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Huaweiが中国でのNvidiaの空白を埋めるためにAscend 910C AIチップの大量出荷を開始

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-04-23 16:52 by admin

Huawei Technologiesは2025年5月から高性能AIチップ「Ascend 910C」の中国顧客への大量出荷を開始する計画だ。これは米国が4月初めにNvidiaのH20チップに新たな輸出制限を課したことを受けた動きである。

Ascend 910Cは910Bプロセッサ2つを融合させた設計で、FP16で約800 TFLOP/s、メモリ帯域幅3.2 TB/sを実現。NvidiaのH100性能の約60〜80%に相当する。SMICのN+2プロセス(7nm相当)で製造され、TSMCからの調達チップも使用。2025年に10万個の生産を目指している。

Huaweiは384個のAscend 910Cを搭載した「CloudMatrix 384」も提供。300ペタフロップスの計算能力はNvidiaのGB200 NVL72(180ペタフロップス)を上回るが、消費電力は3.9倍高い。

アナリストらは米国の規制がNvidiaの中国顧客をHuaweiへ押しやっていると指摘。Nvidiaは株価下落と55億ドルの費用計上に直面している。

Huaweiは2025年後半には次世代「Ascend 920」の生産も開始予定である。

from: Huawei begins mass shipment of Ascend 910C AI chip to fill Nvidia void in China

【編集部解説】

Huaweiの新型AIチップ「Ascend 910C」の大量出荷計画は、グローバルなAIハードウェア市場の勢力図を大きく変える可能性を秘めています。この動きは単なる新製品の発表ではなく、米中テクノロジー覇権争いの最前線で起きている重要な展開と言えるでしょう。

また、Huaweiは制裁前にTSMCから大量のチップを確保していた可能性があります。これは米国の輸出規制を回避するための戦略的な動きだったと考えられます。

次世代チップ「Ascend 920」も2025年後半に量産開始予定であり、Huaweiは継続的な技術革新を進めています。このチップは6nmプロセスを採用し、900 TFLOPS以上の性能と4 TB/sのメモリ帯域幅を提供する見込みです。これはAscend 910Cからの大幅な性能向上を意味し、NvidiaのH100により近い性能を実現する可能性があります。

この展開がAI業界に与える影響は計り知れません。中国企業はNvidiaへの依存から脱却し、国産AIインフラを構築する道を歩み始めています。これにより、グローバルなAI開発の二極化が進むことも考えられます。

長期的には、この動きは米国の技術輸出規制の有効性に疑問を投げかけるものです。規制が強化されるほど、中国は自国技術への投資を加速させ、結果として技術的自立を早めるかもしれません。

しかし、課題もあります。Huaweiのアプローチは「力業」に依存しすぎているという批判もあり、効率性や拡張性の面で懸念が残ります。また、TSMCなど外国企業への依存も完全には解消されていません。

結論として、Ascend 910Cの大量出荷は中国のAI産業にとって重要なマイルストーンとなるでしょう。完全にNvidiaに取って代わるものではないかもしれませんが、技術的自立への大きな一歩であることは間違いありません。今後、AIハードウェア市場はより多様化し、競争が激化することで、イノベーションが加速する可能性があります。

【用語解説】

TFLOP/s(テラフロップス):
1秒間に1兆回の浮動小数点演算を実行できる能力を示す単位。AIチップの計算性能を測る重要な指標である。家庭用ゲーム機PlayStation 5が約10 TFLOP/sであることと比較すると、Ascend 910Cの800 TFLOP/sという性能がいかに強力かが分かる。

ペタフロップス:
1秒間に1000兆回(1京回)の浮動小数点演算を実行できる能力。1ペタフロップス=1000テラフロップス。CloudMatrix 384の300ペタフロップスは、地球上の全人類が1秒間に約4万回の計算を同時に行うのと同等の処理能力に相当する。

FP16/BF16:
半精度浮動小数点形式で、AIの計算に使われる数値表現方法。精度を若干犠牲にする代わりに、計算速度と電力効率を向上させる。

HBM(High Bandwidth Memory):
高帯域幅メモリ。AIチップに使われる高速なメモリ技術で、大量のデータを素早く処理するために必要。

N+2プロセス:
SMICが開発した7nm相当の半導体製造技術。米国の制裁により最先端の製造装置が入手できないため、独自の技術で開発されている。歩留まりは約20%と報告されており、量産化の課題となっている。

CUDA:
NVIDIAが開発したGPUプログラミングプラットフォーム。多くのAIソフトウェアがCUDAに最適化されており、これがNVIDIAの強みとなっている。

MindSpore:
Huaweiが開発したAIフレームワーク。CUDAに対抗するHuawei独自のエコシステム。

ternary logic(三値論理):
従来のコンピュータが使用する二進法(0と1)ではなく、-1、0、1の三つの値を使用する論理システム。Huaweiが開発中の技術で、トランジスタ数の削減と電力効率の向上が期待されている。

【参考リンク】

Huawei日本公式サイト(外部)
Huaweiの日本における公式サイト。製品情報や企業情報が詳しく掲載されている。

NVIDIA日本公式サイト(外部)
NVIDIAの日本公式サイト。GPU製品やAIソリューションの情報を提供している。

TSMC日本語サイト(外部)
TSMCの日本語公式サイト。半導体製造技術や企業情報を詳しく掲載している。

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アリス
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