeoAI)
地理情報と人工知能を組み合わせた技術。現実世界の位置情報を分析し理解できるAI。

視覚的位置決めシステム(VPS):GPSとは異なり、カメラ映像から周囲環境を認識し正確な位置情報を特定する技術。

大規模地理空間モデル(LGM):膨大な地理空間データから現実世界の特徴を学習し理解するAIモデル。

【参考リンク】

Niantic公式サイト(外部)ARゲーム開発企業。今後は空間コンピューティング企業として再出発。

Scopely公式サイト(外部)モバイルゲーム開発企業。「MONOPOLY GO!」などヒット作多数。

Savvy Games Group公式サイト(外部)サウジ公共投資基金傘下。世界規模でゲーム・eスポーツへの投資展開中。

Niantic Spatial Platform公式サイト(外部)ナイアンティックが提供する企業向け空間コンピューティングプラットフォーム。

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乗杉 海
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