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Apple Vision Pro用アプリ『ReelRoom』が実現する空間型ビデオストア体験 — デジタル時代に失われた選ぶ楽しさの復活

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-23 17:47 by admin

Apple Vision Pro用アプリ「ReelRoom」が、空間コンピューティングの力を活用して、かつてのビデオレンタルショップ「ブロックバスター」のような体験を自宅で再現する。このニュースは2025年4月21日にUploadVRで報じられた。ReelRoomでは、仮想の棚を作成し、映画コレクションのパッケージアートを空間内に配置できる。

棚の行数や列数をカスタマイズしたり、「無限の棚」機能で大量のコレクションを表示したりすることが可能だ。開発者のJason Norrisは、デジタル時代に失われた物理的な映画選びの体験を、空間コンピューティングで復活させている。映画を選択すると情報やストリーミングリンクが表示され、単なるデジタルリストよりも豊かな体験を提供する。

Norrisは他にもPlexとJellyfinのローカルメディアサーバー用の「Screenlit」アプリも開発している。Apple Vision Proは2024年6月28日に日本でも発売され、現在のvisionOSは2025年4月16日にリリースされた2.4.1が最新バージョンである。

from ReelRoom For Apple Vision Pro Turns Your Home Into A Blockbuster

【編集部解説】

Apple Vision Proの登場により、私たちは「空間コンピューティング」という新しいパラダイムを体験しています。ReelRoomアプリはその可能性を示す絶好の例です。このアプリが注目に値するのは、単にノスタルジーを刺激するだけでなく、デジタル化によって失われた「物理的な選択体験」という価値を再構築している点にあります。

現代のストリーミングサービスは効率的ですが、リスト形式のUIでは得られない「空間を歩きながら選ぶ」という体験の豊かさを犠牲にしています。ReelRoomは空間コンピューティングの特性を活かし、デジタルとフィジカルの良さを融合させた新しいユーザー体験を創出しているのです。

特に注目すべきは「無限の棚」機能です。これは物理的な制約を超えた空間表現であり、XR技術ならではの価値提供といえるでしょう。実際の部屋の制約を受けずに、無限に広がる映画コレクションを表示できるこの機能は、空間コンピューティングの可能性を象徴しています。

フランス語のレビューサイト「Stylistme」によると、ReelRoomはただ映画ジャケットを表示するだけでなく、ユーザーが自分だけの「ビデオクラブ空間」を物理的な制約なく再構築できる点が評価されています。これはNetflixのグリッド表示では決して得られない満足感を提供するとのことです。

スペイン語のサイト「Generación XR」では、ReelRoomが単なるノスタルジーを超え、アニメーションするポスターや装飾オブジェクトも追加できる「レトロフューチャリスティック」な体験として紹介されています。これは単なる映画コレクションの表示を超えた、創造的な空間デザインの可能性を示唆しています。

ReelRoomのような空間アプリの登場は、テクノロジーの進化が必ずしも過去の良さを捨て去ることではなく、むしろそれを新しい形で再構築できることを示しています。

このアプリが示唆するのは、デジタル化によって失われた体験の価値を、最新テクノロジーによって復活させる可能性です。効率性だけでなく、体験の豊かさや社会性も大切にする技術の在り方は、今後のXR開発の重要な方向性となるでしょう。

空間コンピューティングの真の価値は、単なる情報表示の新しい方法ではなく、人間の体験をより豊かにする可能性にあります。ReelRoomはその一例に過ぎませんが、私たちの生活空間とデジタルコンテンツの関係性を再定義する可能性を秘めています。

最後に、こうしたアプリケーションの登場は、XR技術が単なるゲームや専門的用途だけでなく、日常的な文化体験を豊かにする方向に進化していることを示しています。

【用語解説】

空間コンピューティング
現実空間とデジタル空間を融合させる技術で、ARやVRなどを包括する概念である。従来の2Dディスプレイと異なり、3D空間内でコンテンツを操作できるため、より直感的で没入感のあるユーザー体験を実現する。例えるなら、映画「マイノリティ・リポート」でトム・クルーズが空中でジェスチャー操作するシーンのような体験を現実化したものだ。

Apple Vision Pro
Appleが開発した空間コンピューティングデバイス。2023年6月に発表され、2024年2月に米国で発売、2024年6月28日に日本でも発売された。頭部に装着するヘッドセット型で、高精細なディスプレイと多数のセンサーを搭載し、視線やハンドジェスチャーで操作する。価格は日本円で約60万円からとなっている。

ブロックバスター
かつて世界中に展開していた映画・ゲームのレンタルチェーン店。全盛期の2004年には世界中に9,094店舗を展開していたが、Netflixなどのストリーミングサービスの台頭により2010年に破産申請し、現在は米国オレゴン州ベンドに1店舗のみが残っている。日本でいえば「TSUTAYA」のようなビデオレンタル店のイメージだ。

Plex/Jellyfin
個人が所有する映画、音楽、写真などのメディアファイルを整理し、様々な機器で視聴できるようにするメディアサーバーソフトウェア。自宅のパソコンやNASにインストールして使用する。例えるなら「自分専用のNetflix」を作れるサービスである。

Trakt
映画やテレビ番組の視聴履歴を記録・管理できるサービス。どの作品をいつ見たか、どこまで見たかなどを記録し、複数のデバイス間で同期できる。「読書記録アプリ」の映像版と考えるとわかりやすい。

【参考リンク】

Apple Vision Pro 公式サイト(外部)Appleの空間コンピューティングデバイス「Vision Pro」の製品情報、特徴、使用例を紹介している公式サイト。

ReelRoom 開発者サイト(外部)記事で紹介されているApple Vision Pro用アプリ「ReelRoom」の公式サイト。アプリの機能や使い方について詳しく解説している。

【参考動画】

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乗杉 海
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