Last Updated on 2025-05-19 13:22 by admin
今回は、Xreal社から「XREAL One」をお借りする機会がありましたので、そのレビュー記事です。購入をご検討されている方や導入を検討されている法人様はよろしければご参考にお願いします。

innovaTopia編集部のサイエンスライター(!?)、野村と申します。普段は科学論文や量子コンピュータについての記事執筆、ウェブデータの解析を行っており、エンタメやガジェット関連の経験は少ないのですが、今回は貴重な機会となりました。


直感的なセットアップ
使い始める前のチュートリアルが丁寧で、初めてのAR体験でも迷わず設定できました。操作ボタンも少なく、直感的に使いこなせるのが良いポイントです。PCにモニターを接続するような感覚で気軽に導入できるシンプルさが魅力的です。


説明書をほとんど見なくても設定できるほど分かりやすく、会社のディスプレイをPCにHDMI接続する程度の手軽さで始められるのは個人的に大きな魅力でした。
(※ディスプレイと違って僕の目にしかチュートリアル画面が映らないのが残念です。実機の3Dモデルが映ってボタンの位置についても視覚的に非常にわかりやすかったです。)
没入感あふれる体験
ARグラスは映画鑑賞やゲームプレイの没入感を高めてくれますが、それだけでなく日常作業においても多くのメリットがあることに気づきました。
お気に入りのアーティストのライブ映像を視聴した際は、独特の体験でした。通常のライブでは距離があるため表情までは見えにくいものですが、ARグラスではアーティストとの距離が近く感じられ、表情や細かな動きまでクリアに映し出されていました。ライブさながらというよりも、ARグラス特有の臨場感がありました。
ARグラスの新たな可能性
一般的にARグラスというとAmazonなどで検索すると映画視聴やゲームをしている画像が多く表示され、アクションゲームなどの体験を補強するものという印象が強いです。私自身、映画は好きですし、ゲームも将棋や麻雀程度は楽しみますが、モ〇ハンやG〇Aのようなアクションゲームはあまりプレイしません。
XREAL社は「AR for ALL(すべての人にARを)」というコンセプトを掲げており、このARグラスを使用してみて、映画愛好家やゲーム愛好家だけでなく、さまざまな使用方法があることがわかりました。今回のレビューでは特に仕事場面でのARグラス活用に焦点を当てます。ARグラスは単なる眼鏡型ディスプレイではなく、社会変革を担う次世代デバイスだと考えています。
※追加アクセサリーの製品発表が行われました。(2025/5/14 追記)
業務効率化のツールとして
コーディング作業時に特に感じたのは、ARグラスの大画面表示の快適さです。通常のモニターと違って前かがみになる必要がなく(ここが本当に重要です!)、自然な姿勢を保ちながら作業できるため、長時間の作業でも体への負担が少ないです。首や肩の疲れを感じずに集中できるのは大きなメリットです。
Excelなどの表計算ソフト使用時も、広い画面で全体を一度に見渡せるため、データ分析が捗ります。大きな表でも一覧性が高く、作業効率が向上しました。(データ量が多いと通常はセルが小さくなり目を凝らしてしまいがちですが、その問題も解消されます)
使用させていただいている間は腰への負担も軽減され、個人的にも購入を検討しているほどです(会社経費で落ちないでしょうか…?)
柔軟な利用スタイル
このARグラスの特徴的な機能の一つが調光機能(シェード)です。周囲を見ながら作業したいときと集中して作業したいときを状況に合わせて切り替えられます。オフィスで同僚とコミュニケーションを取りながら作業したい場合は透過率を上げ、集中したい場合は下げるといった使い分けができて便利です。
昼休みは仕事から完全に切り替えたいタイプなので、オフィスでシェードを「シアター」モードにして、くつろいでアニメなどを視聴していました。周囲からはデュアルモニターで作業しているように見えるため、昼食を取りながらリラックスできるのは嬉しいポイントです。

