Last Updated on 2025-05-15 15:41 by admin
Samsung Displayは2025年5月15日(現地時間、5月16日日本時間)、米国ロサンゼルスで開催されたDisplay Week 2025にて、次世代VR/ARヘッドセット向けのマイクロOLEDディスプレイプロトタイプを発表した。0.69インチの4K(3840×2160)パネルは画素密度約1232ppi、ピーク輝度2000nitを実現。併せて、0.55インチの2K(1920×1080)パネルも公開し、こちらはピーク輝度4000nitを達成している。両モデルとも従来品比で大幅に輝度を向上させており、2025年後半の量産開始を予定している。
References:
Samsung Unveils Advanced 4K Micro-OLED Displays For “Next-Generation” Headsets | UploadVR
Samsung Display demonstrates new OLED and QD-EL displays at Displayweek 2025 | OLED-Info
Samsung’s new XR headset may boast higher-res OLED than Apple | FlatpanelsHD
Samsung could use Sony’s 4K Micro-OLEDs in Moohan, surpassing Vision Pro | Android Central
【編集部解説】
今回Samsung Displayが発表したマイクロOLEDディスプレイは、高いピーク輝度と卓越した画素密度を両立しており、ヘッドセット型デバイスの映像品質を一段と向上させる力を秘めています。特に直射日光下や明るい屋外環境下でも映像情報が視認しやすくなる点は、AR用途での実用性を飛躍的に高める要素です。
一方で、OLEDの高輝度化は消費電力の増大や発熱量の増加を伴います。ヘッドセットの筐体はどうしても閉鎖的になるため、熱管理のための冷却機構や動的に輝度を制御するソフトウェア技術が不可欠です。これが不十分だと、輝度低下や焼き付きなどのリスクが高まる可能性があります。
競合するSonyやBOEのマイクロディスプレイも高性能化を進めていますが、Samsungの2000nit/4000nitという数字は同業他社と比べてもトップクラスの水準です。2025年後半から量産が始まれば、サードパーティ製のXRヘッドセットへの搭載が加速し、デバイス間の映像表現競争はさらに激化するでしょう。
長期的には、マイクロOLEDの小型化・高精細化技術が進むことで、軽量かつ日常的に装着可能なARグラスの実現が視野に入ります。ただし、頭部近傍で長時間使用される製品であるため、国際的な光学安全基準や電磁波・熱による人体影響規制への対応が導入の鍵を握ります。製品化に向けた技術的・規制的ハードルをいかにクリアするかが、今後の市場動向を左右するポイントとなるでしょう。
【用語解説】
マイクロOLEDディスプレイ:
有機ELをシリコンウェハー上に微細パターニングして形成する自発光型ディスプレイ。高い画素密度とコントラスト比を実現し、VR/AR機器など小型ヘッドセットに適する。
ピーク輝度(nit):
ディスプレイの最大輝度を示す単位。1nitは1平方メートルあたり1カンデラの光度に相当し、数値が高いほど明るい映像を表示できる。
ピクセル密度(ppi):
画面1インチあたりの画素数を表す指標。高ppiほどシャープな映像や文字描画が可能となる。
XR:
仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)などを総称する概念。現実世界と仮想世界を融合した没入体験を提供する。
【参考リンク】
Samsung Display公式サイト(外部)
サムスンのディスプレイ事業部門。OLEDからマイクロディスプレイ、QD-OLEDまで幅広い製品情報と最新ニュースを掲載。
Display Week 2025公式サイト(外部)
世界最大級のディスプレイ専門展示会「Display Week 2025」の公式サイト。出展企業やセッション情報を確認できる。
Society for Information Display(外部)
ディスプレイ技術の普及と標準化を推進する国際的学会。最新研究動向や技術報告を提供。