産業分野での活用
ARグラスは企業の現場、特に製造業において急速に導入が進んでいます。従来のVRが工場での訓練などに使われているのと同様に、ARグラスも製造現場で大きな変革をもたらしています。
製造業での実用例
製造業においては、技術継承や人材育成という大きな課題があります。熟練工の減少と若手不足の状況下で、ARグラスはこの課題解決策として期待されています。ARグラスを装着した作業者は、視界に作業手順が表示されることで、経験が少なくても正確に作業できます。
注目すべき活用例として:
- 遠隔作業支援:ARグラスを装着した現場作業者が離れた場所にいる熟練技術者とリアルタイムで映像を共有し、指示を受けられます。Nestleでは世界中の工場でスマートグラスを導入し、専門家からリアルタイム指示を受けるシステムを構築しています。
- 作業の標準化と記録:ARグラスで作業手順を動画として記録し、新しい従業員のトレーニング教材として活用できます。
- ピッキング作業の効率化:物流現場では、次にピッキングする商品の位置や数量を視覚的に確認でき、作業効率が向上します。DHLでは倉庫作業にARグラスを導入し効率化を実現しています。
- 品質管理の強化:ドイツの農業機械メーカーAGCO Fendtは、生産ラインでスマートグラスを通じてエラーを即座に発見・修正する品質管理システムを構築し、従来方式より精度向上と時間短縮を達成しています。
製造業が導入するメリット
ARグラスを導入する主なメリット:
- 両手が自由に使える:作業指示書を見るために手を止める必要がなく、作業効率が向上します。
- 3D表示による直感的理解:ARは立体的に情報を表示できるため、製造業の複雑な作業との相性が良いです。
- シミュレーションの効率化:物理的なプロトタイプ作成や試運転にかかる時間とコストを削減できます。
- 技術継承の促進:熟練技術者の知識や技術を視覚的に記録・伝達できます。
総評
ARグラスはエンターテイメント用途だけでなく、日常の作業環境や企業の製造現場における業務改革にも大きく貢献するデバイスです。大画面での快適作業、姿勢改善、集中力向上など、使用するほどその価値を実感できます。長時間のデスクワークをされる方には、体への負担軽減という観点からもおすすめの製品です。また、製造業などの企業においては、人材育成や技術継承の課題解決ツールとして今後さらに普及していくでしょう。

考察: AR for ALLとは何か。
Xreal社が掲げる「AR for ALL」というビジョンは、XREAL Oneの設計哲学に見事に反映されています。本製品は従来のARデバイスの概念を覆し、一般的なサングラスと遜色ない装着感と驚くべき軽量性を実現しています。
歴史を振り返れば、テクノロジーの真の革命とは、ショルダーフォンが手のひらサイズのスマートフォンへと進化したように、デバイスが人間の身体に自然に溶け込む瞬間から始まります。違和感なく日常に浸透するテクノロジーこそが、生活様式そのものを変容させ、人間とデジタルの境界を徐々に曖昧にしていくのです。
XREAL Oneの真価は、単純にエンターテインメント体験を向上させるだけでなく、その名の通り「拡張現実(Augmented Reality)」として、現実世界の業務やタスクをデジタル空間と融合させる点にあります。イノベーションを生み出すガジェットとは、新たな社会のパラダイムを創造するものであるべきです。
この観点から、XREAL社のARグラスは、固定されたモニターやデスクでの作業という既存の枠組みを根本から再考させる触媒となるでしょう。空間的制約から解放された新しいワークスタイルの幕開けとも言えます。
個人的な展望ではありますが、将来的には「ハンモックに身を預け、クッションを抱えながら高度な業務をこなす」といった柔軟な働き方が一般化するかもしれません。デスクとディスプレイだけでなく、働く空間そのものの概念も、XREAL Oneによって革新される日も遠くないでしょう。
この度はXreal社様よりXREAL Oneを貸与していただきました。
誠にありがとうございます。最新テクノロジーを体験できる貴重な機会をいただき感謝申し上げます。